[Fリーグ]二兎を追った木暮監督が選んだ「パワープレー」という戦術
ゲキサカ / 2015年2月25日 11時50分
Fリーグのプレーオフは、独特の方法で行われる。リーグ戦を首位で終えたチームは、上位5チームが勝ち進むプレーオフの決勝戦に進む。そして、残りの4チームによるトーナメントを制したチームと、プレーオフ・ファイナルを戦うのだ。しかも、その際には1勝のアドバンテージが与えられており、レギュラーリーグを2位から5位で終えたチームは、プレーオフ・ファイナルで2連勝しなければならない。昨シーズンは、バサジィ大分がプレーオフ・ファイナルに勝ち進み、第1戦では名古屋を7-6で破った。しかし、初戦にすべてを出し切った大分は、第2戦で0-7と大敗を喫している。リーグ唯一のプロクラブであり、他のクラブより遥かに恵まれている環境でチームづくりを進める名古屋と、真っ向勝負を挑んでリーグタイトルを獲得するのは、現実的でないと表現しても過言ではない。
直近の試合における勝利を目指すためだけではなく、リーグ優勝を争う一戦での不可欠な武器とするためのトレーニングを兼ねる。2つの目的があったパワープレーに、選手たちは真摯に取り組んだ。外部から「時間稼ぎの戦術」「エンターテインメント性を損ねる」といった批判を浴びても、チームはブレることなく、木暮監督の選んだ道を突き進んだ。
木暮監督が、これだけ勝利にこだわるのには理由がある。若くして日本代表に選ばれ続け、日本代表のエースとなり、スペインリーグでプロとしても活躍した木暮は、厳しい舞台に立ってこそ、選手たちの成長につながると確信している。
「いくら面白いフットサルをしたとしても、プレーオフに出る、出ないでは、選手たちが得られる経験値が違う。最終節の町田戦やプレーオフには、シーズンの序盤に出ていなかった若い選手が5人くらいメンバーに入っている。彼らがプレーオフの舞台に立つか、立たないかでは、今後が全然違ってくる。かっこよく言うと、オレは両方を取りに行った。若手の育成と勝利。その両方を取りに行った。その中で、どのやり方が一番取りに行けるか。現実的な采配を考えたときが、このやり方だった。優勝を諦めて、若手を育てるっていうのは、オレはまったく意味がないと思っている」
この取り組みは、ここまでのところ最高の成果を収めたといえるだろう。21日に行われたFリーグ2014/2015プレーオフ2回戦で大阪は浦安を2-1で下して、プレーオフ・ファイナルに勝ち進んだ。先制点を決めたのは、1月から起用していたFP田村友貴であり、決勝点をアシストしたのは加藤だった。
若手が成長を見せ、2位以内を決めた大阪だが、シーズン最後の決戦に向けて、選手たちのモチベーションは高い。キャプテンのFP佐藤亮は「1年間、ここを見据えてやってきた。パワープレー対策も、いろいろな相手と対戦して、どういう形で守られてもできるという手応えを感じています」と、自信をみなぎらせる。
プレーオフ・ファイナル進出を決めた試合後の会見、秘策の有無を問われた木暮監督は、最初に笑いながら「今から考えます」と言ったが、本音は最後に漏らした「あったとしても、今は言えません」だろう。綿密な計画を立てながらシーズンを戦ってきたルーキー指揮官が、どのようなプランを持っていたかは、28日の14時にキックオフを迎えるゲームで明らかになる。
(取材・文 河合拓)
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