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通好みなインディーゲームで知られる「Annapurna Interactive」とは何者? 映画配給会社から分派したパブリッシャーを深堀り【特集】

Game*Spark / 2024年10月6日 12時0分

先日、インディーゲームパブリッシングを続けてきたアメリカの企業Annapurna Interactive(アンナプルナ・インタラクティブ)から25名のスタッフが退社されるというニュースが話題になりました。インディーゲーム業界に名作を送り出し続けてきた名高い会社から、こんなニュースを聞くことになるとは、非常に残念です。


そこで今回は、彼らの偉業を忘れないために、Annapurna Interactiveがパブリッシュしてきたゲームを年代別に追いかけてみましょう。


●そもそもAnnapurna Interactiveって?


(C)Getty Images

彼らはアメリカの映画製作及び配給会社であるAnnapurna Pictures(アンナプルナ・ピクチャーズ)の子会社です。映画製作会社としては「ゼロ・ダーク・サーティ」や「her/世界でひとつの彼女」などの製作を行っています。ちなみに“アンナプルナ”というのは、同社の代表であるミーガン・エリソン氏が旅行で訪れたネパールの霊峰「アンナプルナ山群」に由来するそうです。


映像会社であるAnnapurna Picturesは2011年に設立し、子会社のゲームパブリッシング部門であるAnnapurna Interactiveは2016年から事業をスタートさせています。それでは、ゲーム分野でのヒストリーを順を追ってみていきましょう。


2017年~


■『フィンチ家の奇妙な屋敷で起きたこと』


Giant Sparrow開発のアドベンチャーゲームです。オープニングからいきなりウォーキングシミュレーターの大傑作を持ってくるあたりに、同社のセンスが炸裂しているように感じます。次々と奇妙な事故死を遂げていった呪われた一家にまつわる物語を、是非あなたの目で確かめてみてください。


同年は他に、すでに『風ノ旅ビト』で人気を博していたThatgamecompany開発の『Flowery』のWindows/iOS版や、Buried Signal開発のアーティスティックなスライドパズル『Gorogoa』などの販売も手掛けています。


2018年~


■『Donut County』


Ben Esposito氏によって開発されたパズルゲームです。擬人化された動物たちがのんびり暮らす街に、何もかもを飲み込む穴が穿たれてしまった……その割には呑気そうにしているアライグマのBKや少女のMiraたちは、どうしたら膨れ上がっていく穴から街を救い出せるか? について考えます(といっても、ゲーム自体は穴にどんどん物を落としていくのですが……)。


シュールな会話劇とのんびりしたゲームプレイがウリの一作です。ぜひとも寝る前などにちょこっと起動して遊んでみてください。友達にスタンプを送りすぎないように!


『Florence』


Mountain開発のパズル要素を持ったアドベンチャーゲームです。25歳の女性フローレンス・ヨーとチェリストの男性とのあいだの淡い恋を、インタラクティブ・アートとして描いた一作。恋の最中に経験する様々な出来事を、小さなパズルゲームの連続によって表現しています。こちらもとても短い作品なので、大作の合間にちょこっとやってみてください。


同年は他に、Fullbright開発の『Gone Home』のiOS/Nintendo Switch版や、A44開発の『Ashen』の販売も手掛けています。


2019年~


■『Outer Wilds』


Mobius Digitalが開発する、22分のループに囚われた宇宙で何度も死を経験しながら、隠された謎を解き明かすスペース・アドベンチャーゲームです。


謎解きの出来、ストーリーとの親和性、ヒントの散りばめ方、神秘的なSF設定、愛らしいキャラクターたち、印象的な音楽……どれを取っても超一級品のオープンワールドゲームです。Nomaiたちが辿り着けなかった宇宙の秘密を、あなたの手で解き明かしましょう!


■『Sayonara Wild Hearts』


Simogo開発の失恋した女性が異世界を駆け抜けるリズムゲームです。本作は公式サイトで「ポップアルバムビデオゲーム」と呼称されており、ゲーム画面とBGMが完全にシンクロしている作品です。彼女の心象風景を追いかけながら、ビビッドでクールなまったく新しい音ゲーにチャレンジしてみてください。


同年は他に、Thatgamecomapany開発の『風ノ旅ビト』のWindows/iOS版や、『塊魂』の開発者でも知られる高橋慶太氏が携わっている『Wattam』(Funomena開発)の販売を手掛けています。


2020年~


■『Kentucky Route Zero: TV Edition』


Cardboard Computer開発。存在しない路線――0号線への配達を頼まれた主人公が、めくるめくマジックリアリズムの迷宮に囚われるポイントクリックのアドベンチャーゲームです。ケンタッキー州のハイウェイを駆けながら、現実と幻想が入り混じった世界を旅していきましょう。


第3章のバーのシーンで流れる「Too Late To Love You」はゲーム史に残る屈指の名曲だと思っています。是非プレイして、聴いてみてください……!


同年は他に、Dreamfeel開発の『If Found...』や、Giant Enemy Crab開発の『Due Process』や、Giant Sparrow開発の『The Unfinished Swan』のWindows/iOS版、Hollow Ponds, Richard Hogg開発の『I Am Dead』、Giant Squid開発の『The Pathless』の販売も手掛けています。


2021年~


■『Neon White』


『Donut County』を開発したBen Esposito氏の新作、それが『Neon White』です。ハイスピードパルクールFPSという尖った建付けのゲームで、超特急で走り抜けながら、敵を倒し切るタイムを競うというものです。パリッとした質感のステージに何度もトライして、友達とタイムを競い合う遊びはかなり楽しいです。


■『Solar Ash』


『Hyper Light Drifter』のクリエイターが送るハイスピードアクションゲーム。重力のねじ曲がった世界で、虚無に飲み込まれる母星を救うのがプレイヤーの目的です。


同年は他に、Graceful Decay開発の『Maquette』、Fullbright開発の『Open Roads』、Variable State開発の『Last Stop』、Luis Antonio開発の『12 Minutes』、Beethoven & Dinosaur開発の『The Artful Escape』などがリリースされていました。


2022年~


■『Stray』


BlueTwelve開発。一匹のネコちゃんがサイバーパンクな街を放浪するアドベンチャーゲームです。美麗なグラフィックや、緻密なネコの動きに魅了された人は多く、かなりの話題作となりました。


■『Hohokum』


Honeyslug開発。2014年に出た名作のWindows版を、Annapurna Interactiveが手掛けています。空飛ぶ凧のような生物を操り、不思議な世界でのんびりと色々なものにインタラクトしていく……癒しの一本です。


同年は他に、Team Hindsight開発の『Hindsight』の販売も手掛けています。


2023年~


■『COCOON』


『LIMBO』や『INSIDE』を生み出したJeppe Carlsenのスタジオ・Geometric Interactiveが開発。世界の中にある世界に飛び込む入れ子形式のパズルですが、あまりに複雑で難解になる前に次のステージが解放されるため、ほどよく楽しい体験がずっと続きます。


もしかして、この球をさっきの世界を通ってこっちの世界に……? なんていう頭の体操をしながら、不可思議でカラフルな空間を行き来するいかにもAnnapurna Interactiveが売りそうなゲームです。オススメ!


■『Storyteller』


Daniel Benmergui開発。色々な絵を組み合わせてストーリーを組み合わせていくゲーム。可愛らしいイラストを組み替えて、ヘンなシナリオを自由自在に作っていきましょう。画面共有で友達に読ませたりしたら面白いかも?


同年は他に、 Hidden Fields開発の『Mundaun』も販売しています。


2024年~


■『Lorelei and the Laser Eyes』


『Sayonara Wild Hearts』のSimogo開発。中欧の古いホテルに招かれた女は、現実とも幻想とも取れない空間で、延々とパズルを解かされます。膨大なパズルの果てに、女は何を見るのでしょうか?


同年は他に、Hollow Ponds, Richard Hogg開発の『Flock』、Open Road Team開発の『Open Roads』などを販売しています。


発売予定のタイトル


退社のニュースはありましたが、現在発表されているタイトルのサポートは継続的に行われるそうです。主なタイトルは以下からご紹介。


■『Blade Runner 2033: Labyrinth』


同社初となるセルフ開発タイトルのアドベンチャーゲームです。映画「ブレードランナー2049」と世界観を同じくする作品であり、公開されているトレイラーからすでに濃密なサイバーパンクSFの香りが漂ってきます。


■『to a T』


『塊魂』『Wattam』の高橋慶太氏の新作。ある日、体がTポーズに固定されてしまった学生をユニークに描く作品のようです。to a Tというのは「完璧に(適合する)」という意味の慣用句なので、その意味にかかった展開が期待できるかもしれません。


■『SILENT HILL: Townfall


10月1日には『SILENT HILL: Townfall』の「開発継続」が発表されています。コナミデジタルエンタテインメントとAnnapurna Interactive、そして『Stories Untold』『Observation』で知られるNo Codeの共同で開発される本作は予てから注目されており、Annapurna Interactiveを巡る此度の報道によってその動向にも心配の声が上がっていました。このタイトルについては同社公式Xアカウントから開発継続のアナウンスが届けられたということで、ひとまず続報を楽しみに待ちたいところです。




以上、Annapurna Interactiveの歴史をザックリと振り返らせていただきました。特徴的なアートゲームをメインに送り出しつつも、時折スピーディーなアクションを売り出したり、心に染みるアドベンチャーも用意していたりと、ラインナップに隙がないパブリッシャーでした。メインメンバーの今後と、これから発売されるタイトルそれぞれに期待したいと思います。


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