続々々・リモートワークのネック
ガジェット通信 / 2014年3月20日 16時0分
今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
■続々々・リモートワークのネック
これまでいろいろな形でリモートワークのネックを述べてきたのでまとめ。突き詰めればネックは「教育」なんだよね。いま会社でやってることを自宅でやるのは、それほど難しくないかもしれない。でもその仕事だって最初は上司や同僚からやり方を手取り足取り教えてもらったはず。
そして今後もさらなるスキルアップを目指すなら、より高度な仕事のやり方を同じように上司や同僚から学ぶことになる。リモートワークでそれが可能なのか。あるいはずっと現状のままでいいのか。
ではなぜ同じ職場にいれば上司や同僚が仕事のやり方を指導できるかといえば、やっぱ彼らの頭の中にはおおざっぱなスケジュールがあるからだと思う。この段階でこの辺りまで進んでいなければおかしい。もしそこまで到達していなければ、やり方が間違っている可能性が高いから、なにをどうやってるのかチェックを入れよう、と。
だいたい「思ったより作業が進んでいない」場合、なんか変なところでつっかえている。一言相談してくれれば、あっという間に解決するような問題。でも当人は「相談すべき」問題かどうかがそもそも判断できない。なにしろそれをやるのが初めてなのだから、この先、どれほど山や谷が待ち構えているか、全体が見えない。
* * *
むろん無策ではない。たとえば外注会社に仕事を出す場合、予想される問題点などを説明した上で、多さっぱなスケジュール表を出させる。それを見て、この辺りはもっと時間がかかるはずだから、長めに作業時間をとった方がいいとか、そんかわりこの部分を短期間で済ませてくださいとか、話合って決める。まあ問題なければそのままなにも言わないが。
でもやっぱスケジュール表というのは大雑把なんだよね。「必要な情報の調査」とかあっても、わかってる側と分かってない側では認識がずれる。「いまからそんな基礎的な部分から調査してたら到底間に合わない」と思うのは、全体の量を知ってるからであって、知らない人間からみれば、大真面目なんだよね。
たとえるなら円周率を、まじめに「なぜその値になるか」を考えてたら、小学校は卒業できない(笑)。やっぱ丸呑みというか手抜きの仕方が重要なのだが、本人はいたって一生懸命。
* * *
それを防ぐには細かく進捗をチェックするしかない。でもこれって嫌だよね(苦笑)。毎日今日やった作業の報告を書かせる。大体において形式的なものになりやすい。手間ばかりかかってあまり意味がない。そしてこの手の報告は抽象的なものになりやすい。
むしろポイントを抑えて、なんか表現はあれだけど、テストをした方がよほど進捗がわかる。たとえば「○○方式って結局どういう仕組なのかわかった?」とか。「ええ、それはどうやら~というものらしいです」「なるほど」と。
でもこれをメールとかでやると、質問に答えるために調べてから、回答するんだよね。それじゃ進捗のチェックの意味がない(苦笑)。全体の進捗を把握するための抜き打ちテストみたいなものだから。それにあくまで目的は実作業なのであって、テストに満点をとれるように頑張ってもらっても困るし。
職場での何気ない雑談では、意識・無意識を問わずこういう進捗のチェックをやっているのだよね。それがリモートワークだと難しい。メールで書いたら、それは正式な質問になってしまう。「すぐに答えられるなら答えてくれ」という質問が、半日かけて調査して全力で答える質問になってしまう。
* * *
「こうすればいい」というのも、メールとか文章で説明するのと、実際に目の前でやってみせるのでは、ぜんぜん説得力が違う。やっぱ言葉で説明している間は、相手も納得しないんだよね。「えー、そんなのうまくいくとは思えません」みたいな気持ちがありありと伝わってくる(笑)。
実際にやってみせると驚く。これは技術的な問題でもそうだし、人間関係の交渉事でもそう。とくに「こういうふうに交渉すればいいんだ」というのは、言葉では伝えられない。実際にやって見せないと。まあ、やって見せても本当は伝わってはいないんだけどね。でも「現にそのやり方であの人がやるとうまくいった」という事実が、自分も工夫すればうまくいく、あとは自分の工夫次第だ、という思考をさせる。
説得力の本質というのはそういうものだろう。たとえば数学の方程式だって、最初は何のために習うか納得がいかなかったと思う。でも「方程式を使うと解けなかった問題が解ける」という事実が、「じゃあ自分もこれからは方程式を使って解いてみよう」という気にさせる。最初にその有効性を「事実」をもって示さないと、いくら言葉で説明しても無駄。
* * *
結果だけを評価するというタイプの仕事のやり方なら、いいかもしれない。営業とかでノルマを課して、今月いくら売れたかだけを評価する。やり方は本人に任せて一切関知しない。給料も結果に比例して出す。
でも多くの仕事はそれじゃうまくいかない。大勢の人間を動員してるのだから、一人の人間がやり方を間違えて「うまく行きませんでした」では、その人間の給料をゼロにしても、プロジェクトが破綻すれば全然見合わない。
破綻しないように事前に手を打たなければならない。となると進捗をチェックし、必要ならやり方を指導する。大勢の人間が関係しないような仕事、一人で完結するような小規模なソフト開発やデザインなら、いいかもしれない。最悪、期待した水準に達してないので報酬は払えません、で終わり。
でも規模の大きな仕事は、その人の分だけでなく、関わったすべての人間の作業が無駄になってしまうわけで、破綻させた当人がすべての損害を被ってくれるなら別だけど、そんなの無理だよね(苦笑)。
* * *
ということで、目新しいことはなにも書いてない。でもなぜリモートワークだとうまくいきそうにないか?って、漠然とはわかっていても文章になってるものってあまりないのではなかろうか。いつも「そんなのあたりまえだ」「できると思うならやってみろ」と片付けられやすい問題を、あえていちいち文章にしてみた。あたりまえのことを文章化するのも時として大事なこと。
執筆:この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2014年03月19日時点のものです。
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