チラズアート新作“霊写”ホラー『Cursed Digicam | 呪われたデジカメ』をプレイ。生々しさ感じるフォトリアルな環境、じっとりとした精神的恐怖を描く「一味違う」ホラーゲームだった
Game*Spark / 2025年2月2日 22時0分
今回はChilla's Art(チラズアート)が手掛け、2025年1月10日にリリースされた新作ホラー『Cursed Digicam | 呪われたデジカメ』のプレイレポートをお届けいたします。なお、本記事はネタバレ要素を含みます。閲覧の際には十分ご注意ください。
“いつもと違う”チラズアート最新作
本作は一人称視点のサイコホラーアドベンチャー。プレイヤーは「幽霊を撮影できる」特殊なカメラを使い、不気味な公園で亡くなった娘の霊を見つけ出すのが目的です。執筆時点でのSteamレビューは、348件中76%がポジティブな「やや好評」ステータスを獲得しています。
未リリースも含め、チラズアートの28本目となる本作は、さまざまな要素が“今までの作品とは違う”と感じました。
例えば最も顕著なのは、「圧倒的にリアルになったグラフィック」です。作品ごとに多少の差異はあれど、基本的にPSX風の不気味なローポリが特徴でしたが、初めてUE5を使用したことで細部までフォトリアルに描かれ、写実的な世界がよりダイレクトで生々しい恐怖感を与えています。
また、初期作品はオーソドックスなサバイバルホラー、それ以降はウォーキングシム系のサイコロジカルホラー、と概ねアイテム収集型の探索ホラーであるものの、時代によってゲームメカニクスが変遷していくのも特徴的です。本作では“心霊写真を撮影し集めていく”というシンプルなゲームシステムになり、没入感が増し途中でダレることなくプレイに集中できました。
他にも、無意味なジャンプスケアがほぼ無かったり、考察の余地がある意味深なストーリー展開だったり、以前の作品と比べても「ストレートな怖さ」を非常に感じ、より多くのプレイヤーに訴求できる王道のサイコホラーゲームに仕上がっていると思いました。
操作性、言語、グラフィック設定
操作方法は、キーボード&マウスのみに対応し各キーの配置変更も可能です。視点移動や歩く、走る、写真を撮る、UIを切り替えるといった操作アクションはどれも快適でストレスを一切感じません。初期作品では操作性の悪さがとくに目立っていたことを思うと大きく変わったポイントでもあります。
そしてもちろん日本語字幕に対応しますが、本作は登場人物の日本語ボイスが実装されていて、ストーリーへの感情移入が格段にしやすくなっていました。
グラフィック品質が大幅に向上したことで、画質もさらに細かく設定可能になったのも注目点。テクスチャや影の品質などのプリセットやカスタマイズ機能、DLSSやFSRなどのアップスケーリングに対応し、フォトリアルになった本作の魅力を十二分に引き出すことができます。
しかし一方で、最適化不足によるゲームの重さも気になったところ。とくに、前半戦の公園内での挙動は描写物がたくさんあるせいか、フレーム落ちする場面が多々ありました。筆者は、プリセットをMEDIUMにして項目の「仮想シャドウマップ」をONにしたところ、かなり快適になったのでご参考までに。
「特殊カメラ」で心霊写真を撮影する
本編が始まるとホームビデオ風の映像が流れ、公園の遊具と無邪気に遊ぶ少女の様子が映し出されます。そこはどこで、誰がいるのか詳細は不明。そして短いムービーのあと「先日、近くの公園で娘が死んだ」と不穏なキャプションが表示されるのですが……
「この子を探しています」―団地公園より行方不明
--情報提供のビラ
どうやら主人公は団地内の公園で娘を亡くして以来、霊障に悩まされる日々を送っているようです。意を決し現世に縛られた娘の霊を解放するため藁にもすがる思いで調べた結果、主人公は“あるウェブサイト”を発見します。
それは、かつての個人系サイトを思わせる怪しげな雰囲気の「除霊サイト」でした。説明によると、「霊媒師が作ったカメラで亡くなった人間の写真を撮り、それを15枚アップロードすると成仏する」とのこと。胡散臭いものの、他に良い方法を見つける余裕はありません。
結局のところ、霊媒師が作ったという「特別なデジタルカメラ」を5万円で購入。本当にこれで娘の霊を浄化できるのだろうか……?
デジカメを手に舞台となる公園へ。ゲームとしてはここからが本番です。まず感じたのが、緻密に描写されたフォトリアルなグラフィック。壁のシミの付き方だったり便器の汚れ具合だったり、細かいディティールが非常に「現実的」で高い没入感がありました。
操作やUI画面はいたってシンプルな設計。スペースバーでカメラを構えて左クリックで写真撮影、Eキーでインタラクト、Shiftキーで走る、これらが基本動作となります。
「写真撮影」は、カメラを構えるとファインダー越しの画になり、フォーカスフレームや電池残量、露出補正などが表示され、撮影モードに入ります。最大ストック数は40枚で、Tabキーを押せば写真を確認したり削除することも可能です。
こうして見ると現実世界での写真撮影とあまり変わらない様子。しかし何気なくトイレを撮ったところ……
扉の隙間からのぞく子供らしき顔が……!思わず背筋が凍りましたが、普通のカメラでは捉えられない霊の姿は特殊カメラを使えば撮影することができるようです。
ゲームの前半部分にあたる公園内での探索は、遊具や木の陰などさまざまな場所を調べて怪異を発見していくウォーキングシム的な要素が強め。とはいえ、常に薄暗く不穏な空気感の公園は歩いてるだけでもかなり怖い。
繰り返しになりますが、やはり刷新されたビジュアルの品質が非常に高い。水たまりの反射やオブジェクトの質感など、環境下におけるライティング、リフレクションが正確に反映されていました。このフォトリアルな空間が不気味さや恐怖感をさらに演出しています。
幽霊がいる場所は、必ずなんらかの「違和感」があり攻略の手がかりになります。例えば、折れた大木に不自然な引っかき傷があったので撮影したところ、木を掴む子どもの手が写り込んでいました。
他にも、公園の外に小学生が遊んでいたのでカメラを構えてみると……覆いかぶさるように写る女の子の霊が現れます。
とりわけ心臓に悪かったのはこちらの写真。水飲み場に近づいたところ、蛇口が開きっぱなしで「まさか」と思い撮影すると、排水溝から睨むようにこちらを見る霊の姿が。こういった感じで、周囲をよく観察し“異変”の正体を暴き出して写真に収めていきます。
しかし、なかなか全ての場所を特定するのは容易ではありません。その場合は、トイレの壁や遊具などに記された「4ケタの数字」を「公衆電話」に打ち込めば、霊の居場所を教えてもらえる救済システムがあります。基本的にチラズ作品はノーヒントなことが多いので、かなり遊びやすくなっている印象でした。
指示された通りジャングルジムの中から写真を撮ったところ……
突然真っ暗闇となり、時間帯は夜に。見上げるとジャングルジムに気味の悪いイラストが無数に張られていて、とんでもなく不気味な光景です。
イラストをよく見ると、トイレに張り出されていたチラシのキャラクター「まいきー」に似ているような……これが何か関係してるのでしょうか。
気を取り直し撮影再開……しますが、夜の公園は探索するのをためらってしまうほど恐ろしい。ライトの光だけだとよく見えないので、カメラを構えたまま進んでいくと、リアルSAN値(精神力)がガンガン削られていきます。
そのうえ撮影を重ねていくにつれ、雨が降り出したり電灯が真っ赤になったり、公園の環境にも異変が。このように今作ではチープなジャンプスケアはほとんど無く、プレイヤーをジワジワと追い詰めていく「じっとりとした恐怖感」を重点に描いていました。
そして15枚の心霊写真をようやくコンプリートし、なんとか無事帰宅することに。果たして娘の霊は成仏できるのか……。
“恐怖が加速する”後半戦
コンプリートした15枚の写真を「成仏館」にアップロードします。しかし気になるのは「写真は死後13日以内のものに限ります」という注意書き。なぜ日数制限されているのか、なぜ13日以内なのかは分かりません。
完了すると、サイトの画面にハンディカムで撮影されたようなビデオ映像が流れます。映像は、公園の遊具で遊ぶ少女に何者かが近づき、慌ててトイレに逃げこむ少女を追いかけていくというもの。とても穏やかな内容ではなく、奇妙で犯罪の匂いがプンプンします。
映像を見終えるとポルターガイストが起き、主人公は「あの子はまだここにいて、怪異は終わっていない」と感じます。今度こそ成仏させるため、公園と同様に部屋を探索し写真を撮影していきます。
霊体は自宅のさまざま場所におり、現れ方もどんどん露悪的でグロテスクなものになっていきます。そしてついには……
ふいにカメラを向た先に、身を乗り出した長髪女の霊が!その異様な姿に心底ビビリます。なにより明らかに愛娘の霊とは違うこいつは一体誰なんだ?
怪異は続きます。手掛かりを求め娘の部屋に入ろうとしたところ、今度は不気味な「まいきー」が突如現れたのです。そして一瞬にして電気が消え家中が暗闇になったかと思うと……
なんと、ここから『零』シリーズのような“霊写バトル”に突入。憑依した正体不明の幽霊が暗闇の中からどこからともなく襲いかかってきて、掴まる前にヤツの姿を撮影すれば撃退できます。襲撃パターンはランダムで、背後からだったりダッシュで近づいてきてたり……
極めつけは、うなる轟音とともに巨大チェーンソーを振り回してきたこと。あまりに唐突で「これはちょっとやりすぎでしょ」と怖いような笑えるような不思議な感覚に。とはいえ、まいきーの顔が目の前に迫ってくる恐怖感と、掴まれば一発死する緊張感がゲーム中でも一番スリリングな場面でした。
怪人まいきーを撃退し、いよいよ物語は終局へ向かいます。自宅で撮影した写真をもう一度アップロードすると、「死亡日時が13日を超える故人がいます」と警告メッセージが……え?ウソだろ、娘以外にも誰か死んだ人間がいるのか?謎は深まるばかり……そして玄関先からチャイムが鳴ります。
そこにあったのは行方不明者のビラ。ゲームスタート時には黒塗りになっていた名前が明らかにされています。
「この子を探しています」
公団愛美(こうだん まなみ)
たしか主人公の娘の名前は「みつか」で、ビラに書いてあったのは「まなみ」。あれ、何かがおかしい。少女を追いかけるビデオ映像、死後13日を超えた故人……ということはまさか。得体の知れない恐ろしさが背筋に駆け抜けます。すると、外のほうからけたたましいパトカーのサイレン音が聞こえてくるのでした……。
果たして事件の真相と結末はどうなるのか?それは、ぜひ直接プレイして確かめてください。
本作の良かった点は、生々しさを感じるフォトリアルなグラフィックと、ジャンプスケアに頼らない「じっとりと追い詰められるような恐怖」を軸にしたゲームプレイです。前半戦の「怪現象を撮影する」というシステムは、シンプルながらゾッとする“乾いた怖さ”を味わえたし、リアルなヴィジュアルとの相性も抜群だと感じました。
そして「ホラー要素を詰め込んだ」後半戦は、プレイフィールはさほど変化はないものの、激化する怪異と不気味な「まいきー」とのバトル、散りばめられた不穏な物語の断片、などエンディングまで手が止まらないジェットコースター的感覚でした。クリア時間が約1~2時間程度なのもカジュアルで良し。
つまり本作は「正統進化をとげた王道のサイコロジカルホラー」として、今後のチラズアート作品の方向性をも決定づける大事な一作となるのは間違いないでしょう。もちろん、本作は間口が広くホラーが苦手な人からハードなホラーゲージャンキーまで、多くのプレイヤーにオススメできます。
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タイトル:『Cursed Digicam | 呪われたデジカメ』
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対応機種:Windows PC(Steam)
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記事におけるプレイ機種:Windows PC(Steam)
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発売日:2025年1月10日
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著者プレイ時間:3時間
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価格:920円
※製品情報は記事執筆時点のもの
スパくんのひとこと
リアルなグラフィックの中で「心霊写真」を撮影していくのが抜群に怖かったスパ!正統進化したチラズアートの作品だったスパ
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