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「俺は持ってないな」 自虐の名波監督、J1復帰に安堵

ゲキサカ / 2015年11月24日 5時49分

[11.23 J2第42節 大分1-2磐田 大銀ド]

 7度、宙を舞った。昨季途中からジュビロ磐田を率い、就任2年目でJ1復帰を成し遂げた名波浩監督は試合後の記者会見で「(試合を)総括できるほど穏やかな試合じゃなかった」と、興奮冷めやらぬ様子で口を開いた。

「1-0で試合を締め切れないのは2年前にJ2に落ちた原因でもある。それを引きずっているようでは力不足。J1の順位で言うと、自分たちは20位なんだと痛感した」

 後半17分の先制点でリードしながら、試合終了間際の後半45分に失点。引き分けでは3位に転落し、昇格プレーオフに回ることになる。絶望の淵に足を踏み入れたかに思われた直後の後半アディショナルタイム、MF小林祐希の劇的ゴールで2-1と勝ち越し、3年ぶりのJ1復帰を果たした。

「まだゴールじゃない。J1でどう戦うかにフォーカスしているし、これからが茨の道。ただ、今日ばかりは31人の勇者たちは素晴らしい試合をしたと称えたい」。42歳の指揮官はそう言って、ようやく選手たちをねぎらった。

 試合後、現役時代の背番号と同じ「7」回、胴上げされた。「優勝もしてないのに胴上げは必要ないと言ったけど、選手の気持ちはありがたかったし、数々の言葉の暴力をかわしながら成長していってくれた」。そうジョークをまじえて感謝し、宙を舞っているときの心境を語った。

「現役を引退したときもしてもらったけど、胴上げ自体、気持ちがいいもの。宙に浮きながら、選手の顔、サポーターの顔を思い出して、気持ちよく浮かび上がっていました」

 昨年9月、シャムスカ前監督の後任として磐田の監督に就任した。リーグ4位で出場したJ1昇格プレーオフ準決勝の山形戦。後半アディショナルタイム、山形GK山岸範宏にまさかの決勝ヘッドを決められ、就任1年目でのJ1復帰を逃した。この日も1-0の後半45分に大分MFパウリーニョの豪快ミドルが決まり、1-1の同点に。一瞬、1年前の悪夢が蘇った。

「パウリーニョのあのシュートが入った時点で、自分は“持ってないな”と思った。昨年の山岸のシュートもそうだし、スーパーゴールが最後の試合でポンポンと2回も入る。“俺は持ってないな”と実感している」。冗談めかしながらも、その直後に勝ち越しゴールを奪った選手たちの成長も実感している。

「(点を)失ったあと、宮崎がゴール前ですぐにボールを拾って、上田が前をサポートして、小林と森島が突っ込んでいく。まだ終わってない、まだ時間はある。その姿勢は昨年と違った。(昨年は)山岸のゴールのあと、全員がうなだれて、ピッチにひれ伏すような態度を取った。どれだけ言葉で伝わったか分からないけど、昨年の反省、昨年の悔しさを生かしてくれたのではないかと思う」

 リーグ優勝3度の実績を誇るサックスブルーの名門が、来季は3年ぶりにJ1の舞台に戻ってくる。しかし、指揮官は過信することなく、謙虚に言った。

「(昇降格を繰り返す)エレベータークラブにならないことが目標。J1で見てもらいたい選手がたくさんいるのは確かだが、J1に殴り込んでやろうなんて気はさらさらない。1年、2年と言わず、何十年もJ1でやっていけるようなクラブにしたい」

 かつてピッチ上で華麗にタクトを振るったレフティーが今度はベンチに座り、J1の舞台でどんな采配を振るってくれるのだろうか。

(取材・文 西山紘平)
●[J2]第42節 スコア速報

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