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【特集】シナリオライターが遊ぶ『Lobotomy Corporation』―恐怖に立ち向かい、未来を創れ 人類の可能性を切り拓くモンスター管理シミュレーション

Game*Spark / 2024年11月24日 12時0分

ビデオゲームに秀逸なシナリオが盛り込まれ、それを読み解くことも遊びの一部として受け止められるようになった現代……本連載記事では、古今東西のビデオゲームを紐解き、優れたゲームシナリオとは何かを考えていきます。第15回は『Lobotomy Corporation』を取り上げます。


韓国の開発会社Project Moonが送り出した『Lobotomy Corporation』は、モンスターを管理するシミュレーションゲームです。同じ開発元が手掛ける『Library of Ruina』や『Limbus Company』とシナリオが繋がっているので、できれば一作目である『Lobotomy Corporation』から遊ぶのが良いでしょう。


Lobotomy Corporationは、通称L社と呼ばれる電力会社のこと。「アブノーマリティ」という怪物たちを収容し、彼らからエンケファリンというクリーンエネルギーを抽出して、都市に電力を供給しています。


このアブノーマリティたちは、いわゆるSCP財団に影響を受けています。わかりやすくモンスターの見た目をしていたり、ちょっと不思議な日用品であったり、人智を超えた神話的な存在だったりと、多種多様な形を取っていて、彼らを眺めているだけでも面白いです。その危険性はまったく笑えませんが……。


もうおわかりの通り、L社はクリーンエネルギーを用いたホワイト企業……というわけではなく、職員を使い捨てまくって電力を生み出しているとんだブラック企業です。


軽い気持ちでアブノーマリティを扱う作業に入ったが最後、血の風呂に引きずり込まれたり、体が砕けるまで抱き締められたり、氷漬けにされたり、とんでもないものを見てパニックに陥ったりと、ろくな目に遭いません。アブノーマリティが脱走なんてした日には上から下までてんやわんやの大騒ぎで、そこら中に人間だった■■が散らばります。


そんな使い捨て職員を何十人も使役しながら、一日の電力ノルマを達成するのが、プレイヤーである管理人のXに任せられた仕事です。優秀なAI少女アンジェラにサポートしてもらいながら、今日も一日はりきって働いていきましょう! ……え? アブノーマリティの愛着作業を担当した同僚が首を斬られた? じゃあ次からはしなきゃいいだろ!


さて、聖徳太子ばりのマルチタスクをこなしながら何十日も作業を続けていくと、この会社が抱えている大きな秘密に気づいていきます。


アンジェラの下にはセフィラというAIがおり、彼女たちはそれぞれにL社の各部門のリーダーを務めています。地獄のような職場にいながら、前向きにメモを取ったりする者、すべてを諦めて皮肉ばかり言っている者、すべてのアブノーマリティに対して強い敵意を抱いている者など、なかなか個性豊かな面々が揃っています。


そんな彼女たちと向き合うのも、管理人であるあなたの使命です。彼女たちの物語を知り、内に秘めたエゴやドラマと衝突することで光の種という大いなるシナリオが進行していきます。


アブノーマリティとは何なのか? どこから来るのか? なぜ彼らを相手にしなければいけないのか? そもそも何のためにこれだけ大量の電力を集めているのか……? それらの答えは、セフィラたちから課されるとんでもなく厳しい条件を攻略することで、少しずつ見えてきます(管理シムでボス戦があるなんてなかなか珍しいのではないでしょうか)。


彼らセフィラの名前やゲーム全体のマップは「セフィロトの樹」を想起させる形をしているうえ、アブノーマリティたちのランクもヘブライ語のアルファベットから来ているなど、全体的に外連味たっぷりなフレーバーをしています。


しかしながら、それらのフレーバーだけが悪目立ちすることはなく、使命を帯びた人間たちによる泥臭いお話が少しずつ展開されていきます。正直、最初は「新世紀エヴァンゲリオン」のパロディがやりたいのかな……? と思ってしまいましたが、本作はそんな程度で収まらない独自の世界を見せてくれます。


(倫理を置き去りにして)科学だけが発展した未来世界が舞台のペシミスティックなSFでありつつも、狭いコミュニティの絶望と再起を描くシンプルなヒューマンドラマが核に据えられていて、それらを聖書モチーフのかっこいいフレーズで綺麗にまとめあげた一作でした。


本作の「FACE THE FEAR, BUILD THE FUTURE」という副題は、とても簡潔にゲーム全体を表しています。暗闇を切り拓き、恐怖に立ち向かい、人間の可能性という光で世界を照らすというのは、たしかに電力会社のやるべきことなのだと……そんな納得感に包まれた一作でした。



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