【TGA2024現地取材】10 Chambers最新作『Den of Wolves』開発者に直撃。近未来のハイテク都市で繰り広げるスタイリッシュ強盗ゲームは『PAYDAY』生みの親のジャンル回帰作
Game*Spark / 2024年12月13日 13時5分
2015年にスウェーデンで産声をあげたゲームスタジオ10 Chambers。このデベロッパーが名を世に轟かせたきっかけとなったタイトルは、ハードコアCo-opサバイバルホラー『GTFO』です。閉鎖された地下施設からの脱出劇、極限状態での資源管理、そして仲間との連携が織りなす圧倒的な緊張感。その独自の哲学と妥協のないゲーム性で、世界中のコアゲーマーを魅了しました。
そして今、10 Chambersが新たな舞台へと足を踏み入れます。それが2097年の近未来都市“ミッドウェイシティ”を舞台に繰り広げられる、Co-op強盗FPS『Den of Wolves』です。
『Den of Wolves』は『GTFO』で培われた協力プレイのノウハウ、そして『PAYDAY』シリーズの系譜を受け継ぐ「強盗FPS」のDNAが融合した新しいゲーム体験を提供します。最大4人のプレイヤーで構成されるチームは、緻密な計画と瞬時の判断を求められながら、お互いに連携しながらハイリスク・ハイリターンの強盗ミッションに挑みます。
The Game Awards 2024で新トレイラーが公開されましたが、それにあわせてロサンゼルスで10 Chambers共同設立者のSimon Viklund氏とのインタビューがメディア向けに開催されました。本記事では『Den of Wolves』のゲームプレイ紹介と共に、インタビューの様子をお届けします。
企業が支配する欲望の坩堝:未来都市ミッドウェイシティ
『Den of Wolves』の舞台となるのは、2097年のミッドウェイシティ。太平洋上に建設されたこの人工島は、企業が法を凌駕し欲望が渦巻く近未来都市です。各地区は異なる企業によって統治され、独自の文化や建築様式、そして厳重なセキュリティシステムを有しています。
2030年に発生したAIを用いた大規模サイバーテロで経済システムが崩壊し、人類は戦争に突入してしまいました。 そして2035年、企業が太平洋にミッドウェイシティを建設。そして人間が脳をネットワークに直接繋ぐ「電脳化」が実現され、安全なネットワークで形作られるユートピアを建造しました。 しかし、2097年にはサイバーパンクものにお約束の「企業による支配」と「管理社会」という、腐敗と崩壊のディストピア……“狼の巣窟”に成り果てています。
プレイヤーは、そんなミッドウェイシティの腐った社会で「ライバル企業を蹴落とすため」に会社から雇われる下手人として、ミッションに挑んでいきます。Viklund氏いわく、ミッドウェイシティの各地区はそれぞれ異なる企業によって支配されていて、様々な文化や建築様式と厳重なセキュリティシステムを有しているそう。プレイヤーはこれらの地区を探索してミッションを遂行しながら、その奥深い世界観に没頭できるとのことです。
プレイヤーは各地区の特性を理解し、戦略的に行動する必要があります。警備の厳重な地区ではステルス行動が有効ですが、犯罪組織が支配する地区では正面突破が必要になるかもしれません。
二段階ミッション構成が生み出す緊張感
本作の最大の特徴は、ミッションが“Prep Mission(準備ミッション)”と“Mission (本番ミッション)”の二段階で構成されている点です。
準備ミッションでは、本番に備えて情報や装備を集めます。ターゲットとなる施設の設計図を入手したり、警備システムの弱点を調査したり、あるいは特殊なガジェットを調達したりといった多岐にわたる行動が求められます。準備ミッションでもステルス、ハッキング、戦闘など様々なアプローチが可能で、プレイヤーの選択とチームワークが試されます。
そして、準備ミッションで得られた情報や装備を元に本番ミッションへと突入します。ここで重要となるのが「計画」フェーズです。ミッション開始前に専用のロビーで作戦会議を開き、入手した情報を共有して最適な戦略を練ります。マップを分析し侵入経路、ターゲットの確保方法、脱出ルートなどあらゆる要素を考慮した綿密な計画を立案するのです。
一度方針を決めると、ミッションマップがその方針にあわせた仕様に置き換わります。方針はミッション中に変更できないため、チーム内での綿密なコミュニケーションと各プレイヤーの役割分担が非常に重要になります。
プレイヤーは刻一刻と変化する状況下で計画に忠実に従い、仲間との連携を維持しながら目標達成を目指します。敵の巡回ルートの変更、予期せぬ警報装置の発動、あるいはチームメイトの負傷など、様々なハプニングが発生する可能性があります。プレイヤーは限られた情報と装備を駆使し、冷静な判断と迅速な対応で危機を乗り越えなければなりません。この緊張感と没入感こそが『Den of Wolves』の醍醐味と言えるでしょう。
現代らしさが残った遠すぎない未来のハイテク装備
公開されたトレイラーではSMG、アサルトライフル、ショットガンといった現代の銃火器をベースにした武器が登場していました。Viklund氏から詳細な情報は明かされなかったものの「近未来的な世界観を反映したユニークな武器やガジェットが多数登場する」と示唆しています。
例えばトレイラーに登場したドリル型のガジェットは、分厚い金庫の扉を破砕するために使用されるようです。他にも敵の動きを妨害するEMPグレネードや、敵からのダメージを軽減するスーツなどが実装予定で、今後もハイテクガジェットが増えていくようです。
一方で本作はリアリティとゲーム性のバランスを重視しているとのことで、レーザービームなどの過度にSF的な武器は実装されない予定としています。
『GTFO』より大衆向けだが、万人向けではない難易度を求める
Viklund氏は『GTFO』がハードコアゲーマー向けのアプローチだったことに対し『Den of Wolves』はより幅広いプレイヤー層にアピールする作品になると語っています。しかし、それはゲームが簡単になるという意味ではありません。「万人向けのゲームは、誰にとってもつまらないゲームです」とViklund氏は強調します。
『Den of Wolves』では固定の難易度設定を用意するのではなく、プレイヤーが選択した戦略や装備、そしてプレイスタイルに応じて、難易度が動的に変化するシステムを導入しています。ステルス行動を重視すれば敵に見つかるリスクは減る分、ミッション達成に時間がかかります。逆に、正面突破を選べば激しい銃撃戦に身を投じることになります。プレイヤーは、自分たちのスキルレベルやプレイスタイルに合わせて、最適なアプローチを選択することができるのです。
さらに、準備ミッションで入手したアイテムや情報も、本番ミッションの難易度調整に影響を与えます。強力な武器やガジェットを準備すれば、ミッションは比較的容易になるでしょう。しかし、準備不足のままミッションに挑めば当然難易度も高くなります。
このシステムにより、熟練プレイヤーも初心者プレイヤーも同じミッションでそれぞれのレベルに合わせた挑戦を楽しむことができます。
元ネタは「攻殻機動隊」! 開発者インタビューで気になるポイントを訊いた
『Den of Wolves』はまだまだ開発段階で、今回の取材では実際のゲームプレイは体験できませんでした。2025年3月には日本を含む3カ国で初めてメディア向けにゲームプレイハンズオンのツアーが開催されるとのことなので、新情報が着弾する日までは、Simon Viklund氏とのインタビューで期待を膨らませて待ちましょう。
――『GTFO』の開発経験は、『Den of Wolves』にどのように活かされていますか?
Viklund: 『GTFO』で得られた最大の教訓は、プレイヤーの期待を常に上回る驚きと挑戦を提供することの重要性、そして協力プレイの深みを追求することです。『Den of Wolves』では予測不能なイベントやダイナミックなゲームプレイを随所に散りばめ、プレイヤーを飽きさせません。また、準備ミッションと本番ミッションの二段階構成により、更に戦略的で奥深い協力プレイ体験を提供できると考えています。
――『Den of Wolves』のサウンドデザインの特徴はどのようなものですか?
Viklund: 『GTFO』のダークで緊張感あふれるサウンドとは対照的に『Den of Wolves』では、スタイリッシュでスピード感のあるアクションを強調したより高揚感のある音楽を目指しています。近未来的な世界観を表現するため、シンセサイザーや電子音、そして世界各地の民族楽器の音色を取り入れ、独特のグルーヴと雰囲気を持つサウンドトラックを制作しました。
――『Den of Wolves』の「計画」フェーズは、どのようにゲームプレイに影響を与えますか?
Viklund: 「計画」フェーズは『Den of Wolves』のゲームプレイのコアとなる要素です。プレイヤーはミッション開始前に専用ロビーで作戦会議を開き、マップを分析、侵入経路、ターゲットの確保方法、脱出ルートなど、あらゆる要素を考慮した綿密な計画を立案します。この計画はミッション中に変更できないため、チームワークとコミュニケーションが不可欠になります。
そのため、全員がチームの方針に同意する必要があります。こうすることでチームは一丸となれますし、もし途中参加者がいてもどのような立ち回りが求められているか瞬時に判断ができます。ユーザーインターフェースも『GTFO』と違ってユーザーフレンドリーなものになっているので、判断の一助となります。
――キャラクターのカスタマイズ要素、そして成長システムについて教えてください。
Viklund: プレイヤーは武器、ガジェット、スキルなどを自由に組み合わせて自分だけのクラスを作成できます。装備が固定されている特定のクラスに縛られることなく、自分のプレイスタイルに合ったビルドを追求することが可能です。成長システムはレベル制ではなく、プレイを通じて新たな装備やガジェット、スキルなどをアンロックしていく方式です。これによりプレイヤーは常に新しい発見と挑戦を楽しむことができます。
――トレイラーの最後に赤いキャラクターが映っていましたが、あれはどのような存在なのでしょうか?
Viklund: あれは“DIVE”を仕掛けるターゲットですね。DIVEとは、相手の電脳にハッキングを仕掛け、その人物が持っている情報を盗み出す行為です。そしてあの赤い人物は重要な情報を持っているから生命維持装置に取り付けられて、脳が死んでしまわないように冬眠状態にさせられています。 ミッドウェイシティでは人がSSDやハードディスクのように扱われるのです。
――本作の世界設定は「攻殻機動隊」を思わせますが、インスピレーションを受けていますか?
Viklund: まさに「攻殻機動隊」が元ネタです! それと「ブレードランナー」ですね。 この2つは誰もが知っているサイバーパンク作品ですし、特にうちのCEOのUlf Anderssonが大ファンなんです(笑)。「攻殻機動隊」の雰囲気を再現したくて、建築物をチェックするための日本取材に行きました。
――クロスプラットフォームプレイはサポートされますか?家庭用ゲーム機版のリリース予定は?
Viklund: まずはPC版で早期アクセスを開始します。早期アクセスを経て、ゲームの完成度を高めた後に、家庭用ゲーム機版のリリースを検討しています。クロスプラットフォームプレイについては、早期アクセス版の状況を見ながら将来的に実装を検討していきます。
――かつて10 Chambersはたった9人で構成されたスタジオでしたね。あれから100人規模のスタジオへと成長しましたが、その変化は開発にどのような影響を与えましたか?
Viklund: 小規模スタジオだった頃は全員がゲーム開発のあらゆる側面に関わることができ、意思決定も迅速に行うことができました。しかし、チームが大きくなったことで、コミュニケーションや意思疎通の難しさを感じる場面が増えました。それでも、私たちは小規模スタジオが持つスピード感と柔軟性を維持しようと努力しています。もう一つの難点が、創設メンバーたちが根っからの開発者なので、本当なら指揮に専念すべきなのに開発がしたくてウズウズしてしまう点です(笑)。
私もナラティブディレクターを兼任していましたが、時間が無さすぎて辞任しました。おかげで音作りに時間が取れるようになってスッキリしてます(笑)。
――最後に、日本のプレイヤーに向けてメッセージをお願いします。
Viklund: 日本のプレイヤーの皆さん、こんにちは!『GTFO』をプレイしてくださった皆さん、そしてこれから『Den of Wolves』をプレイしようと考えている皆さん、本当にありがとうございます!私たちは、『GTFO』で得られた経験と皆さんからのフィードバックを活かし、『Den of Wolves』を最高のゲームにすべく開発に全力を注いでいます。アーリーアクセス、そして正式リリースを楽しみにお待ちください!
――本日はありがとうございました。
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