悲しみの状態にある⼈に寄り添う「グリーフケア」がテーマ 映画『君の忘れ⽅』坂東⿓汰&西野七瀬インタビュー
ガジェット通信 / 2025年1月30日 12時0分
映画単独初主演となる坂東⿓汰、共演に⻄野七瀬や南果歩を迎えた『君の忘れ⽅』が公開中です。本作は“死別の悲しみとどう向き合うか”をテーマに、恋⼈を亡くした⻘年が、悲しみの状態にある⼈に寄り添う「グリーフケア」と出会い、⾃らと向き合う姿を描いたヒューマンドラマ。
監督・脚本は、国際映画祭で数々の賞を受賞し、第79 回ヴェネチア国際映画祭「VENICE IMMERSIVE」部⾨の正式招待を果たしたVR アニメーション『Thank you for sharing your world』のほか、映画『光を追いかけて』『アライブフーン』の脚本を担当した作道雄。⼈との繋がりやコミュニケーションにより、“孤独な⽇々”から抜け出すヒントが得られる感動のヒューマンドラマを繊細に紡いでいます。
坂東さん、西野さんに作品への想いや撮影の思い出などお話を伺いました。
【ストーリー】森下昴は付き合って3年が経つ恋人・美紀との結婚を間近に控えていたが、ある日、彼女は交通事故で亡くなってしまう。言葉にならない苦悩と悲しみで茫然自失の日々を過ごす中、母・洋子に促され、久々に故郷の岐阜へと帰省する。洋子もまた、不慮の事故で夫を亡くし、未だに心に傷を抱えていた。悲しみは癒えないと思っていたが、ある不思議な体験を通して、昴は美紀の死と向き合っていくように――。
――本作とても楽しく拝見させていただきました。まずはご自身が演じたキャラクターへの印象と、どの様にアプローチしようと考えたかを教えていただけますか。
坂東:脚本を読ませていただいて、今までに読んだことのない本だと感じました。楽しみでもあったのですが、初の映画単独主演かつ「死別の悲しみとどう向き合うのか」というテーマであることでプレッシャーや責任を感じたのを覚えています。また、恋人役の美紀が喋らないすごく難しい役なので、「美紀役、誰になるんだろう」と思っていました。
僕の中で「西野七瀬さんとかかな?」と想像したりしていたこともあり、マネージャーさんから「西野七瀬さんに決まりました」と連絡があって、「本当ですか!?」とビックリして。本当にぴったりだな、ご一緒できて嬉しいなと思いました。
西野:嬉しいです。監督から長文のお手紙をいただいて「美紀は西野さんしかいないです」と書かれていて嬉しかったです。私は“儚い”と言われることもあるのですが、美紀の幻影の雰囲気と相性が良かったのかなと思います。 幻影として出てくるシーンがほとんどで、声を発さない役柄というのが私にとって初めてのことでワクワクしますし、作品全体の構成も面白いなと思いました。
――お互いの第一印象や撮影を経てそれが変化していった部分はありますか?
西野:今回初めましてだったのですが、私はあまり「こういう人かな」と考えずに、まずはお会いしてみるタイプなので、現場でお会いして犬のような人懐っこい感じがある方だなと思いました。
坂東:本当ですか(笑)
西野:褒めている意味での犬っぽさです(笑)。陰と陽、両方の要素も持ち合わせている方だなって。
坂東:僕は映画・ドラマ大好き、情報通の俳優仲間がいて、みんなから情報収集するのですが、「これは絶対見た方がいい、素晴らしいから」とおすすめされる作品に、よく西野さんが出演されていて。『孤狼の血 LEVEL2』、『恋は光』、『シン・仮面ライダー』、ドラマ「ケンシロウによろしく」とか色々拝見させていただいています。実際にお会いしてからは、めちゃくちゃ人当たりが良くて、気を遣わなくてよくて、素で居てくれる感じが好きです。
――坂東さんは「撮影期間中、感情がコントロールできなくなった」とコメントされていますね。役と向き合う中でそういう感情になっていったのでしょうか?
坂東:僕はいつも「客観的に様々なことを組み立てていく」というやり方で作品に対して向き合うことが多いのですが、今回はそれをやりすぎたが故に、怖くなってしまいました。自分が実際に昴と同じことを経験するわけではないし、どんどん想像の世界になっていくことが怖いなと思っていました。でも監督が「昴の主観になって、撮影していく中で目の前に起きたこと、感じたことを坂東くんなりに表現してもらって、僕たちはそこを切り取っていきたいし、それを見たい」と言ってくださって。自分の中で煮詰まってしまっていた部分が無くなり、肩の荷が下りたというか、楽になりました。
でも、主観になったが故に昴と同じ感情に自分も乗っかってしまって、コントロールできない時があったり、昴と一緒に自分も混乱してしまったりして。その度に監督は「映画を作るってそういうことだよ。周りの大人たちが支えていくから、頼ってもいいし、混乱してもいい」と言ってくださったので、僕も躊躇なく混乱と向き合うことができました。すごく繊細で、余白のある映画なので。足し算だけじゃなくて、引き算をしたり、主観になって考えて迷って…と言うことは自分にとって初めてのアプローチでした。
――西野さんも言葉を発せずに表情や雰囲気だけでお芝居をするという、難しいご経験だったと思います。
西野:最初は「難しそう」「どうなるのかな」と思っていましたが、始まってすぐに「大丈夫そう」と思えて。監督も任せてくださって、幻影として心がないつもりで、私は引き算しまくりでした(笑)。 昴が話しかけてくれて、それに反応したくなるんですけど、そこは“無”で。かと言って表情まで無にしてしまうのも違うかなと思い、柔らかい時もあったり、そうじゃない時もあったり。美紀の幻影はその時々昴が呼んでいる存在なので、一貫性がなくてもいいのかなと、思ったように演じていました。
――先ほど、坂東さんは「西野さんが美紀役で想像通りで嬉しかった」とおっしゃっていましたが、西野さんに助けられた部分も多かったのではないでしょうか。
坂東:めちゃめちゃ助けられました。存在に助けられていたというか、1人じゃないという気持ちでやれましたし、西野さんがロケ地の飛騨に来てくれるまで、昴として幻影の美紀を呼ぶための訓練をしていて、西野さんが飛騨に来てくれた時、「美紀、来たー!」と思いました(笑)。
西野:そう言っていただけて、すごく嬉しいです。
――本作への作品の出演を経て、今後のお芝居に影響を与えたこと、学んだことはありますか?
坂東:初めての経験がたくさんありました。全力で頑張った部分もあるし、表現できた部分もちゃんとあって、今後、本作での芝居をもっと超えられる様に頑張りたいと思います。本作に限らず、関わらせていただいた作品は常に何かしらの学びを与えてくれていて、1つ1つが積み重なっていく感覚なんです。 過去の経験が未来へ影響を与えていく、面白い仕事だなと感じています。
西野:幻影の役に出会うことはなかなか無いだろうなと思うので、今回出演させていただいたことはとても良い経験で、新しい一面をたくさんの方に見ていただき、知っていただけたら嬉しいなと思っています。先行上映会で観客の皆さんが書いてくださったアンケート用紙を実際に読ませてもらったんです。紙にぎっしり感想が書かれているものを読むことは初めての経験だったのですごく嬉しくて励みになりました。
――作道監督は作家性が素晴らしい監督だと思います。お2人はこれまで様々な監督とご一緒していると思いますが、作道監督らしいなと感じた部分はありますか?
坂東:撮影が始まる前から色々とコミュニケーションをとらせていただいて。たくさんのお話をしました。可愛らしい方です。すごくひたむきで、映画のことを真剣に考えています。役者として成長していく上で、一緒に作品を作っていけるパートナーみたいな監督と出会うことはすごく大事だと思うんですけど、作道監督との出会いはまさにそれでした。またいつか必ず一緒に作品を作りたいと願いますし、作道監督の才能って本当に素晴らしいなと思います。監督って僕に無いものをたくさん持っている方なんです。とにかく頭の回転が早い。
西野:数秒でたくさんのことを考えていそうな、とても頭が良い方なんだなあと思います。私は監督のちょっと陰っぽいところが魅力的だなと思います。映画に対してオタクだなあと感じていて、オタクほど信用出来るものは無いと思っているので、素敵だなって。どのジャンルでも一つのことに夢中であることって素晴らしいですよね。
坂東:確かにそうだよね。映画オタクってすごく良い表現!監督の大切な映画作りに携わらせていただいたことに感謝だし、自分もしっかり役柄の責任を担わなくちゃと感じていました。
――映画オタクって素晴らしい言葉ですね。ちなみにお2 人が自分がオタクだなと思う部分はどんなことですか?
坂東:カメラが好きなので、本作の現場でもカメラマンさんが使っている機材が気になっていて。たくさん質問したくなるところをグッと堪えていました。
西野:語り出すと止まらないのは、やっぱりゲームです。今やっているゲームも、すごく泣けます。ゲームの音楽も大好きなのでサントラを聴くだけでも泣いちゃいます。
――今日は楽しいお話をどうもありがとうございました!
撮影:たむらとも
(C)「君の忘れ方」製作委員会 2024
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