『昭和米国物語』の世界は“80年代の中国”で育ったからこそ生まれた!反響への感想や体験版の予定までプロデューサーに聞いてみた
Game*Spark / 2024年11月26日 12時0分
NEKCOM GAMESが手掛けるPC/PS5向けアクションRPG『昭和米国物語(Showa American Story)』。本作は昭和66年、強大な経済力を背景に日本に植民地化されたアメリカを舞台に繰り広げられるロードムービーライクな復讐劇です。
テーマソングに大事MANブラザーズバンドの楽曲「それが大事」が起用されていたり、異常なまでに造詣の深い「日本への理解」で驚きを呼んだ本作。先日発表された新PVも大きな話題となりました。驚くべきは、本作を手掛けているのは日本やアメリカのデベロッパーではなく、中国のゲーム開発会社NEKCOM GAMES(以下、NEKCOM)だということ!
今回はそんなNEKCOMのCEOであり、『昭和米国物語』のディレクター/プロデューサーでもあるXiangyu Luo氏(以下、XY.Luo氏)にお話を伺う機会を得ました。本稿ではXY.Luo氏が“80年代の中国で育んだ感性”をもとに作り上げられた『昭和米国物語』について、たっぷりとインタビューを行ってきました。
◆特異な“中国の80年代”で育まれ、生まれた『昭和米国物語』
――まずは自己紹介をお願いします。
XY.Luo:XY.Luoと申します。NEKCOMの設立者であり、クリエイティブディレクターおよびプロデューサーを務めています。『昭和米国物語』ではプロジェクト統括に加え、世界観の構築やセリフを含めた脚本部分、キャラクターデザインにコンテンツ設計などを担当しています。
――『昭和米国物語』は日本文化やアメリカ文化のみならず、様々な年代の文化が混在し魅力を放つ作品です。この着想のきっかけになった“原点”についてお聞かせください。
XY.Luo:私は1983年生まれの中国人で、日本やアメリカでの生活の経験というものは一切ありません。しかし当時の中国に入ってきた、日本とアメリカの文化に深く影響されながら育ってきました。
日本のサブカル文化が7割、アメリカ文化が3割ほどでしょうか。これらの文化が融合していたのが「中国の80年代」で、かなり特殊な時代・環境で育ったといえるでしょう。このような時代は、中国の特色のひとつかもしれません。私たち世代の“子供の頃の思い出”は、日本の同世代の人たちと多くの共通点を持ちながら、多くの違いも存在しているのです。
この、どこか懐かしくも新しい感覚をゲームで味わえるのはきっと面白いはずです。プレイヤーはこのおかしな世界観の中で、不思議な80年代を体験していくことになります。
――11月1日に公開されたPVも話題になっています。これらの“日本での反響”に何を感じられましたか。
XY.Luo:多くの日本ユーザーのコメントを拝見しましたが、年長の方がPV2の小ネタから多くの懐かしさを抱く一方で、若いプレイヤーはジョークのような設定に好奇心を抱く人もいることがわかりました。どちらにせよ、大きく注目してもらっていますね。
この反応には嬉しい気持ちと同時に、少し寂しい気持ちもあります。昔は多くの人がわかるネタだったとしても、今では日本人でも古いネタが通じない人が若い層が当然ながらいるわけで、時代の流れを感じてしまいますね。
――中国ではどのような受け止められ方をしているのでしょうか?
XY.Luo:中国のプレイヤーは、私と同じく「日本とアメリカ文化の融合」という懐かしさに共感してくれるでしょう。「抽象的な日本」と分かったうえで、『昭和米国物語』を楽しみにしてくれています。また、中国ではAAAタイトルに疲れている趣もあるので、インディーライクな本作は注目されています。
中国のプレイヤーにとってもゲーム内に多く馴染み深いものが登場するため、大きく共感してくれると思います。彼らは『昭和米国物語』が非常に違和感ある世界だと理解しながらも、ゲームとしての楽しさを見出してくれるでしょう。多くの中国ユーザーは、「ゲームはまず第一に、楽しくなければいけない」と考えています。彼らは、このゲームがすでに多くある“プレイしていて疲れるAAAゲーム”とは異なると感じられるはずです。
その一方、中国のネット上では「やはり中国の会社でないと、このような特徴的なゲームは作れない」とコメントする人もいます。我々は中国人であるため、日本文化やアメリカ文化にステレオタイプを抱いてしまうのですが、それが逆に『昭和米国物語』を生み出せたと感じているのですね。
――続いては、『昭和米国物語』がどのようなゲームシステムになるのかをお聞かせください。
XY.Luo:『昭和米国物語』はRPGであり、割合で言うならばストーリー40%、戦闘30%、探索要素で30%というところでしょうか。RPGである以上、ストーリー体験に重きを置く内容になっています。メインストーリーを楽しみつつ、サブクエストやミニクエストで世界観を体験していただければ幸いです。
――『昭和米国物語』はSteamページで「奇々怪々な武器」が数多く登場すると描かれています。実際にPVではドリルでゾンビを貫く姿も見受けられました。作中では他にも、どのような面白い武器が使えるのでしょうか?
XY.Luo:日本刀やドリル、ゴルフクラブだったり、竹馬やサンタクロースのトナカイ、ハンディマッサージャー(電動マッサージ器)も出てきますが……今はまだこれ以上話すことはできません。ぜひ、ゲーム内でトンデモ武器を発見してください!
――ということは、PVで出た「例のプール」や、マジックミラー号らしき車と共にハンディマッサージャーで戦う、などということも可能なのですね。
XY.Luo:そうですね(笑)。
――『昭和米国物語』はとんでもない展開が目白押しとなりそうですが、ストーリーを作る上で重視した所などあればお教えください。
XY.Luo:ストーリーを作るうえで自分が重視していることは「リアリティ」です。世界観がかなりぶっ飛んでいるため、その分キャラクターの行動原理はぶっ飛んでいてはいけないと思います。
『昭和米国物語』のようなクレイジーな世界の中でも、様々なキャラクターが真剣に、そして一生懸命にそれぞれの目標に向かって努力している姿は美しいわけです。この素晴らしさを、私の書いた物語を通じてプレイヤーに共感してもらいたいですね。『昭和米国物語』はただただクレイジーなだけのゲームではないのです。
――『昭和米国物語』は日本に植民地化されたアメリカをロードムービーのように旅していく物語ですが、「実在していながら架空のアメリカ」をどのように作られていったかお教えください。また、この世界の日本列島はゲーム中に出てくるのでしょうか?
XY.Luo:各地の地図や地形などはあまり考証せず、自身のイメージや記憶を参考にして作っていきました。たとえばアメリカに多くの日本人が住んでいるならどうなるかとの変化をまず考えて、そこに自身のイメージする「日本文化とアメリカ文化の融合」をあわせて作り上げていきましたね。
そして、残念ながら日本列島はゲームには出てきません。DLCなどでは出したいと思っていますが、先の話です。
――今までに影響をうけたゲームやクリエイターがありましたらお教えください。
XY.Luo:好きなクリエイターは須田剛一さんです。『ノーモア☆ヒーローズ』などをはじめとして、彼が手掛けた作品はすべて好きです。『龍が如く』シリーズに受けた影響も大きいですね。一番好きなゲームシリーズは鈴木裕さんの『シェンムー』シリーズです。
映画では、クエンティン・タランティーノ監督作品や北野武監督作品。三池崇史監督の作品も好きです。漫画では「殺し屋1」や「孔雀王」でしょうか。週刊少年ジャンプに連載される作品も大好きです。
喜劇・コメディが好きで、そこにバイオレンスやロマンティックな要素を加えたい。『昭和米国物語』はこの「喜劇」「バイオレンス」「ロマンス」を組み合わせて作りました。
――体験版などを含め、いつごろ日本ユーザーが遊べるようになるのでしょうか。あるいは、出展したいと考えられている日本でのゲームイベントがありましたらお教えください。
XY.Luo:『昭和米国物語』の体験版や出展に関しては、“今はまだ”具体的なことは言えません。今後の発表を楽しみにしていてください!
――中国市場でのコンソールゲームというのは、『黒神話:悟空』などを見られるようになったといえど、依然として珍しく感じます。なぜコンソールで『昭和米国物語』を開発しようと考えられたのでしょう。
XY.Luo:まず前提として、中国のコンソールゲームのユーザー数は、ここ数年で急増しており、市場規模も拡大しています。私自身も中国で主流となっているオンラインゲームよりコンソールの方が「ゲームとしての表現力と没入感が高い」と思っています。もちろん、中国のスマートフォン/オンラインゲーム市場は非常に競争が激しく、大手各社が参入しているという事情もありますが、コンソールタイトルの方が“私の作りたいゲームの方向性”とマッチしているのです。
――中国において、これからのコンソール市場及び開発の現場というのはどう変化していくとお考えでしょうか。
XY.Luo:先ほども言ったように中国のコンソール市場はユーザーの増加とともに、大きな拡大を遂げています。8月に発売された『黒神話:悟空』はSteamだけで2,000万本を超え、そのうちの8割が中国のゲーマーです。
中国ユーザーたちのゲームへの認識は変わり、高品質かつより良いゲーム体験を求め、開発者に望むクオリティも高まっていっています。今、中国でのゲーム開発はチャンスとリスクが共存している状況でしょう。
――最後に、日本の読者へのコメントをお願いします。
XY.Luo:新しいPVを公開して、多くのコメントを頂けてとても驚きました。PVの細かい場所に隠した要素を発見してくれた上に、セリフに注目してくださった方が多かったのも有難かったです。
セリフを書いた時の私の気持ちと共鳴して笑う人もいれば、泣く人もいる。中には笑い泣きもあるでしょう。まるでプレイヤーとコミュニケーションを取っているような感覚に陥ります。このコミュニケーションは、直接的ではなく作品を通して行われる交流ですね。リリースの日が待ち遠しいです。私が愛している『昭和米国物語』の世界を、皆さんにも愛していただけたら幸いです。
――今回は、ありがとうございました。
最後に日本で行きたい場所を聞くと、「北海道だが、熊が怖い」とジョークまで飛ばしたXY.Luo氏。『昭和米国物語』の体験版や、イベント出展などの可能性も垣間見えたインタビューとなりました。
『昭和米国物語』は、PC/PS5向けに2025年リリース予定です。どこか違うけれどどこか懐かしい日本を感じられる本作の続報を待ちましょう。
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