裁判官が被告の立場をVRで体験。米フロリダ州の正当防衛審理にて仮想現実体験が証拠として提出
Game*Spark / 2025年1月7日 7時0分
米国フロリダ州ブロワード郡の裁判所で、VR技術を用いた証拠提示が行われました。これは米国の法廷で初めてVR技術が証拠として採用された事例となる可能性があり、法曹界に大きな影響を与えそうです。
仮想現実で状況を説明
事件は、結婚式場のオーナーであるミゲル・アルビス氏が、2023年に開かれた結婚式の参列者に銃を向けたとして加重暴行の罪で起訴されたものです。アルビス氏は正当防衛を主張しています。
弁護側は、Oculus Quest 2 VRヘッドセットを使用して、アルビス氏の視点から事件の状況を再現。アンドリュー・シーゲル判事は、検察官や証人とともにVRヘッドセットを装着し、被告の立場から状況を体験しました。弁護人のケン・パドウィッツ氏は、「裁判官は被告の目を通して、酔った参列者たちに囲まれた状況を見ることができました。被告は自分の命と財産を守るために武器を取り出す必要があると感じた」と説明しています。
パドウィッツ氏は、1992年に検察官として担当したフロリダ州の殺人事件において初めてコンピューターアニメーションを証拠として導入。パドウィッツ氏によれば、裁判官はすでにこの仮想現実とコンピュータアニメーションを証拠として認めており、今回の審理でも証拠として提出されているとしています。
この新しいアプローチは、法廷での証拠提示方法に革命をもたらす可能性がありつつも、同時に懸念も提起されています。法律アナリストのデイビッド・ワインスタイン氏は、「VR体験が記憶として脳に記録される」という研究結果を引用し、裁判官や陪審員が一方の当事者の視点を記憶として取り込むことの影響について、法学者たちが今後議論を深めていく必要があると指摘しています。
この事件の正当防衛に関する審理は1週間続き、追加の証人がいる場合は2025年2月に再開される予定とのことです。陪審裁判に進む場合は、VR証拠の採用について改めて審理が行われる見込みです。
なお、2018年3月には、中国の第一審裁判所にてVR技術が利用されています。
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