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原作者を差し置き『ヴァンガードプリンセス』巡って争う二社、時系列でこれまでを紹介

Game*Spark / 2024年7月28日 18時30分

2009年にスゲノトモアキ(SUGE9)氏が公開した対戦格闘ゲーム『ヴァンガードプリンセス』。2012年にeigoMANGAより英語対応のバージョン『Vanguard Princess』がリリースされ、2024年にはexA-Arcadiaよりアーケード用タイトル『ヴァンガードプリンセスR』が発表されました。


しかし、これら二社はYouTubeにて公開中のお互いのトレイラー動画を「著作権の申し立て」により削除しているほか、eigoMANGAには原作者スゲノ氏に対する利益分配の有無など、疑いの目を向けられてきました。


Game*Sparkでは『ヴァンガードプリンセス』について、複数の記事を掲載しましたが、“過去から指摘されている疑惑”や“新たに起こったトラブル”といった、別々の問題が並行して進んでいるため、本記事では筆者が集めた情報を元に、大き目な出来事を中心とした年表として補足を交えつつ整理します。


本記事には過去にGame*Sparkで報じていない情報も含みます。その中でも筆者の独断で注目に値すると考えているものには「※」を付けます。


なお、本記事では個人サイトに掲載した情報も参照しています。リンクされている個人・団体等への直接的なお問い合わせに関して、Game*Spark編集部は責任を負いかねますのでご了承ください。




2009年6月30日:『ヴァンガードプリンセス』配布開始



2009年12月30日:「ヴァンガードプリンセス 設定資料集」がコミックマーケット77で頒布




筆者が所有するものの表紙、白飛びが激しいためコントラストを調整しています。

ソース


スゲノ氏のブログ「生存報告」



2010年7月1日:新作『ヴァンガードプリンセス プライム(仮)』発表



補足:新キャラ「リカコ先輩」も発表されていますが、2024年7月19日時点でリリースされていません。


ソース


スゲノ氏のブログ「生存報告」



2010年8月14日:「ヴァンガードプリンセス 姫君の休息」がコミックマーケット78で頒布



2011年1月:Taiko Fujimura氏がeigoMANGAの『Vanguard Princess』開発を支援



補足:本情報は訴状を基にしたもの。Fujimura氏は「ゲームの為の直接の交渉担当者(the direct contact person for the game)である」といい、支援内容には“翻訳サービス”なども含まれています。


ソース


PlainSite



2011年3月11日:東日本大震災



ソース


内閣府ページ



2011年3月14日:スゲノ氏が生存を報告



補足:少なくともこの時点でスゲノ氏は東京に在住とのこと。


ソース


スゲノ氏のブログ「生存報告」




2011年8月12日:スゲノ氏によるブログの最終更新日



補足:“今後は同人誌をダウンロード販売する事が多くなる”としているものの、以降は活動が確認できず。前述の訴状によると、この時点までにコンタクトを取っているですが、eigoMANGAや同社が販売している『Vanguard Princess』には一切言及されていません。


ソース


スゲノ氏のブログ「生存報告」



2012年10月15日:eigoMANGAが『Vanguard Princess』を販売開始




補足:当初はSteamだけでなくAmazon等の他サイトでも配信・販売されていました。ただし、ソースによって日付が異なるため、本年表ではAmazonに登録されたリリース日を採用しています。


ソース


Amazonリンク



2013年10月19日:eigoMANGAの『Vanguard Princess』がSteam Greenlightに登録



2013年11月3日:eigoMANGAの開発者が、担当者がスゲノ氏とコンタクトを取っていることを説明



補足:この“担当者”が前述のFujimura氏なのかは不明。ほかにも“スゲノ氏はMMOをプレイしており、別名義を使いTwitterで活動している”旨の説明もしています。


ソース


Steamコミュニティ(InternetArchive)



2013年11月5日:eigoMANGAの開発者が「2D格闘ツクール2nd.」の改造に関して、エンターブレインの許可を得た旨を説明



補足:ゲーム実行ファイルなどの検証については弊誌記事「『ヴァンガードプリンセス』著作権は誰のもの?海外版と『R』版、2つの販売元が互いの動画に著作権侵害の申し立て―原作者の意思はわからず」を参考にどうぞ。また、エンターブレインは2013年に株式会社KADOKAWAと合併していますが、執筆時点で「ツクール」シリーズを開発・発売しているGotcha Gotcha Games(以下、GGG)より、「原則的に、Maker(ツクール)製品の無断改変や他者の著作権を侵害するゲームの頒布は利用規約違反であり、そのような利用は認められません」との回答を受け取っています。


Steamコミュニティ(InternetArchive)



2014年3月4日:eigoMANGAの『Vanguard Princess』がSteamで販売開始




2014年3月4日:eigoMANGAの開発者が“原作者であるスゲノトモアキ氏にも利益が分配されている”旨を説明



※2014年4月24日:eigoMANGAが『Vanguard Princess』ネットプレイについてクラウドファンディングを実施



補足:目標額に達しなかったほか、ワンダーフェスティバルで販売されていたと思われるフィギュア(ガレージキット)を支援者向け特典にしていたようです。また、クラウドファンディング実施者は「Thank You」名義ですが、他のキャンペーンを見ると同社代表(Austin Osueke)と姓が同じ「Samuel Osueke」名義となっています。


ソース


Indiegogo


サークル [ makeplus ]ページ(InternetArchive)


梓零のホームページ



2014年12月2日:Taiko Fujimura氏がロイヤリティ等の未払いを理由にeigoMANGAを訴える



補足:Trellis.Lawに本件に関するより新しい書類が保存されていましたが、2024年7月20日時点では閲覧できなくなっています。
ソース


PlainSite



2018年5月3日:eigoMANGAがコミック版『Vanguard Princess』の展開を告知



2024年7月20日時点で3章まで出版されていますが、スゲノ氏はクリエイターとしてクレジット。イラストレーターやライターは別人となっています。また、一部イラストレーターはDLCカバーアートも担当しているようです。


ソース


『Vanguard Princess』Steamニュース


「Vanguard Princess Digital Comic Series」


「Vanguard Princess Hilda Rize」


「Vanguard Princess Kurumi」


AWRD


Deviant Artリンク



2020年3月31日:eigoMANGAが『Vanguard Princess』向けDLC「Vanguard Princess Online Deluxe」を発売



「Vanguard Princess Online Deluxe」導入後のロード画面。
「Vanguard Princess Online Deluxe」導入後のゲームオーバー画面。

補足:本DLCではゲーム内のBGMやアートが差し替えられますが、ロード画面やゲームオーバー画面は、クレジットされていないイラストレーターの二次創作イラストと類似しているほか、Steamポイントショップにも同様の、二次創作イラストを転用したと思しきプロフィール背景がリリースされています。


ソース


『Vanguard Princess』Steamニュース


Steamポイントショップ


Pixivリンク


Pixivリンク


Pixivリンク


サークル甲冑娘 公式 Blog



※2020年7月3日:eigoMANGAがモバイル版『Vanguard Princess』の開発を発表




eigoMANGAが後に公開したスクリーンショット。

補足:本作はUnityで開発されているとのこと。


ソース


『Vanguard Princess』Steamニュース



2023年6月6日:eigoMANGAがモバイル版『Vanguard Princess』のKickstarterキャンペーンについて告知



2023年10月7日:Show Me Holdingsが『ヴァンガードプリンセス』著作権者の連絡先の関する情報を募集



補足:著作権情報センターに広告が掲載。Show Me Holdingsは、後に『ヴァンガードプリンセスR』を発表するexA-Arcadiaのハードと専用ソフトの販売代理業務を全国的に行っている企業です。情報を募集する目的は「業務用ゲーム及び家庭用ゲーム機とPC プラットフォームで複製・販売」となっています。


ソース


著作権情報センター



2024年4月28日:exA-Arcadiaが『ヴァンガードプリンセスR』を発表




補足:公式サイトには「令和6年3月28日に著作権法第67条の2第1項の規定に基づく申請を行い、同項の適用を受けて作成されたものになります」と記載。


文化庁ウェブサイトによると、他者の著作物を出版する際に「(権利者が誰か分かったとしても)権利者がどこにいるのか分からない」等の理由で許諾を得られなくとも、「権利者の許諾を得る代わりに文化庁長官の裁定を受け,通常の使用料額に相当する補償金を供託することにより,適法に利用することができる」という“裁定制度”が存在するといい、後に「裁定実績データベース」にも掲載されることから、Show Me Holdingsとスゲノ氏とのコンタクトは叶わなかった可能性が考えられます。


ソース


X(旧Twitter)リンク


『ヴァンガードプリンセスR』公式サイト


裁定実績データベース(令和6年度)


e-Govの法令検索ページ



2024年5月(具体的な日付は不明):exA-Arcadiaの『ヴァンガードプリンセスR』トレイラーがeigoMANGAによる著作権の申し立てで削除



補足:後にeigoMANGAが『ヴァンガードプリンセス』著作権者の連絡先の関する情報を募集することを考慮すると、少なくとも『ヴァンガードプリンセス』という作品自体については、同社が著作権を保有しているとは考えにくく、法的要件を満たしていない可能性があります。


ソース


YouTubeリンク


著作権の申し立てとは



2024年5月(具体的な日付は不明):eigoMANGAの『Vanguard Princess』関連動画がexA-Arcadiaによる著作権の申し立てで削除



補足:一部の動画は「Show Me Holdings」による申し立てで削除。裁定制度を利用していることから、こちらも同じく、少なくとも『ヴァンガードプリンセス』という作品自体については、同社が著作権を保有しているとは考えにくく、法的要件を満たしていない可能性があります。


ソース


YouTubeリンク



※2024年5月1日:Show Me HoldingsがeigoMANGAのモバイル版『Vanguard Princess』Kickstarterクラウドファンディングキャンペーンに対し、著作権侵害を訴える



補足:著作権侵害を受けたIPに関して、“裁定制度で文化庁より許諾を受けている”と説明していますが、これは「DMCA Takedown Notices」の一覧に記載されており、アメリカの「DMCA(デジタルミレニアム著作権法)」に反したが故の削除通知となっています。しかし、文化庁が作成した「裁定の手引き 第11版(令和5年9月29日)」では「日本の著作物を海外で利用する場合には、現地の法律に従って権利処理をしてください。日本の裁定制度では日本国内で行われる行為についてのみ裁定をすることが可能です」と記載。


この削除通知にeigoMANGAは異議申し立てをしており、申し立てが通ったのか、記事執筆時点でモバイル版『Vanguard Princess』Kickstarterクラウドファンディングキャンペーンは予告ページにアクセスできるようになっています。


なお、著作権法の第三十条の三には、「その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、当該著作物を利用することができる」とある一方、「当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない」としていますが、本件が裁定制度の“適法な利用”の範疇なのか、そしてそうでなかったとして、Show Me Holdingsに何らかのペナルティが課されるのかは不明です。


ソース


KickstarterのDMCA削除通知


モバイル版『Vanguard Princess』Kickstarterページ


e-Govの法令検索ページ



2024年5月17日:eigoMANGAが『ヴァンガードプリンセス』著作権者の連絡先の関する情報を募集



補足:著作権情報センターに広告が掲載。情報を募集する目的は「業務用ゲームを複製・販売する」としており、担当者名はeigoMANGA代表(Austin Osueke)と姓が同じ「Uchenna Osueke」名義となっています。


過去の証言通りであればスゲノ氏に利益を分配しているはずの立場であり、Steamでゲーム等を販売し続け、さらにはモバイル版の開発も遥か以前より進行していることを考えると、「業務用ゲームを複製・販売する」ために今から著作権者の情報を探すのは不可解な行動です。


なお、これは編集部と筆者の推測ですが、「裁定の手引き 第11版(令和5年9月29日)」において「著作権情報センターへの広告掲載」は“裁定を受けるまでの流れの一つ”とされており、eigoMANGAがShow Me Holdingsから裁定制度による許諾を根拠としたDMCA削除通知を受けた結果、裁定申請を検討した可能性が考えられます。


ただし、“著作物を利用している状況で裁定制度を利用できるのか”という疑問に加え、仮に“販売中の著作物はスゲノ氏の許諾を得ていて、今後リリースされるモバイル版のために申請した”としても、裁定制度には裁定決定前に著作物の利用ができる「申請中利用制度」もあるとは言え、モバイル版はeigoMANGAのPC向け『Vanguard Princess』と同じく全世界向けリリースになると予想され、「日本国内で行われる行為についてのみを裁定する」裁定制度を利用する意義はあまりありません。それゆえ、この推測は単に間違いであるか、eigoMANGAが「裁定制度」について何らかの誤解をしていることが考えられます。


ソース


著作権情報センター


裁定の手引き



2024年7月5日:eigoMANGAがAnime Expo 2024に出展。登壇者によるプレゼンテーションではコミック版の制作背景を説明すると共にモバイル版を宣伝。モバイル版のデモ版も展示




補足:当時のパネルでのプレゼンテーションについて、筆者が生放送を視聴し確認しています。スゲノ氏にはプレゼン中に一瞬言及するも、同氏との交渉といった部分には一切触れず。2024年7月20日時点でアーカイブは閲覧不可となっています。


ソース


YouTubeリンク


eigoMANGAによるAnime Expo 2024告知



2024年7月8日:裁定実績データベースが更新。「Show Me Holdings」名義で『ヴァンガードプリンセス』の利用について掲載



補足:筆者が更新を初めて確認したのは7月11日。著作物の利用方法は「複製、販売(譲渡)」。同時期に申請された『アクウギャレット』と一緒に掲載されなかったのは、申請日時とデータベース更新のタイミングが嚙み合わなかった結果と思われます。


ソース


裁定実績データベース(令和5年度)


裁定実績データベース(令和6年度)





主な出来事を記した年表は以上となります。未掲載の出来事としては、7月19日から開催のEVO 2024にてexA-Arcadiaの『ヴァンガードプリンセスR』の展示が行われてたほか、サンディエゴで現地時間7月25日から開催されるコミコン「SDCC 2024」にeigoMANAGAが出展し、モバイル版『Vanguard Princess』に関するワークショップが行われました。


なお、Game*Spark編集部では過去にeigoMANGAならびにexA-Arcadiaに対し、“両者のゲームとスゲノ氏の関係性”を含む複数回の問い合わせを行っていますが、いずれからも回答は得られていません。


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