1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. IT
  4. ゲーム

プレイヤーが不満を抱く要素を減らす…『シヴィライゼーションVII』開発者に聞く「ゲーム体験に柔軟性を持たせる」開発思想とは【gamescom 2024】

Game*Spark / 2024年8月29日 15時0分

ドイツで8月21日から24日かけて開催された大型ゲームイベント「gamescom 2024」。今年も多くのゲーマーが待ち焦がれる季節がやってまいりました。

欧州最大のゲームイベント「gamescom 2024」関連記事をチェック!

今回は、ターン制ストラテジーといえばお馴染みのシリーズ最新作『シドマイヤーズ シヴィライゼーションVII(Civilization VII)』について、クリエイティブディレクターのEd Beach氏にお話を伺ってまいりました。『Civ』シリーズに携わって15年以上という、まさに大ベテランである同氏……終始、知的かつ穏やかにお話されていたのが印象的でした。ともあれ早速インタビューの様子をお届けしていきましょう。




――『シヴィライゼーションVI』から8年の時を経て、最新作がリリースされますね。その間にゲーム市場もプレイヤーの好みも、過去から大きく変化しているはずです。こういう変化に対しても「プレイヤーに素晴らしい体験を与えるため」に、本作ではどのような部分に焦点をあてて開発を進めていますか?


Ed Beach氏とても良い質問です。「プレイヤーに素晴らしい体験を与えること」、それがまさに私たちが開発の中心に据える目標のひとつで、まずはプレイ時間に注目しました。『Civ』シリーズは、初代から非常に長い時間をかけてプレイするタイトルでした。ゲームをクリアするのにだいたい15時間から20時間程度かかるのです。


これに対して開発チームは、実際のところ「ゲームを最後までクリアする人が多くない」というデータを持っていたのです。プレイヤーの皆さんは、序盤こそ楽しんでプレイしてくれるのですが、途中でやめてしまう人が多いということですね。


1プレイ20時間というのは拘束時間が長く、確かに今の時代には合わないかもしれませんが、本シリーズのコアなファンの中には、それでも長時間プレイを求めている層もいます。そこで私たちはそういった部分を見直して、プレイヤーに対してもっと選択肢を掲示することで「ゲーム体験に柔軟性を持たせたい」と考えました。


そしてゲームを「時代」という区切りで、3つのチャプターに分けることにしました。それぞれが独立したゲームステージとして成り立つよう整えられていますが、もちろんキャンペーンモードとしてすべての時代すべてのチャプターを通してプレイできるようにも設計されています。


新規ゲームを選び、特定の場所から文明の種まきを始めて、まずは最初の都市を建設し、そこからどんどん発展させていく……このような従来の設計だと、どうしても途中で一休みできるような切りの良いタイミングが設定しづらかった。


しかし、時代で分けることによって、そのチャプタークリア時に自動的に「区切り」が設定されるようになり、そこから次のチャプターに進む際は、「管理する項目の数を少し減らす」ようなリセットが行われるので、従来のシリーズでありがちな「ゲーム終盤で帝国が大きくなりすぎて管理がものすごく大変」といった状況も回避できるようになりました。……プレイヤーが最後まで遊ばなくなる理由のひとつが、この管理項目の多さにありますからね。


――プレイ時間については、僕は好きで遊んでいましたが、確かに長いと感じる部分もありました。話が脇道にそれますが、それこそ学生時代、友人たちと『Civ』シリーズを遊んでいた時期のジョークとして「おっ、卒論の時期か。『シヴィライゼーション』やろうぜ!(留年)」みたいなことを言い合ってました。


Ed Beach氏あっはっはっは!「卒業したけりゃ今すぐそのゲームやめろ!」みたいなやつですね。私も聞いたことあります。どこも皆おなじですね(笑)。


――ですね(笑)。話をもとに戻しつつ伺いたいのですが、本作でも指導者と文明を別々に選択できるというシステムが導入されています。アウグストゥスは必ずしもローマに属さずとも良い、と言ったような。とはいえ、自然な思考の流れとして“指導者と文明は史実通りに一致させたくなる”のが心情というものです。これは「ゲーム的なアプローチも可能にする」という選択肢を残したい、ということでしょうか?


Ed Beach氏『Civ VI』の時点で、指導者が必ずしも文明に結び付けられる必要はないというアイデアを試してみました。例えば「フビライ・ハンはモンゴル以外に中国も率いることができる」など。


この試みは非常に人気となり、プレイヤーはそれを気に入ってくれたと思います。そうしたら今度は「指導者ボーナスと文明ボーナスを組み合わせて使用できないか」といった要望が出始めたんですよね。残念ながら、前作ではゲームバランスの観点から完璧には叶えることができなかった……。


「ゲーム的なアプローチも可能にする選択肢を残したい」というのはその通りですね。例えば、“Minimaxer(ミニマクサー)”と呼ばれる人たちがいます。彼らは、できるだけ早く物事を達成しようとする人々です。いわゆるスピードランのようなことをしたり、「最適化」……つまりより効果的な組み合わせについて理論を考えたりすることが大好きです。


そういった性格を持つプレイヤーは、本作の指導者と文明のシステムを気に入るでしょう。彼らは、アウグストゥスが間違った場所にいても気にしません。彼らはただ、ゲームをできるだけ速くクリアしたいのです。


とはいえおそらくプレイヤーのほとんどは、史実に則ってプレイしたいはずなので、私たちはそれを基準にしてゲームを設計しました。ゲームを開始して指導者にアウグストゥスを選ぶと、文明選択では「歴史的な選択肢」が表示されます。必ずしもその選択肢を選ぶ必要はありませんが、遊びやすさなど諸々の理由から強く推奨されています。


そしてゲーム内世界で戦うNPC達も同様に、「歴史的な選択肢」を選択するようになっていますね。ほとんどの場合、これまでの『Civ』シリーズと同じゲーム進行ですが、本作では「他の選択肢」も選べるようになっているため、少し変わったことをやってみたいプレイヤーの要望にも柔軟に対応できていると思います。


――たしかにそのあたりの選択肢の有無は、ゲーム体験が窮屈にならないようにするためのデザインなのかもしれません。遊べる要素が沢山あっても、実際はレールの上を強制的に走らされているような感覚を得ることはあると思います。


Ed Beach氏これまで15年近くこのシリーズに携わってきていますが、いやもうそういったフィードバックの数々やそれらに伴う様々な提案は、今日に至るまで何度もありましたね……。そこで繰り返しになりますが「選択肢を増やして、ゲームプレイに柔軟性をもたせる」という軸に基づき、本作ではとにかく「実現したいこと」をリストアップしてひとつずつ達成していきました。


その中で本作で可能になった特徴的なゲーム体験としては、3つのチャプターすべてをプレイする必要はなく「自分が好きなひとつの時代だけを遊ぶことができる」というものでした。例えばこれは、「中世のルネサンス時代を味わい尽くしたい人」などにはピッタリかなと。それぞれの時代を遊ぶだけでも、完結したゲーム体験を得られるのです。まさに、プレイヤーのための選択肢が増え、ゲームプレイの柔軟性も増したと言えましょう。


――ちなみに本作で想定されるプレイ時間はどの程度のものなのでしょうか?特に、本作がシリーズ初体験!というような新規プレイヤーに向けてお聞かせいただけると。


Ed Beach氏シリーズ初心者が初めて遊ぶときは、ゲームルールの学習を考慮しつつも、ひとつの時代(チャプター)に対して5時間~6時間ほどのプレイ時間を想定しています。3つのチャプターをすべて合わせると、おそらく15時間くらいになるでしょう。これは新規プレイヤーへの間口を広げつつ、同時に長時間がっつり遊びたいといった従来のファンに対しても十分な作りになっていると思います。


――個人的な感想ですが、僕が子どもの頃は長時間のプレイが普通で、それは一種の達成感も与えてくれていました。とはいえ最近の世の中を見るにおそらく、ゲームのコア部分の面白さはそのままに、もう少しコンパクトにまとまったものが好まれる傾向があるように感じられます。その意味において、本作の時間設定はちょうど良いのではないでしょうか。


Ed Beach氏そうですね。ただこれはもちろん単純に時間を短くすればOK……ということではなく、私たち開発チームは従来の『Civ』シリーズにおける、特に終盤の過剰な都市やユニットの管理問題に対処しなければなりませんでした。そこで本作ではチャプターごとに区切る設計に加えて、プレイヤーが不満を抱きがちな「マイクロマネジメント要素」を減らすといったメカニズムの変更に注力してきました。


例えば過去のシリーズでは、労働者や建設者を雇って、農場や鉱山、牧場などを建設させる……といったいくつかのステップを踏む必要がありました。それを本作では「都市が十分な食料を得ると、タイルを選択するだけで、建物がすぐに出現する」という形に変更しました。


要は一部の過程が省略され簡単になったのです。本作における重要な部分は、「どこに移動して、どのタイルを占領するか」というものです。そこに注目したことで、ゲームのコアバリューはそのままに、ユニットを建設して送り出すのに10ステップかかるようなマイクロマネジメントを少なくし、工程が1~2ステップで済むようコンパクトにまとめることができました。


――少し話はズレるのですが、最近ではストリーマーがゲーム市場では大きな勢力となっています。一部のタイトルでは、そういった配信向けの機能がゲームに実装されたりもしていますよね。本作では、何かそのような機能的な試みはあるのでしょうか?


Ed Beach氏まだ発表していませんが……実は今から2週間前、多くのストリーマーを私たちのスタジオに招待し、ゲームを簡単にプレビューしてもらいました。私たちは昨今の配信文化についてよく理解しているつもりです。ちなみに『Civ VI』リリース時、同様のイベントを開催してストリーマーを招待しましたが、当時はわずか3人しか集まりませんでした。


しかし今は異なります。現時点で配信向けの機能について具体的なことは言えませんが、私たち開発チームは、本作を長くサポートする予定です。『Civ VI』をリリースしてから7年間から8年間サポートしたように、リリース後も多くの新機能を追加していきます。


――その意味において、ダウンロードコンテンツの計画はありますか?


Ed Beach氏そうですね、公式Webサイトに記載がある通り、本作には予約特典としてすでにDLCが用意されています。創始者エディション、デラックス エディションの2つですね。ただし……もちろんこれらだけで終わることはなく、将来的にはさらに多くのDLCを計画しています。


段階的にDLCを展開していく理由のひとつとしては、本作の特徴である「時代」システムでは3つの異なる文明と1人の指導者を選ぶことになるので、過去シリーズよりも多くのコンテンツが必要になります。本作はシリーズを通して、多くの文明がゲーム内に含まれてリリースされるのですが……現実世界の様々な国から、『Civ VII』に登場させて欲しいという希望が届いているんです。私たちは、本作で自分の国(文明)を楽しみたいと思っているすべてのファンの期待に応えるべく、今後も多くのコンテンツを提供する予定です。


――それは最高に嬉しいお知らせですね!ところで、話は少し遡るのですが……文明と指導者がそれぞれ独立した関係性というシステムについて。時代、チャプターごとに別の文明へと変化することもあると思います。その際、ローマから突然日本みたいな全く脈絡のない変化なのか、それともある程度の「推奨ルート」が存在するのでしょうか?


Ed Beach氏「おすすめの選択肢」いわゆる推奨ルート的なものは、確かにあります。本作のゲームシステムに都市の発展や機能について盛り込むことを決めたとき、私たち開発チームは実際の都市について多くの研究を行いました。


研究対象としてはgamescomの会場である「ケルン」も候補に挙げられたかもしれませんが、私たちはまず「ロンドン」を調べることにしました。多くの都市は、ひとつの帝国によって建設されています。例えば、ロンドンとケルンはどちらもローマが関わっていますよね。


しかしそのローマは中世までに滅びてしまった。そして、新しい帝国、神聖ローマ帝国がドイツに誕生しました。そしてウィリアム征服王によるロンドン支配も忘れてはいけません。
とはいえこれらの帝国による支配も長くは続かず、姿形を変えて現在ではドイツとイギリスになりました。こういった歴史の流れが変わるタイミングに注目してそれぞれの時代における都市の地図を見ると、すべてが変わっているのです。


まずローマの都市が建設され、次にノルマンの都市、そしてイギリスへと続くのですが、すべてが異なっていた。これは『Civ』シリーズプレイヤーにとって非常に興味深いことだと思います。そういった時代が移り変わる流れの中に身をおいて自分だけの物語を紡ぎ、歴史を駆け抜けるのは素晴らしいことでしょう。


そこで私たちは、チャプターごとに区切るシステムを導入することで、プレイヤー自らが作った「旧時代の都市文明」の上に、そこから先へと続く「新しい時代の都市文明」を作れるようにしました。これこそが、本作のコアバリューのひとつであるゲームシステムですね。


そして私たち開発チームはプレイヤーに、各チャプターの区切りに、文明を切り替えることを提案するシステムをゲーム内に盛り込みました。その区切りにおいて、プレイヤーが作ってきたそれまでの世界は少しだけ“崩壊”します。


例えば蛮族が侵入し、手塩にかけて育て上げた帝国はもはや長くは続きません。さあ次は何をするべきかと考えるそんな時、もしゲーム側のシステムが推奨するように次の文明を選べたら? 仮にアウグストゥスを指導者に選んだのなら「そのままローマの歴史を辿るのはどうでしょうか?」という提案ですね。


もちろん、他の選択肢としてローマの遺産を持つヨーロッパの他の国々からひとつを選ぶこともできます。つまりプレイヤーは任意ルートを選び……それは非常に歴史的な道ですが、最終的にはロンドンのような、異なるレイヤーを内包する都市、あるいはすべての異なるレイヤーを持つ豊かな都市を手に入れることになります。


――ところで、ゲームのグラフィック部分について質問があります。今までは、ややデフォルメ路線な見た目だったと思いますが、本作ではより細部を意識したデザインになっていると感じます。このようなグラフィックの変更を行った理由な何でしょうか?


Ed Beach氏リリースから14年を迎える『Civ V』でも、リアルなグラフィックを目指していたが、現代においてはそれほど素晴らしい見た目とは言えなくなっていますよね。もちろん多くのファンは当時のグラフィックを愛してくれていますが、技術的には現代のほうがグラフィックの質が向上しています。『Civ VI』では、よりスタイリッシュなものにしてみました。しかし本作では、それらの中間的なグラフィックデザインを目指しています。


例えるなら、博物館のジオラマのようなものでしょうか。アートディレクターがその手のデザイン大好きなんですよ。彼は、模型鉄道を見下ろした時のような箱庭なビジュアルを求めていて、それを「Readable Realism(読みやすいリアリズム)」と呼んでいましたね。


服の繊維や鎧のバックルまで緻密に描き込まれたものでも、かといって表面がのっぺりとしたものでもない、中間を目指したデザイン……そのおかげでより現実的に見えるし、カジュアルさを抑えつつ丁度よいバランスが得られたと思います。


―― たしかに……!ともあれ、もうお時間が来てしまいました。改めて本日はお忙しいところ貴重なお話をしてくださりありがとうございました!




積み重ねてきたシリーズの歴史を感じる『Civilization VII』はPC(Steam/Epic Gamesストア)/ PS5/ PS4/ Xbox Series X|S/Xbox One/ ニンテンドースイッチ(記事執筆時点においては海外ストアのみ存在)向けに2025年リリース予定です。


今年も賑わいを見せた「gamescom 2024」、Game*Sparkでは引き続きインタビューやハンズオンプレイレポなど様々な記事を掲載予定!

欧州最大のゲームイベント「gamescom 2024」関連記事をチェック!

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください