『蚊』『俺の料理』の小ネタって海外でもウケてるの?『アストロボット』Team ASOBI代表ニコラ氏への単独インタビューで直接訊いてみた【TGS2024】
Game*Spark / 2024年9月29日 11時48分
2024年9月26日から29日まで、千葉・幕張メッセにて開催されている世界最大級のゲーム展示会「東京ゲームショウ2024」。新作アクション『アストロボット』はソニー・インタラクティブエンタテインメントのブースでもひときわ賑やかに展示され、試遊スペースと共に愛らしい“アストロくん”と丁寧に作り込まれたゲームプレイの様子を披露していました。
本記事では、そんな同作でディレクターを務めるTeam ASOBI代表 ニコラ・ドゥセ氏へのインタビューをお届け。『ゴッド・オブ・ウォー』『アンチャーテッド』といったおなじみのSIEタイトルコラボで意識したポイント、日本のゲーマーとしてもかなりマニアックに感じられる要素が「海外でどう受け入れられたか」など、気になることを訊いてみました。
『アストロボット』は、PS5向けに配信中です。
――『アストロボット』のリリースから現在までで、ゲーマーからどのような声が届いていますか? 特に印象的な感想やユーザーフィードバックについて聞かせてください。
ニコラ 実は、各ゲームメディアからレビュー記事が出た『アストロボット』発売前の夜9時ごろ、チームでミーティングをしていました。その瞬間にたくさんのフィードバックを見て、このゲームが「うまくいった」という実感を得られましたね。そして「ゲームのどのような部分が楽しいと感じられているか」がわかってきました。よくいただいている反応のひとつは、「プレイしながらずっとニコニコしている」という声です。これは私たちのスタジオのDNAであり、常に大切にしている柱のひとつです。
『アストロボット』を作るときに意識していたのは、「プレイフル」であるということです。「チャーミング」とも言い換えられるでしょうか。見た目、アニメーション、インタラクション、音楽、サウンドデザインなど、全体的な体験を通してこれらの要素を維持することに気を配りました。
――「プレイフル」であることについて、具体的にお聞かせください。「ビジュアル」「操作性」のどれかひとつだけではなく、ゲーム全体の雰囲気作りとして意識していたということでしょうか。
ニコラ はい。『アストロボット』全体で目指したことです。キャラクターの動き方はもちろん、見た目だけでなく、インタラクションでも重要になってきます。例えば「葉っぱの中に入ると小さな葉のオブジェクトがたくさん飛び散り、それらが物理演算で動く」といったような、おもちゃ的な感覚を大切にしました。また、DualSenseコントローラーのおかげで画面で視覚的に捉えるだけでなく、手の中でも感じることができるようになりました。これらの組み合わせが、『アストロボット』のチャーミングな雰囲気を作り出しています。
――プレイしていても「チャーミング」であることは非常に伝わりました。一方で、『アンチャーテッド』『ゴッド・オブ・ウォー』といった“暴力的な表現を持つゲーム”とのコラボレーションでは、どのようなことを意識されていましたか?
ニコラ コラボレーションステージでは、元のゲームシリーズの本質を理解することが重要でした。例えば『アンチャーテッド』で言うと、第1作目から4作目と続く中で変化している部分もありつつ、「決して変わらないコアな要素」もあるのです。『アストロボット』のコラボレーションにおいては、それを絶対にキャッチしないといけないんですよね。
――なるほど。
ニコラ 制作当初、『アンチャーテッド』のコラボレーションステージにはパズル要素がなかったのです。最初と最後にナラティブ要素を少し入れて、ジャングルやロープアクションなども取り込んで、実際に遊んでみる。そうすると、確かに「楽しい」とは感じられましたが、IP全体の「心」とも言える要素を表現するためにはパズルも必要だと感じたのです。
――たしかに、『アンチャーテッド』ステージでは様々な箇所で原作らしさを感じられました。
ニコラ 『ゴッド・オブ・ウォー』の場合は、世界観はもちろん大切にしましたし、その上でジョークも取り入れました。例えば、『ゴッド・オブ・ウォー』コラボレーションステージの一部には「細いスキマに入って前へ前へと進む」といったシーンがあります。あれは実際に『ゴッド・オブ・ウォー』でもよく見られるシーンでしたが、本来は「ロード時間を感じさせないための演出」として用いていたものです。『アストロボット』はステージを一気にローディングするため、そのような演出は必要ないにもかかわらず、わざと「狭い道を頑張って通る」という演出を取り入れたというわけですね。
そういった演出を考えるためにも、チームの間で「コラボレーションするゲームの思い出」を話し合っていきました。すべての思い出を取り入れることはできないけれど、少しずつなら演出として使えたりもします。ひとつの要素を集中して用いるだけでなく、数十秒くらいのボリュームで様々な要素を使っていくイメージです。
――話は変わりますが、『アストロボット』にはマニアックなゲームネタも登場します。特にPS2用ゲーム『蚊』などは、海外のゲーマーからはどのような反応があったのでしょうか。「なにこれ……?」と思われていそうで、気になっています。
ニコラ 「海外」と「日本」の差よりも、「世代」の差のほうが大きいと感じていますね。初代PSやPS2の時代でも、日本のゲームは海外で人気を博していました。日本ではない様々な国のプレイヤーでも、世代がマッチしていればどんなネタなのかは認識できたりします。『俺の料理』のような「日本でしか出ていないゲーム」もしっかりキャッチしている、マニア気質な方もいますしね。「ポリゴンマン」なんかもとても良い例ですね。
――「紫色の顔」だけのキャラクターですね。
ニコラ ああいうレアリティの高いボットの担当者は、チームの中でも最も若い人だったりします。まだ26歳なのに、ものすごいマニアなんです。どのようなキャラが人気があるかなど、PlayStationタイトルについて彼がいろいろなことをリサーチしてくれました。「ポリゴンマン」は初代PSのプロモーションのためのキャラクターなのですが、アメリカやヨーロッパのファンも喜んでくれていました。
――海外のゲーマーが、初代PS世代の日本の広告を振り返って楽しんでいる様子もSNSなどで見られますね。最近も“クラッシュとパラッパがごほうびにスキヤキを食べている。”という広告のイメージがシェアされているのを見ました。今思うとあまりに不思議な広告で、「これはどういうテンションで作ったんだ?」と感じました。
ニコラ はいはいはい、ありましたね(笑)。私もよく覚えてます。
――再び『アストロボット』のゲームプレイについてお聞かせください。今作はハプティックフィードバックやアダプティブトリガーなど、DualSenseの機能を様々な形で取り入れています。「水しぶきが飛ぶ場面で“ポタポタ”と雫が落ちる様子を振動で表現する」といったシーンもありましたが、ああいった演出はどのようなところから考えていったのでしょうか。
ニコラ ハプティックフィードバックに関しては、チームの中にいるエンジニアや、サウンドを担当するメンバーが専門的に取り扱っていました。ゲームプレイ部分を担当するプログラマーと、音を担当するオーディオデザイナーがよくアドバイスをくれていて。よくある演出は「硬いモノ」、つまり鉄のようなオブジェクトをDualSenseで表現する試みですね。『アストロボット』ではバネやトランポリンといった「柔らかいモノ」も試していて、調整しながら取り入れました。
――なるほど。
ニコラ DualSenseの開発に関わっているメンバーは、当然ながら我々とは別のチームですけど、プロトタイプを制作するときは一度Team ASOBIに渡してもらっていました。たぶん、2017年か2018年にはDualSenseを触って試していたと思います。
――かなり早い段階ですね。
ニコラ そして、Team ASOBIがDualSenseを使った簡単なデモを作って、細かく理解を深めていきました。そういったデモ制作はTeam ASOBIにとってもノウハウの蓄積になりますし、RNDD(Research and Development、研究開発)にも繋がります。そうしていろいろ試しつつも、『ASTRO's PLAYROOM』で使わなかったアイデアもありました。『アストロボット』では、そうした技術を現代的に改善しながら取り入れたりもしています。例えば、マザーシップの修理シーンなどですね。一部のシーンでは、4年前に考案したアイデアを更にクオリティを高めて使っていました。
――最後に、『アストロボット』の今後についてお聞かせください。東京ゲームショウ2024直前の「State of Play」で新要素について発表されていましたが、具体的にはどのようなコンテンツとなるのでしょうか。
ニコラ 発表でもあったとおり、スピードランのステージが5つ追加されます。『ASTRO's PLAYROOM』のときもスピードランは人気があったので、今回もゲーム本編を開発し終えたら追加で作ろうと、予てから考えていました。内容は完全新規のもので、ゲームの中に用意されているパワーアップ要素を使って攻略していきます。各ステージには2つのVIPボットがいて、早くクリアできれば1体か2体が獲得できるようになります。これまでに公開しているのは『ステラ―ブレード』のイヴと『Helldiver』と、あと8体いて……すみません、これ以上は話せないです(笑)。
――(笑)。
ニコラ スピードランであるため、ゲーマー向けのコンテンツではあります。しかし、10体のボットを獲得するだけであれば、それほどのプレイヤースキルは必要ありません。今後の情報を楽しみにお待ちください。
――残り8体のボットも楽しみにしています。本日はありがとうございました。
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