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オタク業界で相次ぐ「Visa」クレジットカードの使用規制……はたしてSteamは大丈夫?

Game*Spark / 2024年12月16日 12時55分

近年、「Visa」のクレジットカードがさまざまなオタクコンテンツで使えなくなっていることが話題となっています。


今年(2024年)4月には大手ダウンロードサイトの「DLsite」からのクレジット決済の削除、6月には大手アダルト同人サイト「FANZA同人」からVisaのクレジットカードによる決済ができなくなり、11月には漫画家で現・参議院議員の赤松健氏の立ち上げた絶版マンガ復刻サイト「マンガ図書館Z」がクレジット決済サービスからの取引停止を受けサイト全体が閉鎖。


12月にはアニメイトの運営する「ポケットドラマCD」から「オトナの女性向け」カテゴリの作品がクレジットカードによる決済停止、女性向け同人作品を取り扱う「pictSPACE」が2024年をもってのVisa/MasterCardのクレジット決済を停止、そしてオタク婚活を取り扱う「アエルネ」でのVisaカードの取り扱いが停止するなど、多くのオタク関連コンテンツ(男性向け・女性向け問わない)で「Visa」カードが使えなくなる状況が立て続けに発生しています。


こういったクレジットカード規制の流れですが、はたして多くのPCゲーマーが愛用するSteamでのサービスに影響はあるのでしょうか?様々な現状を踏まえつつ、検証していきます。


そもそもなぜクレジットカードの使用に制限が発生しているのか


そもそもの問題として、何故特定コンテンツへのクレジットカードの使用に制限が発生しているのかを掘り下げていくことにしましょう。2024年12月3日に参議院議員会館で開かれた「クレジットカード会社等による表現規制『金融検閲』問題を考える」集会の様子を伝える記事(ITmedia)によると、そもそも米国での実写ポルノへのクレジットカードの使用規制に端を発しているといいます。


同会議にオンライン登壇した米カリフォルニア大学アーバイン校のジャック・ラーナー氏によると、2022年に当時13歳の少女が大手アダルトサイトを運営する会社に「自分のビデオが無断でアップロードされた」と提訴し、「多数のビデオがアップロードをされていたのを知りながら何ら対応を行わなかった」として、各種クレジットカード会社をも被告に加えていたことがクレジットカードのアダルト向けコンテンツへの規制のきっかけで、当初Visaは被告から外れるよう活動していたようですが、裁判所がそのまま裁判を継続するよう決定したといいます。


この裁判は現在も係争中であり、裁判結果は出ていないのですが、この出来事がクレジットカードのアダルト業界への規制を強めるきっかけになったといいます。但しこれはアメリカ国内の話であり、日本でのマンガや同人誌などのコンテンツはそもそも対象外であるとラーナー氏は伝えています。


参議院議員の山田太郎氏も8月に米Visa本社を訪問して「合法であるコンテンツ等に対する価値判断は行っていない」「規約についても、本社は基準を決めているのみで、判断を行っていない(判断を行うのは現場)」という発言を引き出しており、Visaの日本法人にも同様の確認を取ったとしています。


ではなぜ、日本のオタクコンテンツでクレジットカード規制が相次ぐのでしょうか。山田太郎氏は「クレジットカードブランドの下には、イシュアー(クレジットカード発行会社)とアクワイアラー(加盟店契約会社)があり、さらにアクワイアラーと加盟店の間には、各クレジットカードブランドなどと一括契約できる決済代行会社が挟まっている」というカード業界の複雑な現状を紹介し、クレジットカードの取り扱い停止に関する相談の多くが「決済代行会社から対応を求められたもの」と明かしているものの、どこの誰が主体となって規制をしているのか分かりにくいし、現状では情報収集が進んでいないとしています。


何はともあれ、近年のオタクコンテンツのクレジットカード規制に積極的なのはVisa本社ではなく、国内のどこかの決済代行会社の可能性が高いことが示唆されています。


それではSteamはどうか?むしろ怖いのは海外からの突き上げの可能性


こうして国内のクレジットカード規制の流れについて見てきたわけですが、それでは性的コンテンツも一部取り扱うSteamが国内からのクレジットカードの規制に巻き込まれる可能性はあるのでしょうか?


結論から言うと、筆者が考える限り国内クレジットカード会社によるSteamの規制の可能性は限りなく低いと思われます。


これは2024年11月のSteamの日本語ユーザー比率が2.91%で、かつSteamの最大同時接続数が約3,900万人であることを考えると、日本語Steamユーザー数は多くても120万人程度であること、そしてSteamには性的コンテンツを含むゲームがあることは確かですが、ほぼ大半が一般ゲームであり、ごく少数の性的コンテンツのためにSteam全体へのクレジットカードの使用を禁止することは考えにくい(先述の「マンガ図書館Z」と異なり、マネタイズの主体が少数の性的コンテンツというわけでもない)のです。そもそもSteamを運営するValveは海外の会社で、Steamも中国圏を除き全世界でひとつのサービスとして運営されていますので、クレジットカードについては国内のどこかの決済代行会社を仲介に用いていない可能性が高いです。


むしろ、怖いのはSteamから性的コンテンツを含むゲームが一斉に消える可能性です。Steamの設定するアダルト向けコンテンツの基準は紆余曲折を経てユーザーの要求に応える形で作られていったものであり、この基準を転回する可能性がないとは言い切れないからです。暴力的・性的なゲームの存在に反対する米国内のキリスト教系宗教団体のロビー活動も、根強いのが現状です。




筆者の主観としては、国内のクレジットカード業者がSteamに対して使用規制をするよりも、Steamが外部のロビー活動や圧力に屈してアダルトゲームの取り扱いを撤廃する可能性の方が高いように思います。ただ、一度購入したゲームに関してはSteamによってストアページが削除されても、パブリッシャーが取り下げない限りゲームの再ダウンロードは可能なので、ゲームがダウンロードできなくなる心配は無用かと思います。


それでも、もしSteamでクレジットカードが使えなくなってしまったら?


……とは言え、未来は何が起こるかわからないもの。突然Steamでクレジットカード決済ができなくなるケースもあるかもしれません。そんな場合、どうやってSteamのゲームを購入したらいいのでしょうか。


1つは、各地のコンビニや家電量販店で販売されている「Steamギフトカード」を使用する方法です。これをクレジットカードで買い、Steamでコード入力すればSteam内のウォレットに入金され、ゲームを購入することができます。


もう1つの方法としては、決済サービス「PayPal」を使用する方法です。Paypalにアカウントを作成し、クレジットカードや銀行口座から入金すれば、PaypalのアカウントからSteamのゲーム購入ができます。ただし、大抵の場合昨今話題になるような規制ではPaypalも(同じルートでの規制理由なのかはともかく)使えなくなっていることが多いようです。Steamの場合、同様にLINEPayやPayPayなどもいまでは使えます。あと、忘れがちなのですが、Steamは銀行振込やコンビニ決済が利用できます。


何はともあれ、万が一の場合の備えはしておきたいもの。最も良いのは事態が改善することなのですが、いずれにせよこの記事が参考になれば幸いです。

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