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『ファイナルファンタジーX』秘するが花?言わなきゃ伝わらない?「Love」から考える日英の違い【ゲームで英語漬け#145】

Game*Spark / 2024年9月1日 17時30分

今回も引き続き『ファイナルファンタジーX』から。日本では盆や怪談、終戦と関連付けられるためか、死者の魂は夏のイメージがありますね。オレの夏休みもそろそろ終わっちゃうということで、ティーダも異界へと旅立つときがやって参りました。それを見送るユウナの言葉が日英で大きく変わっていて、物語の締めくくりの印象にも影響しています。


Dialogue/Finale


Jecht:You’ll cry. You’re gonna cry. You always cry. See? You’re cryin'.


Tidus:I hate you, Dad.


Jecht:Save it for later.


Tidus:Right... We've got a job to do, don't we?


Jecht:Good. That' s right. You are my son, after all.


Tidus:You know...for the first time, I'm glad...to have you as my father.


ジェクト:泣くぞ すぐ泣くぞ 絶対泣くぞ ほらみろ、泣いてんぞ


ティーダ:…だいっきらいだ


ジェクト:そいつは後に取っておけ


ティーダ:ああ…まだやることがあるからな


ジェクト:わかってるじゃねえか さすがは俺の息子だ


ティーダ:…はじめて思ったよ あんたが俺のオヤジで良かった


Yuna! Everyone!
This is the last time we fight together, okay?
What I’m trying to say is...
after we beat Yu Yevon, I’ll disappear!
I’m saying goodbye!
I know it’s selfish... but this is my story!


ユウナ!みんな!
一緒に戦うのはこれが最後だ いいな?
要するに…ユ=エボンを倒したら、俺…消えっから!
つまり、さよならってこと!
勝手だってわかってる…けど、これが俺の物語だ!


It’s been long enough. This is your world now.
ずいぶん長くなってしまったな これからはお前達の世界だ


Yuna, I have to go.
I’m sorry I couldn’t shoow you Zanarkand. Goodbye!
ユウナ、俺、いかなくちゃ
ザナルカンド見せられなくってごめん じゃあな!


I love you.
だいすきだよ!


Everyone...everyone has lost something precious.
Everyone here has lost homes, dreams and friends.
Everybody... Now, Sin is finally dead. Now, Spira is ours again.
Working together...
Now we can make new homes for ourselves, and new dreams.
Although I know the journey will be hard, we have lots of time.
Together, we will rebuild Spira.
The road is ahead of us, so let’s start out today.
Just, one more thing...
The people and the friends that we have lost,

or the dreams that have faded...
Never forget them.


誰もが…誰もが大切なものを失いました
ここにいる誰もが、郷も、夢も、友も失いました
みなさん…今度こそ、シンは討ち斃されました
今度こそ、スピラはわたし達の世界です
一緒に…今度こそわたし達のための新しい郷、新しい夢をつくりましょう
これからの旅路がどんなに辛くても、時間は十分にあります
一緒に、スピラを建て直すのです
道はわたし達の前に開けています だから、今日から始めましょう
それから、もうひとつだけ…
いなくなってしまった人たちや友、そして消えてしまった「夢」たちのこと…
どうか忘れないでください


英語版の大きな変更は一見して分かるように、「ありがとう」が直接的な告白の言葉“I love you”になっていて、ユウナの恋心を明確に表す言葉です。聖なる泉で気持ちを通い合わせたその後は、どちらかがいなくなることにフォーカスするので、お互いにきちんと確かめる場面がありませんでした。ティーダとユウナのボーイミーツガールは物語の主軸なので、もう一つの軸になるティーダとジェクトの“I hate you”の対比と見ることもできます。


スタジアムの演説にも「夢」の文脈が加えられて、「いなくなってしまった人たち」に祈子の夢(ユウナの中ではティーダ)にも言及しています。特に最後の“or the dreams that have faded...”のところは「時々でいいから」のフラッシュバック直前に置かれています。「ティーダのことは忘れない」とより強い気持ちが込められている印象になりました。


「Love」はどれだけ離れようとも死が二人を分かつとも決して離さない絆なので、別れの場面でも必ず言う言葉なのです。なので、状況としてここしかタイミングは考えられませんし、その気持ちを「忘れない」という後の演説に繋がります。仮に日本語そのままの“Thank you”だと、未練はなくきっぱりお別れするような印象に。ここで“I love you”を言わなかったら、一度も口にしないまま友達以上恋人未満で終わっちゃうの?と思われるのではないでしょうか。むしろ最後の“I love you”にはそれこそ「ありがとう」の気持ちも含まれています。英語ではしょっちゅう口にしている印象がありますが、恋愛が成就する過程においては軽めのデートをして「Like」から「Love」に昇格する瞬間までは、決して軽々しく言ったりはしません。


「Love」を伝えるのは自分の身を捧げても決して手放したくない相手であり、伝えなかったら「そこまでの関係」。ボーダーラインを越えるか越えないかが英語における恋愛における重要なポイントなのです。そこを越えた先から、ドラマで見るようないつでも“I love you”が解禁になります。英語以外でも呼びかけの二人称の切り替えを申し込むように、言葉の上できちんとそのラインを確かめるのは人間関係の最もセンシティブな部分。だからこそ、自分が消えることを覚悟でユウナを守ったティーダには、最大級の“I love you”を伝えるしかあり得ないのです。


逆に日本的感覚では、泉の美しいキスがその役目を果たしているので(トロフィー名も深い愛情)、その時点で想い合うふたりだと多くの人が見做しているはずです。「愛」とか「好き」と言葉で表明するハードルが高いですし、ユウナにとっては指笛が「ア・イ・シ・テ・ルのサイン」。なので、あの場面で英語と同じようなことを言っても野暮でしょう。


日本語と英語どちらのニュアンスがふさわしいのか、ファンの間では今でも論争になりますが、翻訳とローカライズを考える上でもとても好ましい見本です。みなさんはどちらが良いと思いますか?


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