1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. IT
  4. ゲーム

旦那様、抜け荷の品が届きやしたぜ! 元禄江戸で証人として生きるPCレトロゲー『天下御免』【特集】

Game*Spark / 2025年1月3日 20時0分

2025年のNHK大河ドラマは「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」というタイトル。時代設定は18世紀末、江戸時代中期。蔦屋重三郎という出版業者が主人公です。


20世紀まで、江戸時代は「庶民が幕府に抑圧され、一揆が頻発していた」というような角度で学校でも教えられてきました。しかし、江戸時代は島原の乱や文化露寇、幕末の動乱期といった例外を除いて戦争や紛争には無縁の状況が続いた「大平和時代」ということが、21世紀になって広く共有されるようになりました。江戸幕府は、明朝復興を目指した鄭成功の援軍要請も黙殺しています。


そんな平和な江戸時代を体験できるPCゲーム『天下御免』という作品があります。発売は1994年ですが、現在もプロジェクトEGGのプラットフォームで配信されています。


大河ドラマを観る前に、まずはこの『天下御免』をプレイしてみましょう!

【2024年~2025年】Game*Spark年末年始特集はこちら!



元禄年間の日本


『天下御免』の時代背景は、元号では元禄年間前後。17世紀末から18世紀初頭が舞台です。


大河ドラマ「べらぼう」と同じ江戸時代といっても、『天下御免』はそれより100年近く前のお話。何しろ、江戸時代は 2世紀半続いていました。この長い歴史を一括りにするには無理があり、じっくり観察してみるとそれぞれの時代ごとの特徴が見て取れます。


『天下御免』の主人公は、江戸の商人。海産問屋、薬種問屋、小間物問屋、油問屋などの業種を選択することができます。しかし、最初のうちは商品の在庫が全くありません。そこで、船と船頭を手配してまずは大坂(大阪)に行かせます。


大坂は「天下の台所」。元禄年間の日本文化の中心地でもあります。日本各地の物産がここに集中するのですが、一方で大坂で商品を購入するよりも原産地から直接仕入れるほうが安く上がるというのも事実。そこで、江戸詰めの全国諸藩の屋敷を回ってご挨拶します。


藩からの寄港許可がなければ商売をすることはできず、その許可を誰に出すかという意思決定を行っているのは藩主ではなく江戸家老。「日本で一番強いのはトップではなく幹部」ということが、よく表現されています。なお、希望の寄港先が幕府直轄地の場合は幕閣のお屋敷に挨拶回りをしましょう。現代の霞が関をウォーキングするのと同じ要領です。その際は底に小判を詰めたお土産も忘れずに!


アユタヤから阿片を密輸


そして、このゲームの醍醐味といえば「抜け荷」つまり密輸です。何と、鎖国体制真っ只中の時代にかかわらず中国やタイへ船を行かせることができます。


最も遠方の港は、タイのアユタヤです。


アユタヤには筆者も何度か行ったことがあります。かつてはアユタヤ王朝が栄え、巨大な遺跡が現存する都市です。そして、17世紀まで日本人の集落が存在しました。この集落の重鎮だった山田長政は、筆者の地元静岡市出身。そのため、静岡市とアユタヤは継続的な国際交流を行っています。


バンコクやパタヤよりも落ち着いた雰囲気の歴史都市ですが、『天下御免』でのアユタヤは何と阿片の供給地になっています。ここで阿片を仕入れて、最終的には華のお江戸にクスリを流通させるという悪行をしでかすことができます。


もちろん、今現在のアユタヤではそんなことできませんよ!!


カルテルは当たり前!


海外から仕入れたご禁制の品々は、時として奉行所のガサ入れの対象になります。


そうしたことも想定し、八丁堀の同心には日頃から賄賂を渡しておく必要があります。ガサ入れで阿片や洋酒が見つかったとしても、それを黙殺してくれます。また、南北の奉行所に絶えず賄賂を送ればお白州で言い渡されるお裁きが軽くなるという不思議な効果が!


そうした悪の道を邁進しつつ、本来の家業にも精を出さなければなりません。同業者の寄り合いに顔を出し、ある特定の商品の価格を一斉に引き上げて利益拡大を狙う……という合議にも参加します。これ、分かる人には分かると思いますが現代では「カルテル」と呼ばれ、独禁法に違反します。しかし、『天下御免』は元禄年間のお話。商人たちが堂々とカルテルを組み、商品価格を操作することができるのです。


投票次第で地獄行き


『天下御免』には「主人公の死」という概念があり、しかも「死後の世界の投票で天国行きか地獄行きか」が決まります。


それまで主人公と関わってきた人が投票する仕組みのため、言い換えれば生前にできるだけ彼らを喜ばせる行為をしておいたほうが天国に行きやすい……ということでもあります。たとえ犯罪に手を染めていたとしても、巷の人からの評判が良ければ天国へ行けるのです。


このあたりの死生観、宗教観は西洋のそれとは全く異なります。たとえばキリスト教の歴史は「聖書の解釈の歴史」で、「これをこうやったら神の定めた禁忌に触れてしまう=地獄へ落ちる」という発想です。今でこそローマ教皇が「プロテスタントも正教会もコプト教会も皆兄弟」と発言する世の中になりましたが、昔は「マルティン・ルターは聖書を曲解したから地獄に落ちている」「先住民は聖書を学んでいない。このままでは地獄に落ちてしまう」という考えが横行していました。カナダを揺るがした先住民寄宿学校問題も、そうした背景があります。


ところが、日本人の心の中には「絶対的権力者による裁きよりも優先されるもの」があり、『天下御免』の場合は「大衆からの人気」がその後の運命を左右する仕組みです。このような人々の国では、独裁者は絶対に出現しません。ただし、明確な犯罪行為も大衆がそれを許せば裁かれない(もしくは罰が軽減される)という一種の人治主義に陥りやすい欠点もあります。


良性インフレが作った文化


そんな『天下御免』は、日本有数のインフレーション時代の豊かさを伝えてくれる作品でもあります。


元禄年間は、江戸期最初の貨幣改鋳が行われた時代でもありました。小判の中の金を減らすことで物価が上昇し、巷は大きな混乱に陥った……と言われ続けてきましたが、最近ではこれは「良性インフレ」であったことが指摘されています。物価が上がると同時に所得も上がっていく現象です。


現に、元禄年間は日本史においても「華やかな文化で彩られた時代」でした。富豪の経済力に支えられ、絵画や芝居、文学がそれぞれの様式を確立しました。冒頭に書いた鄭成功は日本からの援軍を得ることはできませんでしたが、その代わり日本人は鄭成功を芝居のスターにしました。彼をモデルにした人形所瑠璃の演目『国性爺合戦』の作者は、元禄前後の時代に活躍した近松門左衛門です。


鮮やかでリッチな元禄文化を楽しめる『天下御免』は、正月のお供に最適な作品と言えます。

【2024年~2025年】Game*Spark年末年始特集はこちら!



この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください