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シナリオライターが遊ぶ『魔界塔士Sa・Ga』―ユニークなシステムが目白押しな塔を上り続けるゲームボーイ向けRPG

Game*Spark / 2025年2月2日 13時0分

※本記事は『魔界塔士Sa・Ga』のネタバレを含みます。
閲覧時にはご留意ください。


ビデオゲームに秀逸なシナリオが盛り込まれ、それを読み解くことも遊びの一部として受け止められるようになった現代……本連載記事では、古今東西のビデオゲームを紐解き、優れたゲームシナリオとは何かを考えていきます。第19回は『魔界塔士Sa・Ga』を取り上げます。


1989年、スクウェア・ソフトから初のミリオンセラータイトルが生まれました。その名も『魔界塔士Sa・Ga』


独特の成長システム、バラバラな世界を行き来する摩訶不思議なシナリオ、歯ごたえのある難易度、植松伸夫氏による素敵な音楽、そしてディレクターである河津秋敏氏によるこれまたユニークなセリフ回しと、今なお見るべきところの多い作品です。


のちに「サガ」シリーズとして35年以上の歴史を刻むこととなる伝説のRPGを、今一度堪能してみましょう。


ちなみに本作はゲームボーイでは不可能だと考えられていたRPGであり、のちにゲームフリークの田尻智氏に影響を与え『ポケットモンスター』シリーズが生まれたきっかけであるとも言われています(ただし、この説はXで河津氏が「無いと思う」とコメントしています。謙遜とも取れるような口調ではありますが……)。



ゲームをスタートすると、早速パーティーメイクから始まります。選べる種族は「にんげん」「エスパー」「モンスター」の三種類。それぞれにまったく異なった成長システムを有しています。


にんげんは店で売っているステータスアップアイテムを購入すると強くなり、エスパーは戦闘終了時にランダムでステータスや覚えているまほうが切り替わり、モンスターは倒した敵の肉を食べると強くなったり弱くなったりします。


のちの『サガ』シリーズを遊んでいた筆者でも、この仕様には戸惑いました。「どうしてエスパーはたまに変なまほうを覚えているんだ……?」と中盤まで首を傾げながらプレイすることとなりました。


さて、本作は世界の真ん中に立つ、楽園へと通じる塔を上るというシンプルなストーリーです。しかしながら、その塔の中身はかなり複雑で、各エリアごとに独特な世界観を有しています。


最初のエリアこそ中世ファンタジーを思わせる剣と魔法のエリアですが、小島が浮かぶ大海を行き来するエリアがあったり、空を駆けるエリアがあったりと、プレイヤーを飽きさせません。


この、まったく違う世界観のエリアがくっついているという発想は、のちの『サガ フロンティア』『サガ エメラルド ビヨンド』に通ずるところがあります。


特に、16階層に広がる都市世界は河津節全開のトンデモ設定です。不死身の存在「朱雀」によって荒廃した都市で、暴走族の総長と出会った主人公たちは、彼の妹を救うことで彼から認められます。


バイクにまたがって朱雀の追跡を逃れ、アメ横で必要なアイテムを揃え、総長とともに原子力発電所に向かう主人公たち。総長は原発を守る殺人バリアをその身で受け、なんと死んでしまいます。しかし、主人公たちは総長の決死の働きによって「イレイサー99」というバリア除去装置を手に入れ、見事に朱雀を撃退することが叶いました。


近未来の東京らしき空間を駆け抜けるポストアポカリプスないしサイバーパンク的な設定と、暴走族の総長が漢を見せるというヤンキーカルチャーが合体したあまりに唐突すぎるシナリオは、一度読んだら忘れられません。総長の死後、ゾクのハチマキという頭防具がもらえるのもエモすぎます。


さて、物語もついに終盤を迎え、真の塔の最上階へと至ります。


そこで待っていたのは、この世界の創造主である「かみ」でした。序盤から登場し、主人公たちに助言するアドバイザーであったシルクハットの男こそが、本作のラスボスであるかみだったわけです。


世界を創造したものの、暇を持て余してしまった彼は、壮大なゲームを仕掛けることを思いつきます。塔に上ると楽園が待っているというウソを吐き、挑戦者たちやそこに住む人々が苦しむ姿を間近で眺めていたわけです。


創造主にしてラスボスが本物の外道であることがわかった主人公たちは、彼に歯向かうことを決意します。


ここでかみが言い放つのが、かの有名な「これも いきもののサガか」というセリフ。ここでタイトルの「Sa・Ga」という言葉が、長大な物語や叙事詩を表すアイスランド語の「サーガ」としての意味合いと、持って生まれた運命や本性を表す「性(さが)」のダブルミーニングになっていることに気づきます。


(まあ、今となっては、チェーンソーでかみを即死させるバグのほうが有名であり、多くのプレイヤーが彼を瞬殺したことでしょうが)改めてこのセリフを噛み締めてみると、これ以上ないくらい綺麗にタイトルを回収した素晴らしい掛け合いだったと言えるのではないでしょうか。


1989年の時点で、河津氏の独特な世界観や台詞回し、バトルシステムに対する考え方はかなり構築されていたのがよくわかります。さすが、歴史に名を遺す素晴らしいRPGでした。


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