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「Arcane」シーズン2レビュー:美しく残酷な姉妹の物語が描く、新たな進化と葛藤【※ネタバレあり】

Game*Spark / 2024年11月17日 20時0分

2021年、Riot GamesとNetflixが手を組んで世に送り出した「アーケイン(Arcane)」は、世界で大きな話題を呼び、その年のThe Game Awardsでは最も優れたゲーム映像化作品として受賞をしました。


まるでコンセプトアートのようなビジュアル、ピルトーヴァーとゾウンの対立と激しいアクション、そして引き裂かれた姉妹ヴァイとジンクスの物語。 シーズン2ではこれらの要素がさらにパワーアップをはたして帰ってきました。


本稿ではシーズン2 Act1と2を先行試聴したうえでレビューをしていきます。


※若干のネタバレが含まれていますのでご注意ください。


2Dと3Dの融合がもたらす圧倒的な映像美


フランスのアニメ制作会社Forticheによる2Dと3Dアニメーションの融合は、シーズン2で新たな高みに達しています。緻密な環境、表情豊かなキャラクター、息をのむようなアクションシーンは、どのフレームで切り取っても芸術作品のようです。


特にシーンごとのトーンに合わせた画風の変化――水彩画風の感情描写や太い線を活用した反乱シーン――は、ただ美しいだけの単なる視覚美以上の物語の深みとアニメとしての楽しさを演出しています。


筆者はRiot Games本社に取材に赴いた際に、制作に携わったアニメーターの方々ともお話をさせていただき、シーズン2の制作手法についても伺う機会がありました。


あの美しいビジュアルを実現するために、各キャラクターはまず3Dモデルを制作し、それを動かしてアニメーションを構築していく。 その点は素人の筆者にも想像はつきますが、その後の制作手法が非常に興味深い内容でした。


各アニメーターは、まず各コンテ(シーンの設計図)のアニメーションを自らが演技したものを何テイクも実演し、どのようなカットになるかを考えます。 そして、もっとも優れたカットを各チームの上役に提出し、GOサインをもらうことでアニメーション作業を開始できるのです。


この手法により、時間をかけて制作したアニメーションをやり直す頻度が少なくなり時間を節約し、最適なカメラアングルを選定し、アニメーター自身が演技をすることで自然な動きと説得力のある演技が実現されて、ベストなアニメーションを制作できるそうです。 この手法自体はシーズン1の頃から採用しており、シーズン2でも作品の質の高さを支える重要な要素となっています。


そうしたアニメーションとビジュアルの融合は、各キャラクターの深い感情状態を効果的に表現し、アクションシーンではスピード、パワー、感情の激しさを強調し、シーズン1からさらに進化した「アーケイン」のアニメーションを実感できます。


本作の真髄は、登場人物たちの「目」による感情表現にあります。ヴァイとジンクスの姉妹の絆と確執、ヴァイとケイトリンの間に芽生える不安と期待が交錯する恋愛模様、セリフなしで伝わる感情の機微は、アニメーション技術の集大成と言えます。


例えばヴァイとケイトリンのキスシーンでは、ヴァイはケイトリンの瞳を見つめながら不安が混ざった目をしていますが、一方のケイトリンはヴァイと視線を交わすよりも唇に目が奪われているなど、言葉ではなく目で感情の機微を描くのが今シーズンは特に増えているように思います。


言葉だけでは表せない人間くささっていいよね。




加速する政治劇と変貌


シーズン2ではAct 1から各キャラクターに大きな変化が訪れます。ヴァイの葛藤、ジンクスの新たな旅路、ジェイスとビクターの決裂、そしてコメディ要素を帯びたハイマーディンガー。


その中でも特筆すべきは暗躍し続けるアンベッサ。 ノクサスの将軍として生き続けてきたアンベッサは、シーズン1では登場が終盤だったので目立った活躍シーンはなかったのに、圧倒的な存在感を醸し出していました。そんな彼女がシーズン2では1話から目的のために動きます。


先月、『League of Legends』に輸入されたアンベッサは、ゲーム内では高い機動力を活かして1vs1に優れたチャンピオンとして設定されています。 LoL開発チームと行ったインタビューで、アンベッサは初心者向きではなく彼女のポテンシャルを発揮するには戦場の二手三手先を読めないといけませんと言われましたが、「アーケイン」の彼女も実際に二手三手先を考えた行動をし続けて巧みな政治的駆け引きを繰り広げます。


そして最も豹変していくキャラクターがケイトリンです。シーズン1では意固地ながらも柔軟な面を見せていた彼女ですが、降りかかる責任と憎しみにより強硬的な人物へと変貌してしまいます。


シーズン2の第一話のタイトルは「上に立つ者の責任」ですが、英語版では”Heavy Is the Crown”というリンキン・パークが提供した楽曲と同じです。 この曲はシーズン2の制作中にリンキン・パークのマイク・シノダ氏が、2017年にこの世を去ったチェスター・ベニントン氏から託されたモノを引き継ぐという重圧と、ケイトリンが家を引き継ぐことによる責任に共通点を見出したことから別バージョンが作られ、「アーケイン」シーズン2に提供されたことから第一話のタイトルも変更されたという経緯があります。


ここで注目したいのがイントロでのケイトリンのカットがシェイクスピア四大悲劇の「マクベス」のポスターをオマージュしている点。 マクベスも権力という「王冠」を求めた結果の悲劇を描いていますが、”Heavy Is the Crown”も直訳すると「王冠の重み」です。 マクベスがケイトリンなら、マクベスを誘導するレディ・マクベスはアンベッサと考えると驚くほどキレイにハマります。


そのケイトリンがもたらした大きな皮肉が、ジンクスを憎むケイトリンが第2のジンクスを生み出しかねない状況で躊躇をしなかった点。結果的にケイトリンは銃撃に失敗するのですが、シーズン1では一般人への被害を考慮していた彼女が一切のためらいがないほど変貌してしまっていると伝わります。


ゲーム的に面白いのが、『LoL』のケイトリンのRスキルに”ブルズアイ”が再現されていること。このスキルは1秒間照準を定めて敵チャンピオンに必中するのですが、射線上に別の敵チャンピオンがいたらそちらに命中します。このときは間にヴァイが入ったことでヴァイが被弾したのですが、もしヴァイが介入しなかったらケイトリンとジンクスの間にいたイシャはどうなっていたのでしょうか……


また、シーズン1ではヴァイのために銃を手放した彼女がシーズン2では命の危機でもヴァイの手ではなく銃を抱え続けていたなど、わずか数話の間に著しい闇堕ちを見せています。


テンポの速さへの懸念と期待


Act 1で大きな変化が訪れた人物たちに、Act 2ではさらなる変化が待ち受けており、話の流れがますます加速していきます。


シーズン1ではAct 1でじっくりとバックグラウンドの説明と各キャラクターの描写に時間をかけていましたが、シーズン2では視聴者が全ての前知識がある前提なのでAct 1から物語が急速に展開します。特にピルトーヴァーとゾウンの対立が急速に進む一方で、物語のフォーカスが様々な要素に次々と切り替わっていく展開は、ちょっと駆け足気味ではないかと懸念してしまいました。それでもストーリーそのものには引き込まれ続けて一気見してしまうだけの魅力があります。


「アーケイン」はシーズン2で終了してしまうので、シリーズ完結に向けた意図的な展開とも考えられますが、Act 3での丁寧な収束が期待されます。


まとめ:アーケインの進化と終幕に向けて


「アーケイン」シーズン2は、見事なアニメーション、複雑なキャラクター、ペース配分に疑問はあるものの感情を強く揺さぶられるインパクトのあるストーリーテリングという特徴をブレンドして物語の締めくくりに向かっていきます。


「アーケイン」シーズン2はNetflixで配信中。最終章のAct 3は2024年11月23日に配信予定です。見逃さないようチェックを!

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