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『Ghost of Yōtei』ならず者は国境の向こうへ行く―マカロニ追加の「チーズバーガーサムライ」はどんな味がする?【ゲームで世界を観る#88】

Game*Spark / 2024年10月20日 18時0分

先の9月25日、東京ゲームショウ2024の開催に先立って行われた「State Of Play」において、Sucker Punchの最新作『Ghost of Yōtei』が発表されました。時代劇体験が好評を博し、映画版も制作中である『Ghost of Tsushima』の次作ということで、予告から大きな注目を集めています。


今回の時代設定は1603年の戦国時代末期で、関ヶ原の戦いから大坂の陣の間に当たります。関ヶ原の戦いの勝利で徳川が実権を握ってから、国内から大戦はほぼ無くなって一時的な平穏が続いた時期でした。


蝦夷を扱うに当たってはアイヌと和人(所謂日本側)の関係に触れる必要があります。蝦夷地は鎌倉時代より流刑などで和人の入植があり、作物が栽培できないために工芸品や狩猟採取の交易がアイヌと和人の間で行われてきました。しかし取引のトラブルなど(ここではそれ以上の言及は避けさせてください)で対立が深まり、何度も武力衝突まで発展します。この武力衝突の中で室町時代に頭角を現した武田信広が、松前藩に連なる蠣崎家の祖に当たります。アイヌの中でも首長同士の戦いはあり、本州の乱世ほどではないにせよ、それなりに争いが起こる地域でした。


1603年は松前氏(旧蠣崎)が徳川から蝦夷の支配権を与えられる直前で、和人とアイヌの関係が変化していくタイミングです。アイヌとの交易は蠣崎氏が押さえていましたが、まだ他との取引が禁じられてはいませんでした。1604年の黒印状によって松前氏は交易の独占権を得ると、徐々にアイヌに不利な政策を強めていき、後に大規模な蜂起が起きるに至るのです。


松前藩の実行支配地は渡島半島にとどまり、本作の舞台となる羊蹄山は徳川政権の手が及ばない地域です。予告を見る限りでは和人とアイヌの関係では無く、そこに流れ着いた「牢人」が物語の中心であるようです。戦国期では豊臣が北条を落としてから戦が減り、各大名は武人を抱えておく必要がなくなります。仕官先を失った武士、つまり「牢人」たちは農業や工芸などに職を変えるか、当てもなく各地を放浪するほかありませんでした。言わば武士の就職氷河期でしょうか。


乱暴狼藉で治安悪化を引き起こす彼らは、当時の社会問題にもなっていました。牢人達は職を求めて京に集まり、秀吉は市中の家を牢人に売ることを禁じるほどでした。関ヶ原の一連の合戦では再び需要が発生したものの、徳川政権下で行われた相次ぐ減封により牢人は一層増えてしまいます。後に大坂の陣で豊臣方に集結した牢人は10万を超えるとも言われており、その中には真田信繁など名を残す武将も多数含まれます。


中には諸国を巡って武術を極める武芸者もいて、二刀流の二天一流を創始した宮本武蔵もその一人です。武蔵の武勇伝には鎖鎌の使い手「宍戸某(一般的には宍戸梅軒)」が有名ですが、気になるのは本作の主人公「あつ」もまた二刀流の使い手であり、敵対する武芸者にも鎖鎌使いがいることです。そうなると、○番勝負のような多彩な武術による決闘が物語の主軸になるのかもしれません。前作では蒙古兵から対馬を守るという義の物語でしたが、あつは何のために戦うのか、その動機にも注目です。


夕陽のガンマン/監督:セルジオ・レオーネ

演出面では今作は「マカロニウエスタン」を色濃く打ち出しています。テーマ曲で力強くかき鳴らされるギターと、ハンターに追われるお尋ね者、そして国境を越えた先の辺境、画面から西部劇の換骨奪胎をやりたいという意志がひしひしと伝わってきます。『Tsushima』が黒澤映画なら、今度はそれに影響を受けたウエスタンに挑戦というところでしょうか。正義の保安官がヒーロー然として活躍するハリウッドの西部劇に対して、イタリアで製作された「マカロニウエスタン」は、アウトローの渋みやより派手な銃撃戦など、「お行儀の良い」ハリウッドより刺激強めのエンタメ路線が特徴です。クリント・イーストウッドもマカロニの方から出世した役者で、「荒野の用心棒」で演じた黒衣の男は西部劇のアイコンにもなりました。


イタリアの映画音楽と言えばやはりエンニオ・モリコーネは欠かせません。「ニュー・シネマ・パラダイス」「海の上のピアニスト」などの美メロも有名ですが、初期には数多くの西部劇に関わりました。予告のギターからは「夕陽のガンマン」を連想せずにはいられませんね。


日本の時代劇も70年代にマカロニウエスタンの演出を取り入れており、あつの破れ笠は「木枯し紋次郎」を彷彿とさせます。前作では開発チームが「チーズバーガーサムライ」なんてうそぶいていましたが、今回はそこにマカロニかスパゲッティか、どちらにしても大きな具材を追加で乗せてきたというわけです。その善し悪しがどうなるかは分かりませんが、二作目にして大きな「味変」があることは覚悟した方が良いでしょう。


映画界のジンクスでは「2作目は失敗する」とよく言います。焼き直しを見透かされたり、予算が増えすぎて逆に収拾が付かなくなったり、要因は様々ありますが、良い作品が生まれる瞬間の勢いは簡単には再現できないもの。果たして『Ghost』はそのジンクスを破ることはできるのか?その答えは「封切り」の時に。


おまけ




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