17年ぶりに蘇ったマナと聖剣と精霊たち『聖剣伝説 VISIONS of MANA』開発者インタビュー―小山田P・吉田D・小澤Dに発売後だから訊ける開発の裏側とシリーズの現在
Game*Spark / 2024年11月10日 12時0分
「聖剣伝説」シリーズの約17年ぶりの完全新作『聖剣伝説 VISIONS of MANA』が2024年8月29日にリリースされ、数か月が過ぎました。
火の村ティアナに住む”精霊の守り人”の主人公ヴァルと幼馴染の少女”火の御子”のヒナが旅の先々で仲間と出会いながらマナの樹を目指す旅を描いている本作。道中は、セミオープンフィールドで描かれた広大な世界が広がり、強敵とエンカウントした時は、精霊の力を宿した武器を駆使しながら敵に立ち向かい、幅広い戦術を使いこなすバトルを楽しめます。音楽や背景、登場人物など随所に『聖剣伝説』らしさが表現された一作でした。
開発には、NetEase Gamesが中国・広州と日本・渋谷の2か所に設立した「桜花スタジオ」が参加し、二か国での開発が行われるといった新しい試みも行われました。
今回は発売後に大きな反響を呼んだ本作について、プロデューサーの小山田氏とディレクターの吉田氏・小澤氏に、発売後だからこそ聞ける意外な苦労や力を入れたところを伺ってきました。
※編集部注 本稿にはネタバレが多数存在します。未クリアの方はご注意ください。
――今日はよろしくお願いします。まずは皆さんの自己紹介をお願いします。
左から吉田亮介氏、小山田将氏、小澤健司氏
小山田将氏(以下、小山田):スクウェア・エニックスで「聖剣伝説」シリーズプロデューサーを務めております。小山田です。よろしくお願いします。
吉田亮介氏(以下、吉田):吉田です。『聖剣伝説 VISIONS of MANA』ではディレクターを2人体制でやっていまして、私はバトルやレベルデザイン等、ゲームプレイ全般をディレクションしていました。
小澤健司氏(以下、小澤):小澤健司と申します。今作ではディレクターとして、シナリオやカットシーンイベントなどのゲームのシステム周りを中心に見ていました。よろしくお願いします。
――17年ぶりのシリーズ最新作となりますが、桜花スタジオと共同開発となったきっかけを教えてください。
小山田:元々桜花スタジオの方とご縁があって、イメージや将来こうしていきたいというお話の中で日本と中国の二国間での開発というなかなか面白い体制での開発ができそうなことや、ディレクターのお二人のような優秀な方々が集まっているという話を聞いていました。
それで、一度技術的なトライアルをさせていただいたんですが、技術力としても魅力的なものがたくさんあったので、それを生かした「聖剣伝説」のイメージを提案してもらった時に、これなら新しいものが作れそうだと思ってスタートしました。
――そういったご縁から始まり、トライアルを経て開発が始まったのですね。開発期間は何年ぐらいですか?
小澤:企画ベースを含めると四年ぐらいですね。
吉田:決まったスケジュール通りに開発も進んでいきました。
――中国と日本という二国体制で、開発期間中に新型コロナウイルスの流行もあり開発はとても大変だったのでは?
小山田:始めようって話し始めて、出張も想定しながら本当に色々準備していたところでコロナが流行してしまって、最初から最後までほとんどリモートでのやりとりでした。
吉田:開発側の私たちは三年間広州にいて、ディレクターのどちらかが半年に一回は日本に帰ってきて、小山田さんにお会いして打ち合わせをしていました。我々自体は向こうにいて指揮を取っていました。
小澤:実は結構、中国で出社ベースに戻るのは早かったんです。三ヶ月ぐらいで出社できるようになっていました。そういう意味ではコロナの中で日本で開発環境を構築してやっていくより良かったかもしれないですね。
小山田:中国に戻られるときに隔離されるのが大変だったそうですね。
吉田:ホテルの扉から出れなくて、1週間どころじゃなくて、3週間隔離で、家族も一緒だった時もあったんで、家族全員で2週間半ぐらいはホテルで暮らしていましたね。
――3週間は大変ですね。そういった大変な中で、海外とリモート開発となると「聖剣伝説」とは何かを海外のスタッフに伝えるために、かなり工夫されたのでは?
小山田:最初のビジュアルを作る時に、すり合わせを結構しっかりしました。ただ、お二人とアートチームは広州にいらっしゃって日本的な感覚をお二人から伝えてもらったので、そんなにぶれた成果物が出てくることはなかったですね。
小澤:中国の開発スタッフに「聖剣伝説」シリーズをプレイしたことある人や、すごく好きな人が結構セクションの中にいて、おかげでコミュニケーションが助かりましたね。
吉田:モンスターのデザインやアニメーションでも、例えばラビが口を開いた時の開き具合とか細かいところのフィードバックっていうのは、かなり厳しかったなと思うんですよ。任せていただける部分は任せていただけるんですけど、モンスターデザインのフィードバックは、簡単に通る時もあれば難しいときもあって、例えばラビの攻撃前の口の開き方とかで二、三ヶ月ぐらいやり取りがありました。
――そんなにやりとりが?
吉田:ただ、監修の部分のメリハリやここだけはしっかりというところを見ていただいたから、従来のファンの方に「聖剣伝説」らしいと思っていただけたのかなと。多分そういった積み重ねで実現できたんじゃないかなと思っています。ほんとやってよかったなと思いますね。一例でラビを出しましたが、ラビだけではなくて「聖剣伝説」で大切にされる部分はしっかり感じましたね。
――アートチームは背景担当のスタッフも中国におられたのですか?
吉田:そうですね。アートの背景リーダーは中国人なんですけど、日本の大手ゲーム会社で長い経験を積んでいた人が2人いて、そこは大きかったなと思っていますね。
――プレイしていると、聖域に入ったところの森が「聖剣伝説」らしさがすごく感じられました。コンセプトがしっかり伝えられているなと感じました。
小澤:ステージの背景はストーリーを通じて感じてほしい心情やどういう場所なのかを表現するのが重要で、シナリオは日本語なんですけど内容を読み解いてくれるスタッフがアーティストの中にいたのは、すごくやりやすいポイントでした。
――他に背景でいうと、エリスタニアでは水球から水が降っているところは世界観を表す良さを感じたのですが、コンセプトの中で詰めながら作っていかれた感じですか?
小山田:マナの樹や聖域は磯野宏夫さんのイメージを描けないかと話をしていた後に、他のエリアを作り始めてもらって世界の絶景というかファンタジー世界としての幻想感みたいなのを織り交ぜて作ってほしいと伝えていました。
小澤:3Dゲームの空間デザインとして、必要な目立つものや目を引くものみたいなのを意識しつつ、最初は絵で小山田さんとやり取りをしていました。
――コンセプトアートを渡して話し合っていったのですね。試行錯誤もずいぶんされたのでは?
小山田:逆にコンセプトアートを受け取った時に、本当にこんなもの作れるのか?って(笑)結構大きなものが大量にあったんですよね。
小澤:本当にやりきったというか、時間がなくてちょっと削りましょうとかは、あまりなかったような気がしますね。
吉田:一度これはやりましょうと決めたことは、最後まで全体通してできたっていうことが多かったんじゃないかと僕は思います。
――世界観にギミックも合わせて作りこまれていた印象がありますね。登場キャラも舞台となる街に馴染んでいる感じがありました。キャラを作る時ですが、キャラが先に作られたのか、それとも世界を先に作られたのでしょうか。
小山田:どっちかっていうと、場所のイメージの方が先行してこういう土地なんで、こういう種族や人がいるだろうという話をしました。
小澤:もともといた種族もいれば、今回追加したオリジナルのキャラもいて、後はおなじみのキャラを出していきましょうとか、そういったオーダーもありましたね。
吉田:NPCに関しても、このキャラは出すでしょ?みたいなのも決めていきましたね。
――おなじみのキャラでいうと、2Dだったキャラを3Dにする難しさもあったかと思いますが、そのあたりはいかがでしたか?
吉田:あんまり気づかれてないんですが、モティさんのダンスはわざわざモーションキャプチャーで収録しているんです。中国でモティさんのダンスを見せて踊ってもらって。だから、あのダンスは国をまたいでいるんです(笑)。
あとは、街の中にNPCをどれだけ同時に配置できるかでした。できるだけたくさん出したいんですけど、スペックの関係上限界がありますので最後まで苦労しました。アートとエンジニアチームが最後まで調整を頑張ったところですね。
小山田:PCのスペックによって、解像度とキャラの表示数は直結してしまいますからね。
――モティさんの踊りが海を越えた(笑)。PC向けになるとユーザーの環境に左右されますよね。
吉田:あと今回は、街の人との会話やサブクエストを引き受けられるので、このプラットフォームだけその人がいないっていうのはできないですね。他のキャラでいうと、イベントシーンでカリナが踊るところもモーションキャプチャーです。
小澤:あと、プロの仕事で成り立ってるのはジュリですね。演奏まで含めてすごくご協力いただいているんです。ジュリを歌いながら登場させたいって、わりと突発的に提案して受け入れていただいたので、急いで歌詞書いて持っていって、その場で歌ってもらったりして実現しました。
――キャラの制作秘話は面白いです。ちなみに今回は関西弁のキャラが多いですよね。
小澤:あれは実は京都弁のつもりなんです。
小山田:ウンディーネがもともと関西弁で、今作もそうなんですけど、設定上ではカリナの家系がウンディーネのお世話をしていたのでその影響を受けているんですよ。
小澤:ドラゴン族の人でも話しかければ関西弁のキャラがいるんですけど、実は遠い親戚的な繋がりがあるみたいな仕込みがあったりしますね。
吉田:別のインタビューで石井浩一さん(※「聖剣伝説」シリーズの生みの親)が関西弁は時空を超えるって言っていて、今回も時空を超えてきたんじゃないのかなと。
――今後も時空を超えて受け継がれそうですね。発売から数か月たちましたが、ユーザーの反応をご覧になっていかがですか?
小山田:過去作を遊んだことがある人たちからはすごく「聖剣伝説」らしいって声がありました。これは過去作のオマージュかなって考察してくれる人もいて、気づいてもらえたら嬉しいです。「聖剣伝説」じゃないって言われなくてよかったなって。
小澤:すごいほっとしました。
吉田:今回、我々もいましたけど外部かつ海外の会社での開発だったので、「これじゃない」って言われないか結構ドキドキしましたね。なので「聖剣伝説」らしさや外してはいけない部分は、かなり気をつけて確認をするようにしました。ここは私たちも外さないように意識してきた部分で、ネット上の意見でしっかりとポイントを抑えているというコメントもあってかなりホッとしましたね。
――これはユーザーがプレイするまでわからないですよね。開発において、海外の会社の起用には社内ではどのような意見がでましたか。
小山田:意見というか、量産する上で外部に頼むっていうケースはこれまでもありましたからね。ただ、新スタジオであったのでそういう取り組みができるのかっていうのはありましたね。
――17年ぶりに始動する「聖剣伝説」を新スタジオに任せるわけですからね。でも、やってみて大成功だったのでは?
吉田:シリーズを最新化する上で、時代に適したところまでは引き上げられたんじゃないかなっていう感覚はすごいありますね。
小澤:昨今、AAAタイトルに求められるゲームプレイと「聖剣伝説」にもともとある色々なシステムを融合させて、四年でまとめたのは確かによくやったと思っていいかなと。
――コロナ禍もあって発売延期してもおかしくなかった中で、計画通りリリースできていますしね。
吉田:一番うまくいった要因としては、最初にかなり粗削りなんですけどバトルやステージギミックの試作を作って、精霊の武器を8つが登場してこういうサイクルのゲームになるというのを提示するまでが早かったんですよね。
プロジェクト終盤になってから、最初の半年か一年の頃のプレゼン資料を見ていると、遊びのコア部分ができていたので、スタートであったり、手を動かす速さっていうのは本当に良かった部分かなと思います。一番最初に述べたように、スケジュール通りできたってことにつながるのかなと。
――海外は、日本に比べて意思決定などビジネスのスピードが早いと言われることがあるんですけど、開発においても、日本との違いはあったんですか?
吉田:そうですね。早かったし、僕は中国語が喋れないのでコミュニケーションに通訳を交わさないといけないんです。そうすると、やっぱり2倍、3倍と時間かかっちゃうことがわかったので、先にやりたいことを画面に出して、画面を元に会話するスタイルに変えたんです。一日も早く画面に出して進めていきました。変な言い方かもですが、言葉が喋れないことがいい方向に動きました。
小澤:中国のスタッフは結構Unreal Engineに習熟していて、僕とか吉田さんが小山田さんに見せる手前のものを作るまでがすごい早かったんですよ。
――画面を見ながら開発をした方が早く進むのは面白いですね。開発はUE5ですか?
小山田:UE4.2ですね。開発が始まった時に登場するって聞いていたんですが、正式に来るタイミングが分かんないことや、途中からUE5に変えて大丈夫かっていうのも分からなかったですね。開発も始まって一年ぐらいで入れ替えるにはちょっと難しいかなと思いました。
――少し話は変わりますが、登場するキャラで言うと、敵の攻撃も多彩で個人的にはヴァンパイアの吸血がつらかったですね。体力ゲージがみるみるうちに回復するんですよ。
吉田:あれはやりすぎたっていうか、ちょっと強すぎたかな。ネットで見ていると「ラスボスより強いぞ」って書かれていたりして、味方が寝ているところに吸血が来てハマっちゃうっていうのがあるようですね。その負のループに入ると苦戦しているみたいですね。
小山田:ただ、睡眠を無効にできるアビリティがあって、ある意味バトルの中でアビリティっていう存在をしっかりと意識してもらう機会にもなるなと思っていた部分もあります。
――そうですね。あとは物理ダメージ無効の魔法もありますし。豊富にあるスキルをいろいろ試す機会になったし、クリアするための解決策も用意されているなと思ったので、皆さんなんとか倒しているのではないかと思います。
小澤:そこは確かにアクションRPGのRPGっぽいバランスの部分ですね。吉田さんも最後まで調整していましたね。
小山田:全部レベル上げて倒せるのもいいんですけど、やっぱりどこかでちょっと考えて戦う要素を入れてほしいっていう話をしていました。
小澤:実はあのボスにこの精霊器使うと…みたいなのがあって、実際攻略が楽になる要素ですね。
――サブクエストでもらえるスキルやサボテン君を見つけてもらえるスキルがストーリー攻略にうまく組み込まれていた印象はありますね。あんまりレベル上げをせずストレートに進みました(筆者はノーマルでプレイ)のでバランス調整も良かったのかなと。
小澤:サボテン君とかサブ的な要素とかサイドクエストを軽くでいいんですけど、ちょっと寄り道的にやっていただければ、お金もそんなに足りなくなることもないし、十分敵のレベルに追いつけるぐらいのバランス感になっていますね。
吉田:本当にストーリープレイ一本で行っちゃうと、さっきのヴァンパイアのようにどこかで壁に当たっちゃうかもしれないですね。
――過去作をやっていた人には忙しいからと言わずに久しぶりに「聖剣伝説」を遊んでほしいなと思いました。中には子供と一緒にプレイして楽しく遊んでいる人もいて、2世代で本作を楽しんでいる人もいるようですね。
小山田:海外のインタビューとかですと、文化的なギャップなのか、割と高難易度を求める人も多かったんですが、「聖剣伝説」シリーズって振り返るとRPGとしてレベルを上げれば、ちゃんとクリアできるんです。そういうのが根底にあるから私たちが子供の頃も遊べたと思うので、上手なら確かに低レベルでクリアできるんですが、レベルを上げれば最終的にクリアもちゃんとできるよっていうところは最初からお願いしていました。
吉田:最初に明確にそう言われた覚えがありますね。あと、私が『デビルメイクライ』を作っていたからなのか、難しくしないでくださいねって、死にゲーとかにしないでくださいね、という話があって。それはこういう理由だからと、このタイトルの難易度をどうするのかという話になった時に説明をいただきました。
小山田:難しくするならアビリティとかスキルで最終的に解決できるというか、答えがちゃんとあるような遊びにしてもらうようにしたいですね。
――「聖剣伝説」は死にゲーとは違いますからね。他に小山田さんから桜花スタジオの方に伝えたことはありますか
小山田:ストーリーだと、シリーズの共通のテーマがキャラクターたちの出会いと別れによる成長というところと、石井さんが言われていた「無償の愛」に意味があるっていうところで、それらを感じられるストーリーにしてくださいとお願いしました。
――そういった要素が今回のシナリオにも反映されているわけですね。
小山田:これまでの「聖剣伝説」では、人間同士との対立、例えば戦争とかで自然を破壊してみたいなのが多かったんですけど、割と今回は自然の節理の中で生きていて、その反面で過酷さもあるという視点から始まって世界の真実に向かっていくみたいな流れになっています。
そういう始まり方も「聖剣伝説」っぽいというか。敵が魔王として君臨しているとかではなく、御子というシステム自体は現代人からすると結構違和感があるとは思うんですが、過去の文化で言えば自然災害を恐れて生贄を捧げるというのは、どこの国の話でもありますのでそういう世界観にしています。
――確かに、そういう風習は見られますね。
小山田:歳を取って親になると子供のために尽くそうっていう気持ちも湧いてきている中で、現代だと違和感はあるけど説得できる部分もある設定かなと。なので、人が集まって人を吊るすわけじゃなくて、自然と対話する方法の一つだと。ただ、やっぱりその現代的な視点を持っている人たちからすると、受け入れられない部分っていうのが強くなっちゃうので、それをどう落とし込むかを話し合いましたね。
――現代の感覚ではそうかもしれませんが、考えるきっかけになるかもしれないですね。過去の例でいうと、崇高な使命を帯びて殉教した人もいますからね。
小山田:紐解いていくと、宗教的な部分って日本人からすると分からない部分もあるのですが。ただ、その土地に生きる人間の視点や生き方に対して、この人たちはこういう世界でこういう考えで生きているんだっていう気持ちでプレイを始めてもらえると、『聖剣伝説 VISIONS of MANA』の世界観にもすっと入っていきやすいんじゃないかと思いますね。
――シナリオでも工夫をされたのでしょうか。
小澤:テーマを決めて、その後のシナリオの執筆時には「このゲームを遊び終えたとき、キャラクターのことは絶対に好きになってもらおう」と思っていました。なので、個別の心情やエピソードについては話しあいつつ、どんどん追加していきましたね。
小山田:フィールドでも、こんな無言で歩いてないじゃない?もっと話しているよって言って追加しました。
――キャラの性格は良く伝わりましたね。だから、月の神獣のところで、キャラの性格がめちゃくちゃ入れ替わっちゃうシーンがすごく面白くて。パルミナのテンションがやたら高くて、キャラが激変してるのが面白かったですね。
小澤:正直よくOKしてくれたなと思いました(笑)
小山田:そういうちょっとコミカルさに対して需要があるのも「聖剣伝説」なので(笑)
小澤:ブースカブーに彼女を作ったりとか、結構自由にやりましたね(笑)
――たらい落ちてきますもんね(笑)
吉田:オーダーとしてはあそこでブースカブーを正気に戻さなきゃいけないんですが、彼に手を下すのはやはりちょっと違うんじゃないかって話して、じゃあ、どう正気に戻すかってなった時に、タライが落ちてくることに。
――日本の伝統芸ですからね(笑)
吉田:あの見た目なら許されるかなって(笑)あれも日本人のセンスで海外のセンスではないと、あくまでもやっぱり日本製でコアな部分は我々のテイストがあるんじゃないかなって気がします
――キャラクターを立たせる工夫も結構されたのでしょうか。
吉田:さっきのブースカブーには直接手を下さないとか、トレントみたいなオリジナルのキャラについてもこのキャラはこういうことをしないとか、このキャラはこうであるべきという点は前提で色々いただいていました。木の精霊、トレントと戦う上でも、こういった攻撃までだったらOKという線引きがあって、口からビームを吐くとかはやめてほしいとか、作る前に、小山田さんと僕で話し合うんですけども線引きをしっかりしてもらえたので、キャラが立つ。それが「聖剣伝説」らしさに繋がったのかなと思っています。
――しっかりと線引きをしている中で個性的なキャラを作っていかれたのですね。皆さんが気に入っているシーンとかキャラとか頑張った点をお聞きできればと。
小澤:敢えて挙げるなら、火の神獣を倒した後に、ヴァルがヒナのお父さんお母さんにこれまでの出来事を正直に伝えるくだりですね。かなりやったなっていう。意見を出し合いながら作って、映像もあえて顔を見せなくすることで、想像に訴えるシーンができたかなと。ぐっと手を握るところだけを映して、その後はシナリオとしても最終目標に向けて全員が一丸となっていきますが、ヴァルが気持ちを整えて転換点となるシーンとしてはすごいよかったなと思いますね。
小山田:大人を大人としてちゃんと描けたところというか、感情をぶつけたくなるけど、大人の対応をしていたところですね。あと、個人的にはくだらないシーンが好きだったんで、三姉妹の猫の毛を取るシーンが好きですね。
吉田:やっぱり、ラビの口ですね(笑)
――ラビに始まりラビに終わる(笑)
小山田:扱い的にはラビって骨が無くて、『聖剣伝説2』でも倒すと、骨がバラバラ出たりしなくてパチンって弾けるっていうのがあって。動物的な口の開き方というよりは、「ラビの口の開き方」でやっていますね。
吉田:開いた時のこの前歯の角度とかも大事で……なんか思い出すと辛くなりますね(笑)。
――プレイヤーの皆さんにもぜひ見直してほしいですね。気が早いですが「聖剣伝説」シリーズは今後どうなっていくのでしょう?
小山田:シリーズ自体は長いので、ユーザーさんとの接点は作りながら忘れられないようにしたいですね。
――ありがとうございました。
これまで培ってきた「聖剣伝説」の世界観や大切にしてきたことに加え、海外スタジオと開発するなどチャレンジの数々を経て発売された本作。今回のインタビューでは、笑顔で気さくに応じていただき、楽しいインタビューとなりました。読者の皆さんも"聖剣"と"マナ"を舞台にした世界に触れてみてはいかがでしょう。
『聖剣伝説 VISIONS of MANA』はPS5/PS4/Xbox Series X|S/PC(Steam/Microsoft Store)向けに発売中です。
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