[MOM329]流経大GK中島宏海(3年)_仲間を信じ、勝利は“寝て待つ”
ゲキサカ / 2014年12月17日 3時37分
[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.16 大学選手権準々決勝 流経大1-1(PK5-3)大体大 町田市立]
なぜか、ピッチ脇で仰向けになっている。すぐ隣では、キッカーを務めるチームメイトがPK戦に挑んでいるにも関わらずだ。珍しい光景に見えるが、流通経済大GK中島宏海(3年=筑陽学園高)は「いつもどおり」と語っていた。
この試合、前後半の90分で中島に仕事らしい仕事は少なかった。流経大が主導権を握って押し込む時間帯が続き、大体大に許したシュートは前後半でわずかに1本ずつ。温度計は5度を示す上に雨が降り、寒さが身に染みる状況にも関わらず、最後方から試合を見守る男の集中力は途切れなかった。「正直、(集中力を保つ)難しさもありましたが、DF陣が『1本あるぞ』と声をかけてくれるし、応援の声が力になったので、集中力を保てました」。
90分で流経大にゴールは生まれず、逆に延長前半5分には少ないチャンスを生かされて大体大に先制を許してしまうが、延長後半1分にFW江坂任(4年=神戸弘陵学園高)が同点ゴールを叩き込んで試合を振り出しに戻した。ここからが、中島の見せ場となった。同7分にFW澤上竜二(3年=飛龍高)のヘディングシュートを弾き出すと、同10分にはDF坂口豪(4年=C大阪U-18)のミドルシュートに反応して、チームをPK戦へと導いた。
この働きには中野雄二監督も「澤上くんにヘディングされたシーンはベンチから見ていても『やられた』と思いましたが、よく止めてくれました。あれが今日のポイントの一つでした」と賛辞を送っている。しかし、中島本人は「DFが頑張ってくれていたので、あそこで止めないと『自分、何しにきたの!?』という感覚でした。だから止められて本当に良かったです」と体を張った守備陣の奮闘に応えられたことに安堵の表情を見せていた。
迎えたPK戦、中島は2つの独特な行動を起こす。まず1つ目の行動は、ゴールマウスにあるボールを拾い上げると、相手キッカーへと手渡しに行く。相手に近付くことでプレッシャーを掛けているように見えるが、「プレッシャーを感じるかは相手次第なので、実際にどうなのかは分かりません(笑)。ただ、自分はそういう流れでやりたいなと思っているので」とマイペースでPKに臨むための行動だと説明した。
そして相手の3人目のキッカーが枠を外して、流経大5人目のキッカーとなるDF今津佑太(1年=流経大柏高)が決めれば勝利となる場面で、もう1つの行動を起こす。ここまでも味方のキッカーの順番になると、ピッチ脇で仰向けになっていた中島は同じ体勢になる。大事な場面をまったく見られない状況だが、「味方が決めてくれると信じているんです。絶対に大丈夫だと。僕はあの格好が一番落ち着くんですよ、自然に身を委ねる感じですね(笑)」と仰向けになる理由を答えた。
今津のキックは相手GKの逆を突き、ネットを揺する。同時に観客席からは大歓声が起きた。空を見上げていた中島は、信頼するチームメイトが勝利へ導いてくれたことを確信すると、今津の下へと一目散に駆け寄って喜びを爆発させた。
(取材・文 折戸岳彦)▽関連リンク
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