注目集まるインディーゲームのコンシューマー機展開を橋渡し SCEJAがインディーゲームパブリッシャー3社を集めて座談会を開催
ガジェット通信 / 2014年12月29日 18時0分
昨年の『BitSummit』開催を皮切りに、『東京ゲームショウ』でのインディーゲームコーナーの開設、開発者主体のイベント『INDIE STREAM FES 2014』開催など活発な動きを見せている日本のインディーゲームシーン。現在PCゲームやスマートフォンアプリを中心にリリースされるインディー作品も、今後商業的に成功するかどうかはコンシューマーゲーム機への展開の成否がカギを握っているといえるでしょう。ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジア(SCEJA)は、インディーゲームのPlayStationプラットフォームへの展開をサポートするパブリッシャー3社を招いて12月18日に座談会を実施、各社の“インディーゲームパブリッシャー”としての活動やトピックが紹介されました。
●“インディーゲームパブリッシャー”が必要な理由
パブリッシャーは、ゲームの発売元となり企画から開発、販売、プロモーションまでを手掛ける企業のこと。インディーゲームでは開発者が『Steam』などPCゲームの配信プラットフォームを利用したり、スマートフォンアプリでは『AppStore』『Google Play』などの配信プラットフォームを利用することで、ユーザーに直接ゲームを提供することができますが、コンシューマーゲーム機では少し事情が異なります。
主催のSCEJAから出席したパブリッシャーリレーション部 ディベロッパーリレーション課アカウントマネージャーの伊東章成氏によると、コンシューマー機向けゲームではパブリッシャーと開発者がチームを組んで作業を分担し、プロデューサーが工程を管理する体制が一般的。海外では2~3人、あるいは10人規模のインディーゲーム開発者がコンシューマー機向けにリリースするようになってきたものの、プロモーションができない、プロジェクトの進行が止まってしまうなどの課題が出てきているとのこと。同社は日本に数多く存在する開発会社やパブリッシャーがインディーゲーム開発者をサポートする、“インディーゲームパブリッシャー”が今後増えてくると考え、そうしたパブリッシャーに協力していくという方針を示しました。
同社はインディーゲーム開発者のPlayStationプラットフォームへの展開を支援する取り組み『PlayStation loves indies』を開始していますが、パブリッシャーとして参加するには原則、法人である必要があるなど、個人やサークルなどの小規模な開発者にはまだ参加のハードルが高いのが現状。そこで、こうしたインディーゲームパブリッシャーの存在が求められているわけです。
PlayStation loves indies
http://www.jp.playstation.com/pdr/
●Unity Games Japan・メディアスケープ・PLAYISMの3社が出席
座談会に参加した3社は、SCEJAとライセンス契約を結んだパブリッシャー企業として、インディーゲーム開発者の作品をPlayStationプラットフォームへ展開しています。ゲーム開発環境のUnityを提供するユニティ・テクノロジーズ・ジャパンが立ち上げた『Unity Games Japan』からは大前広樹氏、同人ゲーム作品をPlayStationプラットフォームへ展開するメディアスケープからは江崎望氏と小山田文雄氏、PCゲーム配信プラットフォーム『PLAYISM』を運営するアクティブゲーミングメディアからは水谷俊次氏が出席。
インディーゲームパブリッシャーとして参入したきっかけは、「インディーゲーム開発者がPlayStationマーケットに入るのはハードルが高いという話があった」(Unity大前氏)、「同人サークルは法人ではないから取引が難しいという問題があり、僕らが間に入るのはどうか、と提案させていただいた」(メディアスケープ江崎氏)、「『TorqueL』をPS Vitaで出したいという話を持ちかけたが、開発者の“なんも”氏が個人なので断られ、相談された」(PLAYISM水谷氏)と、いずれもインディーゲーム開発者が抱える課題に対応したことが分かります。各社はどのようにインディーゲーム開発者をサポートしているのでしょうか。
●開発環境提供からパブリッシャー事業へ展開する『Unity Games Japan』
ゲーム開発環境として普及が進むUnityは、「誰でもゲームを作れるようにしたいという方針で展開し、それはある程度達成した」(Unity大前氏)。次のミッションとして「1人でも多くの人がゲームを作って成功できるようにしたい」と考え、「普通のゲーム好きなユーザーがインディーゲームにたどり着くための仕事が必要。パブリッシャーとしての立場が求められている」(同氏)ことから、『Unity Games Japan』のパブリッシャー事業を展開。
Unity Games Japan
http://www.unity-games.jp/
12月11日には、イヌイットの文化をテーマにしたゲーム『Never Alone』日本語版をPS4向けにリリース。海外では11月末にリリースされたばかりで、ほぼタイムラグがない状態でリリースされたことが特徴です。ローカライズは架け橋ゲームズが手掛け、SCEJAは「ローカライズを含む体制を作って提案できる点が強み」(SCEJA伊東氏)と評価しています。今後は独創的なゲーム、アクの強いゲームを「普通のゲームファンが見つかりやすい状態にしたい」(Unity大前氏)とのこと。今回は海外ゲームの事例となりましたが、「日本の開発者もサポートしたい」(同氏)ということなので、『Unity Games Japan』から国産インディーゲームがPlayStationプラットフォームで世界展開する事例も出てくるかもしれません。
Never Alone
http://www.unity-games.jp/games/neveralone/
●同人ゲームをPlayStationプラットフォームへ展開するメディアスケープ
『東方 Project』作品をPlayStationプラットフォームへ展開するプロジェクト『ZUN × PlayStation』を9月に発表したメディアスケープは、『東方 Project』以外の同人作品も含めPlayStationプラットフォームへ展開する『Play, Doujin!』プロジェクトを発表しました。
同プロジェクトで最初にリリースされる製品として、『東方 Project』の世界観をPlayStation Vitaのカスタムテーマにした『幻想郷四季・冬』と『幻想の輪舞』を発売。PS VitaやPS4向けに参入を予定している3サークル“AQUA STYLE”“苺坊主”“領域ZERO”に加えて、新たに“CUBETYPE”が参加することも合わせて発表されました。SCEJAによると「Doujin」とアルファベット表記にしているのは、「海外に展開するため」(SCEJA伊東氏)とのこと。今後海外も含めたPlayStationプラットフォームに、日本の同人作品が展開していくことが期待されます。
Play, Doujin!
http://playdoujin.mediascape.co.jp/
座談会では、同人ゲームの特徴である、コミケや即売会で開発者が直接販売する仕組みについて、「PlayStationフォーマットのゲームをどう即売会に展示するのか。そもそも売れないという課題がある」(メディアスケープ小山田氏)という問題提起も。これに対しては「プロダクトコードの販売ができる仕組みがある。今後にご期待ください」(SCEJA伊東氏)と、今後プロダクトコードを対面販売できる可能性が示唆されました。
●PCゲームからPlayStationプラットフォームへ展開する『PLAYISM』
PCゲーム配信プラットフォーム『PLAYISM』を運営するアクティブゲーミングメディアは、12月24日からPS4/PS Vita版『TorqueL』とPS3/PS Vita版『Machinarium』をリリース。PlayStationプラットフォーム向けのパブリッシャーとして活動を開始しました。
PLAYISM
http://www.playism.jp/publishing/index.html
「インディーゲーム開発者には開発資金がなかったり、コンシューマー機や海外で出したいというときにいろんな障壁がある。それを取っ払う取り組みをしている」(PLAYISM水谷氏)という同社。もともとゲームのローカライズを手掛けていることもあり、海外展開や海外向けのマーケティングができる体制があったとのこと。今後はヨーロッパ、アジアなど海外向けにも展開していくほか、PS Vitaなどに配信されている海外製のインディーゲームを日本向けに展開するサポートも手掛けていくそうです。
「うちは(同人の)代表ではない。うちが引っ張っていくわけではなく、橋渡しをメインでやっていく」(メディアスケープ小山田氏)という発言があったように、3社はインディーゲーム開発者の課題に対応し、コンシューマー機プラットフォームへの“橋渡し”の役割を担っていることが印象的だった今回の座談会。SCEJAも「インディーはマルチプラットフォームであるべき。稼いでもらわないと」(SCEJA伊東氏)と、PlayStationプラットフォームにインディーゲームを囲い込む意図はないことを明言しています。インディーゲームパブリッシャーの存在がコンシューマー機のプラットフォームとインディーゲーム開発者の距離を縮め、2015年にはインディーゲームの成功事例が生まれることに期待したいところです。
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