唯一出場のないU-23代表GK牲川…悔しさ滲ませるも「あいつの方が絶対に悔しいはず」
ゲキサカ / 2016年1月24日 7時39分
一人だけピッチに立っていない。グループリーグで唯一出場のなかったU-23日本代表GK牲川歩見(鳥栖)は「当然、悔しい」思いをしている。しかし、自分以上に悔しい思いをしている選手がいることを考えると、ここで腐ることなどできない。たとえピッチに立つ機会が訪れなくても、五輪出場のために自分がやるべきことをやると決意している。
15年12月18日に発表された最終予選メンバーに、牲川の名前は入っていなかった。残り2枠は後日発表されることになったが、GKは3名が選出されており、牲川は事実上の落選に。「選ばれなかったのには、自分でも心当たりがありました。僕はJ3の試合に出たときにもあまり良いパフォーマンスができなかったし、結果を残せなかったので納得している部分もありました」。自身のパフォーマンスを考えれば落選も仕方なかったと言う。
しかし、最終メンバーに選出されたGK中村航輔(柏)が負傷したことで、牲川は追加招集される。無念の負傷離脱となった中村から言葉を掛けられた牲川は、やらなければいけないという使命感に駆られた。だからこそ、グループリーグ3試合での出場はなく「悔しい」と語りつつも、「あいつの方がもっと悔しい思いをしている」と中村を思う。
「航輔からは『頑張れよ。絶対に五輪を決めてくれ』と言われました。もちろん試合に出られなくて悔しいですが、僕よりも航輔の方が絶対に悔しい思いをしているはずです。またライバルとして戦えるように、僕はしっかりと結果を持ち帰らないといけません。絶対に五輪に出場しないといけないと思っています」
ピッチ上でチームに貢献できる機会は限られるかもしれない。しかし、選手である以上、「しっかりと準備をする。23人の1人として試合に向けて準備をするのは、プロとして当たり前のこと」と当然、試合に向けての準備は怠らない。
そして仮にベンチを温める時間が長くなろうとも、「悔しい気持ちは自分の中に留めて」、ピッチ外でできるべきことをして、チームを盛り上げようとしている。「GK3人での練習の雰囲気の良さがフィールドプレーヤーに伝われば、チーム全体が良い雰囲気になると思っています。雰囲気が明るくなるように、練習でもコーチングやコミュニケーションの部分をしっかりとやっていきたい」。すべては五輪出場のため、そしてこの場に来れなかったライバルと再びポジションを争うために最終予選突破を目指す。
「23人の1人」として調整を続ける牲川が、何よりもチームとして「一緒に戦っている」と感じる瞬間がある。グループリーグ初戦・北朝鮮戦で今大会初ゴールを奪ったDF植田直通(鹿島)が真っ先にベンチに駆け寄って喜びを分かち合って以降、恒例となったゴール後の一場面。「悔しい思いをしている選手がベンチでは多いですが、ゴールを奪った選手がベンチに来てくれて喜びを分かち合う瞬間、自分たちも一緒になって戦っているのだと思えます」。負けたら終わりの決勝トーナメントは22日に幕を開ける。たとえピッチに立つことがなくても、牲川はチームメイトととも勝利だけを目指して戦う。
(取材・文 折戸岳彦)
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