全国紙で『ドラゴンクエスト』が初めて報道された日―各紙の「初ドラクエ記事」をチェックしてみた【年末年始特集】
Game*Spark / 2025年1月1日 15時0分
『ドラゴンクエスト(以下ドラクエ)』の生みの親として知られる堀井雄二氏の、文化庁長官表彰受賞が大きな話題になっています。
ドラクエ第1作が発売されてから38年。堀井氏の言葉を借りれば、ドラクエを含むゲーム作品は「犯罪の原因にされたり、なにかと世間から目の敵にされた」ことも確かにありました。大人からすれば、ファミコンソフトは「奇妙な子供のおもちゃ」。当然、全国紙もドラクエなるソフトを取り上げることは当初はしませんでした。大人の興味の対象外だったからです。
では、全国紙が初めてドラクエを取り上げたのはいつでしょうか? 日本には『ドラゴンクエスト』というファミコンソフトが存在し、それが子供たちを熱狂させていると全国紙の記者が気づいたのは、何年何月何日のことでしょうか?
今回は「全国紙が初めてドラクエを報道した日」というテーマで、筆を進めていきたいと思います。
図書館でかんたん検索!
時代の進化というのは恐ろしいもので、今やインターネットで全国紙の過去の記事を検索できます。もちろんこれは有料のサービスなのですが、図書館に行けばこの記事検索データベースを無料で使うことができ、しかも1枚10円でプリントアウトしてくれます。
今回は朝日・毎日・読売・日経の4紙のデータベースから、ドラクエに言及した一番最初の記事を検索してみました(筆者の地元の図書館に、なぜか産経新聞はありませんでした。残念!)。「ドラゴンクエスト」と入力して日付の古い順にタイトルを出していけば、すぐに記事が見つかります。ビバ、文明の利器!
朝日新聞は「ハイスコア事件」を取り上げる
というわけで、まずは朝日新聞から。記念すべき初ドラクエ記事は1987年2月25日夕刊15ページ『ドラゴンクエスト2のナゾ解き掲載に待った 東京地裁が仮処分』というタイトルです。
複雑ななぞ解きを売り物にしたテレビゲームのソフト「ドラゴンクエスト2」が爆発的な人気を呼んでいるが、東京地裁民事29部(設楽隆一裁判官)は25日までに、ソフトメーカーの承諾なしになぞの解決法も紹介したテレビゲーム雑誌について「著作権侵害にあたる」と判断、発売の禁止などを命じる仮処分決定を出した。
(朝日新聞1987年2月25日夕刊15ページ『ドラゴンクエスト2のナゾ解き掲載に待った 東京地裁が仮処分』)
『ドラクエ2』を「複雑ななぞ解きを売り物にしたテレビゲームのソフト」と表現している点に注目です。当時は「RPG」という単語自体が普遍的に知られているものではなく、記者としても『ドラクエ2』の内容をどう端的に表現するかで悩んだのではないでしょうか。
そして、この記事が掲載された当時『ドラクエ2』の攻略方法がエニックスの許可なしに解説されてしまうということが起きました。いわゆる「ハイスコア事件」ですが、これはメーカーの許諾を取らずに攻略法を掲載することが著作権侵害にあたると東京地裁で判断されました。
この事件を伝える記事が、朝日新聞にとっての「初めてのドラクエ記事」だったのです。
ドラクエ3騒動が「初ドラクエ記事」だった毎日新聞
次は毎日新聞です。
この新聞の初ドラクエ記事のタイトルは、『ゲームソフト「ドラゴンクエスト[3]」の発売に1万人が行列』です。1988年2月10日東京夕刊11ページに掲載されました。
ファミコンファンの間で話題のゲームソフト「ドラゴンクエスト[3]」が十日から発売されたが、東京・池袋のバーゲンショップでは三割引きで売り出したため開店前に約一万人が列をつくる異常人気となった。
(毎日新聞1988年2月10日東京夕刊11ページ『ゲームソフト「ドラゴンクエスト[3]」の発売に1万人が行列』)
今や伝説の出来事となっている「ドラクエ3発売騒動」を伝える記事が、毎日新聞にとっての初ドラクエ記事です。都心の家電量販店では、徹夜組も現れるなど大変な騒ぎとなりました。平日なのに中学生や高校生も並んでいたため、警察官や補導員が学生たちを次々と補導しています。
教育委員会も「学校を休んでドラクエ3を買いに行くな」と呼びかけていますが、今の価値観で考えると理由はどうあれ学校を休むこと自体は各々の自由裁量です。にもかかわらず、教育委員会がそのような声明を出すことは学生に対する過干渉と言わざるを得ません。
ともあれ、当時はドラクエⅢを巡る大騒動が列島を揺るがしていたことは事実。毎日新聞のこの記事には、
埼玉県富士見市内の中学二年(14)は、「授業参観の振り替え休日で来た。キャラクターを自分なりに育てていく面白さがある。早く家でやりたい」とゲームを買って帰った。
(同上)
と、絶好のタイミングの振り替え休日に恵まれたラッキーボーイのことも書かれています。
「ファミコンブームは下火になった」と報道した日経新聞
続いて紹介するのは、日本を代表する経済紙・日本経済新聞です。
日経新聞の初ドラクエ記事のタイトルは『ファミコン値崩れ――半値以下の販売も目立つ。』です。1986年6月26日の朝刊20ページに掲載されました。
「ファミリーコンピュータ」のソフトが値崩れしている。ソフトの種類が増える中で、人気のないソフトは標準小売価格の半値以下で売る例も多い。人気ソフトも10-15%引きで発売している。
(中略)
以前、爆発的に売れたスーパーマリオブラザーズも今や下火になっている。「今の人気は魔界村とドラゴンクエスト」(任天堂)。人気ソフトも定価で売る店は少ない。
(日本経済新聞1986年6月26日朝刊20ページ『ファミコン値崩れ――半値以下の販売も目立つ。』)
この記事が出た1986年6月26日という日付に注目です。一番最初のドラゴンクエストの発売はこの年の5月27日。ここから少しずつ話題になっていきますが、6月の時点ではまだこれがスーパーマリオブラザーズに並ぶビッグタイトルに並ぶとは誰も想像していません。したがって、日経新聞の記者は「ファミコン人気は下火になった」と分析してしまったのです。
読売新聞はタイアップソングを報じる
最後に紹介するのは読売新聞の記事。初ドラクエ記事は1986年12月4日東京夕刊11ページに掲載の『[音楽かわら版]マキノ監督の孫歌手に』です。
CM、ドラマなど何とでもタイアップの歌謡界だが、とうとう人気ゲームソフトとタイアップした歌が登場する。新人、牧野アンナが歌う「LOVE SONG探して」(アポロン)がそれである。
副題に「ドラゴンクエスト〔2〕・悪霊の神々―—勇者ロトへのメッセージ」とある。この「ドラゴンクエスト」とは、エニックス社のゲームソフトで、シリーズ一作目が百万本を超える人気。近々、二作目が発売される。
この歌は二作目に登場する主人公への応援歌で、ゲームの中にもメロディーが入っているという。来年一月二十一日の発売だが、ソフトが売れればこの曲も―—という皮算用。
(読売新聞1986年12月4日東京夕刊11ページ『[音楽かわら版]マキノ監督の孫歌手に』)
「ソフトが売れればこの曲も―—という皮算用」という表現が少し引っかかりますが、牧野アンナさんの歌う曲はコンピューターゲーム史に刻まれる名曲として今も愛されています。言い換えれば、ゲームはテレビやラジオに匹敵する有力メディアということを『ドラクエ2』が証明してみせたのです。
「RPG」が広く知られていなかった時代の新聞記事
上述の通り、この時代は「RPG」という単語自体は一般には通じませんでした。そのため、記事を書いた記者も「ドラクエって具体的にどんなゲームか知らない」という状態だった可能性があります。
マップ上のエンカウント方式でモンスターと戦い、お金と経験値を得て少しずつ強くなっていく……というシステムを深く理解していない感じです。その仕組みがなぜ革新的なのか、子供たちにどのような影響を与えているのかをしっかり考察できる新聞記者は、まだまだ少なかったと言わざるを得ません。
そうした背景があったからこそ、その後に起こるドラクエ3発売騒動が新聞記者にややセンセーショナルな書き方をされてしまった……と考えられるのではないでしょうか。
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