小6の誓いから10年…東京V育ちの端山と杉本、重ならなかった2人の道
ゲキサカ / 2015年8月28日 12時24分
足並み揃っての活躍といかなかった2人は大学とプロと違う道を歩み始める。慶應義塾大へ進学した端山。当初はスタイルの違いから苦しみ、出場機会にも恵まれなかったが、徐々に出場時間を増やすと慶應義塾大に欠かせない選手の一人となる。“忍耐”を覚えた端山は大学での活躍が認められ、2013年7月には東京Vで特別指定選手として承認された。
再び東京Vで揃ってプレーする時が来たかに思われたが、奇しくも端山が登録された翌週に杉本は東京Vでの選手登録を抹消。FC町田ゼルビアへの期限付き移籍が決まった。端山が東京Vの一員として7試合に出場したとき、杉本の姿はなく、またも共にピッチに立つことは叶わなかった。
その後も、それぞれの場所で奮闘。端山は大学4年時の今季は背番号10を背負い、ユニバーシアード日本代表にも選出された。一方の杉本も今季は開幕から28試合に出場し、3得点を記録。U-22日本代表候補にも選出されている。
違う場所で輝きを見せ始めた2人。そんななか、約束した12歳の“あの時”から10年目を迎える夏がやってきた。新たな進路を決める季節。端山は古巣である東京Vと新潟のどちらにするか迷い続けていた。
当初、電話で話した杉本は「豪の行きたいところにいけばいいよ」と声をかけた。しかし、「アイツの口から本当に『新潟にすると思う』と聞いたら、やっぱり自分の気持ちはちゃんと伝えておかないと」と考え直し、「豪と一緒にやりたい気持ちがある」と素直な思いをぶつけた。
親友の本音を聞いた端山の心は揺れた。それでも最後は「新しい場所でチャレンジすることで成長したい。そのためにもより難しい場所を選んだ」と新潟へ行くことを決断。端山の報告を聞き、その思いを理解した杉本は「一緒にできると思っていたし、思っていたからこそ寂しい気持ちもあるけど。お前が決めたことだから何も言わないよ」とその背中を押した。
当時の心境を杉本は「俺はあいつの一言でヴェルディに来ると決めたので、一緒にプロになるというのは、ある意味で俺の一つの夢だったから。南(秀仁)もそうだし、一緒に育った同世代のメンバーで活躍したい思いがあったので、悲しかった」と明かす。
それでも親友の決断を尊重し、前を向いた杉本は「でもサッカー界は狭いから、またどこかで会うかもしれない。悲しいけれど、また一緒にサッカーできる日はきっと来るから。同じプロだったら、一緒にフィールドに立つ日は来るから。俺はあいつが選んだ生き方だから何も言わない」と微笑んだ。
2人の道はまたしても重ならなかった。それでも杉本が言うように、ボールを追い続けていれば、再び出会う日はやってくる。互いがプロの選手になり、ピッチで再会する日がやってきたら……端山は「泣くでしょ」と笑い、「超嬉しいでしょ」と言った杉本は言葉を続けた。
「初めて一緒にプロのピッチに立ったら、敵味方関係なく単純に嬉しいと思うし、今まで真剣にサッカーをやってきて良かったなと思うはず。きっと入場して、握手しちゃったら、うるっと来るんじゃないかな」
共に誓い合ったあの時から10年。2人はまたも別々の道を歩み出す。その道が再び交差するとき、少年から一人のJリーガーへ成長した二人はスタンドの観客を大きく沸かすプレーをみせてくれるはずだ。緑の血が通ったその足で。
(取材・文 片岡涼)
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