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ゲーム実況の配信ガイドラインはどのように作られるべきか?― 配信ガイドライン590件を分析して考察【CEDEC 2024】

Game*Spark / 2024年8月28日 19時0分

パシフィコ横浜ノースにて開催された日本最大のゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2024」。本記事では、そのなかで8月22日に行われた講演「ゲーム実況における『配信ガイドライン』の利用・作成上の法的問題点」の内容を抜粋してお届けします。


登壇者は、日本デジタルゲーム学会の広報委員で、プロでゲーム実況も行っているという近藤史一氏と、ゲーム業界を中心に、日本、シンガポール、マレーシアで活動している弁護士の落合一樹氏。今回、講演のために調査を行った配信ガイドラインは国内外あわせて計590件。それらを分析した上でわかった傾向や、法的観点からの考察などが行われました。


590件の配信ガイドラインの調査の結果としてまず挙げられたのは、配信の是非について。結果としては、配信を禁止しているガイドラインは全体の1.5%ほどで、590件中9件しかなかったとのこと。

この中には、謎解き系コンテンツであるために全編配信を禁止しているパターン、事前承認のない配信を禁止するパターン、そして、私的使用以外を禁止しており、ゲーム機側のシェア機能のみ許可しているパターンがみられたといいます。ただし、私的使用、事前承認とは何かということには議論の余地があるのではないかという指摘がなされています。


収益化が可能かどうかについての規定については、「プラットフォーム機能なら可能」としているものが全体の69.5%ほどだったとのこと。プラットフォーム機能というのはYoutubeやTwitch、ニコニコ動画などの配信プラットフォームにおける機能のことで、この場合はプラットフォーム機能を使ったものであればすべて収益化を許可している形になっています。


「プラットフォーム機能の一部なら可能」としているものは、例えば広告収入については禁止していない代わりに、投げ銭などの特定の機能について禁止しているというもので、これは全体の3.2%ほどです。それらに言及せず、シンプルに収益化可能としているものは約12.2%みられました。配信不可としているものは約5.0%、収益化について言及されていないものは約10.0%でした。


配信可能範囲については、特記事項のないものが全体の80.5%ほどだったといいます。逆に、配信範囲に対して制限がかけられたものは約17.9%みられました。

配信制限については、「オープニング映像を含む部分は使用不可」といったものや、「10章からエンディング後のセーブ画面表示までを禁止」といった具体的な範囲を定めているもの、「シナリオ4章以降の内容は2023年10月まで配信や共有を禁止」といった期間が指定されたものがみられたとのこと。


ガイドラインについての“専用ページの有無”については、専用ページが用意されているものが90%を超えてましたが、一部にはXのポストやSteamの説明欄に記載されているにとどまっていたものがみられたとしています。そのほか、講演では590件の配信ガイドラインの全文章を対象に計量テキスト分析を行った結果などが話されました。


そもそも、配信ガイドラインを策定することのビジネス上の意義とはどこにあるのでしょうか。落合氏は、配信ガイドラインがないタイトルの配信は著作権侵害の成否が問題となるため、ゲーム実況者の法的地位が不安定であり、不安を生じさせることにつながると指摘してます。あらかじめゲームメーカー等が配信ガイドラインを明示することでこういった事態を避けられるほか、実況者等が利用しやすいゲームとしての認知が広がり、配信活動による販売促進効果などが期待できるとのこと。


配信ガイドラインの策定・公表によってどのような法的効果が生まれるのかということについては、主に「1.ホワイトリスト化による著作物の利用に対する禁止権の(一部)解除」「2.ブラックリスト化による犯罪行為等の一般予防」のふたつがあると話されました。


1については、上述のとおり、著作権者による禁止権の行使が行われない利用方法を明確化しているためゲーム実況者の法的地位が安定したものになります。2については、ゲームメーカーが自社の著作物を不適切に利用されないように、禁止行為(許諾外の行為)を明確にすることで、該当行為が行われた際に強く避難することが可能になるとしています。


「一度公開した配信ガイドラインを撤回・変更することは可能なのか」ということについて、落合氏は、一度利用許諾をしたゲームタイトルの許諾がいつでも自由に変更になると、これもゲーム実況者の法的地位を害することになるため、「優越的地位の濫用」につながる恐れがあるとしています。そのため、配信ガイドラインは一度公開すると変更や撤回に制限がかかるということを念頭にいれ、専門家による精査を欠かさないことが重要だとしています。


そのほか、講演ではさらに細かい法的観点から考察が行われているほか、分析した配信ガイドラインについての細かなデータも公開されています。詳細はこちらのアーカイブからご確認ください。


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