遂に稲作実装で米が力に!現実の米農家がゲームの稲作に見た「リアル」―プレイレポ『Farming Simulator 25』
Game*Spark / 2024年11月17日 16時0分
読者の皆様、数年に一度の農業シム新作『Farming Simulator 25』の季節がまいりました。思い返せば数年前、編集部に乗せられるまま『ファーミングシミュレーター 22』をプレイした筆者。リアル農家でありつつも同作品にハマってしまった結果、数百時間もプレイすることに……。
しかし、大元を振り返れば「米農家としての知見を活かして記事を執筆していただければ」と編集部に依頼されたものの当時の最新版であるところの『ファーミングシミュレーター 22』では稲作は未対応。穀物などを栽培、売買するだけで終わってしまいました。結果は数百時間のドハマリではあったのですが……。
しかし、最新作である『Farming Simulator 25』では遂に稲作に対応したらしい……とのこと。開発会社はスイスにあるGiants Softwareです。リアルを売りにしている本作で、「アジアでは一般的ではあるものの、稲作をスイスのメーカーがどこまで再現できているのか?」と疑問に思った筆者は、実際にプレイして確かめることにしてみました。
なお、本記事の執筆にあたってはGiants Softwareよりゲームコードの提供を受けています。
超高級車使えるの!?マジ!?
冒頭でも述べたように前作では稲作はなく、米農家としての経験をほとんど活かせることはありませんでした。今回(のプレイレポ)は長年付き合い続けた稲作です。基本操作方法などは前作で学んだのでもうバッチリ、と意気揚々と即稲作を始め……ることはしません。
前回のように基本操作方法がわからず農機博覧会を繰り返しチュートリアルに逃げる……などという醜態を晒す前に、念の為に今回もチュートリアルから始めましたよ……。農家のプライドはあったりなかったりするかもな筆者ですが、ゲーマーのプライドは前作に打ち砕かれたので。
今作のチュートリアルでは若干ストーリー要素が追加されており、祖父から土地や機械を譲渡された孫の視点でゲームの基本を学べるようになっていました。まずは、前作と同じ流れで穀物の収穫や機械の使用方法を再確認。操作方法は大きく変わっておらず、ほぼ前作『22』と同じように操作が可能でした。このあたりは長年つづくシリーズならではなのかもしれません。
洋ゲーお馴染みの説明がなく放りっぱなしのストロングスタイルも改善されており、それぞれの分野の専門家がマップに配置されるようになり、各種農作業の方法や販売方法などをレクチャーしてくれるようになりました(とはいえ放り出されたような状態から始まるのは一緒なのですが……)
操作関連は大丈夫なようなので、さっそくお目当ての稲作をチュートリアルなしで、現実の知識だけを武器にどれだけできるのか実際に試してみることにしましょう。
パッと見で必要な機械は2台。今作では、井関農機株式会社とクボタ株式会社が実際に協力しており、現実でも販売されている農機具/トラクターを使用することができます。家のような小規模な農家では使用することは多分一生ないのですが、実装されている2台は稲刈りに使用するイセキのコンバインHJ6130(画面右)と、田植えに使用するイセキのPRJ8(画面左)……合わせて販社から新車で買えば2,000万円近い超高級車です。
一緒に見えるのは苗の「パレット」で、田植え機に設置し植え付けることが可能です。パレットはシート状になるよう根が育てられており(根張り)、これを機械の方で1つ1つ分離させて植え付けていきます。本来はこのパレットも、田植えまで毎日水やりをしたり、追加で肥料などを撒いたりとお世話がいるのですが、本作品では枯れないので長期保存も可能です。
しかし農機具の運転は問題ないものの、ここでつまづく筆者。デフォルトの通常マップである「RIVERBEND SPRINGS」では田んぼを設営する場合、畑から土地自体を作り替え、それに見合ったものへと変更する必要があったようです。新しく追加されたアジアをテーマにしたマップ「HUTAN PUNTAI」を見て、その違いに気づくことに。
農地を田んぼにした場合、ポンプも併設されます。田植えには欠かせない水も一緒に付いてくるため初心者農家でもいきなり稲作に挑戦することが可能です。一番最初にでた素直な感想は「水の順番で揉めなくて良いですね」でした……。現実の田んぼの場合、水周りの管理は、長年のご近所付き合い云々も含めてなかなか気を払うのです……!
とりあえず現実の事情は置いておいて、田んぼが完成し植え付けの操作ができるようになれば、後は現実と同じように5月まで寝て過ごし水を張って植え付け準備(代掻き)。改めて前日に水を流して、朝の6時位から田植えの開始です。ところで、今回作った田んぼは0.73ヘクタール、ゲームではサッと作れた田んぼですが、すでに現実の筆者の家の田んぼを全部合わせたよりも大きいです。
今作の田んぼは、実際の日本の一般的な田んぼと比べるとかなりフラットな作りなので、どうやって水を貯めているのかは不明ですが、機械が入れやすいので助かりますね。
さて、本作品での大きな変更点として、ラインに沿って自動で運転/作業ができる機能が追加されています。『22』ではこの機能がなく、手動で頑張って真っ直ぐ植え付けなどを行わなければならず、非常に面倒だったのですが、ライン幅を設定することで初心者でも植え付けが簡単になりました。
実際にPRJ8を使用したことはないですが、現実の田植えと比較すると「早い」の一言。本作の自動運転機能などを加味しても、この規模で昼前に終わっていることを考えると流石のハイエンドモデルというところでしょうか。苗のパレットを掃除して農協に返さなくて良いのも楽で良いですね……。
稲刈りはやはり時間がかかる
9月までまた寝て過ごし、稲刈りに移ります。田植えと違い、収穫ではコンバインに溜め込んだ玄米は都度排出する必要があり、排出して搬送、また収穫に戻る……とやることが多くかなり忙しくなります。
現実の収穫では田んぼのスミを鎌で手刈りして、コンバインの入口を作ってから刈り込みを始めるのですが、今作ではそのまま田んぼに乗り入れて刈り込みを始められるあたりも楽なところ。タンクに玄米が貯まれば排出し、倉庫に貯蔵するか売りに行くかはプレイヤー次第です。
コンバインでのこの作業風景を見て、今年の稲刈りをフラッシュバックするほどに思い出したのは秘密。10年ぐらい前の現実では、約40kg分ごとに袋詰めした玄米を手作業で軽トラに運んで、ある程度荷台に貯まったら農協に運んで……といった感じで進めていましたが、ゲームと同じようにパイプで一気に排出しての作業に変わったことで稲刈りも腰も大分楽になりました。
そんなこんなで、ゲーム内で一連の作業を1人でやった場合、朝の6時から始めて終わったのは午後の15時近く。実時間では約1時間かかりました。現実でも稲刈りは、早くなったとはいえ2人がかりで、今回ゲーム内でかかった時間ほどを要します。この辺もやたらと現実的でした……。
更には店から苗を買うのではなく、育苗も専用のビニールハウスでプレイヤーが行うことが可能です。ただしここは水さえ用意すれば後は自動で苗が育つという、現実から考えればあまりにも楽な仕様になっています。
全体的に今作の稲作を評価すると、育てて売ることを考えれば品種の要素がないのは残念ですが、現代の稲作の疑似体験という点においては、米農家から見てもかなりリアリスティックでした。現実ではもう少し泥臭い作業などもありますが、あくまでゲームであると考えればそこまでリアリスティックにやる必要はないと思うので良いでしょう。(個人的には現実のように苗をあぜに配置してもっと簡単に補充できると良かったのですが)
思う存分農作業を楽しもう
もちろん今作は稲作専門のシミュレータというわけではなく、前作と同じく他の作物や一連の農作業が体験できるのも変わらずです。営農をやってみようと思うなら休耕期はアルバイトに手を出してみるのも良いでしょう。
更に前作から続き、マルチプレイにも対応しており、最大6人でプレイ可能です。筆者はオンラインではハウス栽培のキノコ農家をやっています。集まって大規模な農場をやってもいいですが、筆者の参加しているサーバーは全員バラバラに作物を育てています。林業に手を出して破産したフレンドもいるとかいないとか。
本作でついに米農家として『Farming Simulator』シリーズにおいてその経験を活かすことができたのは、筆者的にはかなり満足です。
前回の記事でも『Farming Simulator』のタイトルに嘘偽りはないと断言しましたが、今作においても実際に稲作を(その部分の)チュートリアルなしで米農家がプレイしてみて、ゲーム的なルールの要素が強い土地の造成を除き、農機具をアシストなしでそのまま扱え、収穫にまで至れたという点では本作品の持つタイトルに改めて偽りはないでしょう。今回、専門分野である稲作においてもその結論に至ったことで更に言葉の厚みが増した気はします。
細かい点を挙げれば流石に違いこそありますが、そこはゲームです。営農……となると流石に規模が大きくなってしまいますが、筆者は本作品をきっかけに農作業に従事する人が誕生することに、ささやかな期待を寄せています。
「農業」、地味で泥臭い世界ではありますが是非ともゲームで体験してみてください。
タイトル:Farming Simulator 25
対応機種:PC(Steam/Epic Games ストア)/PS5/Xbox X|S
記事におけるプレイ機種:PC(Steam)
発売日:2024年11月12日(Steam版)
記事執筆時の著者プレイ時間:12時間
価格:6578円
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