「スポーツライター平野貴也の『千字一景』」第26回:U-23新設の刺激に応える一撃(C大阪U-18)
ゲキサカ / 2016年4月14日 20時57分
“ホットな”「サッカー人」をクローズアップ。写真1枚と1000字のストーリーで紹介するコラム、「千字一景」
意地で手にした勝ち点3だった。勝って喜ぶセレッソ大阪U-18は、主力2人を欠いていた。今季から新設され、J3に参戦しているU-23チームに合流しているためだ。4月9日、ユース年代最高峰の高円宮杯U-18プレミアリーグが開幕した。C大阪U-18は、大分U-18に一時逆転される苦しい展開から追いつき、終了間際にU-19日本代表の左DF舩木翔が「振り抜くことだけ考えて」決めた一撃で3-2の逆転勝利を飾った。確かに勝ったが、苦しんだ。最も長い準備期間がある開幕戦にも関わらず、連係はたどたどしかった。準備期間に多くの選手がU-23の練習に参加していたためだ。
クラブは、トップチームで出場機会の少ない選手と、育成組織で能力の高い選手に新たな実戦の場を与えるためにU-23を立ち上げた。実戦経験を積めるメリットがある一方で、掛け持ちをする選手や、彼らを擁するU-18チームの調整は難しくなる。U-18の村田一弘監督は「U-23に参加できない、参加したけど出場できないということで選手は悔しがっている。良い経験だと思う。チームとしては、開幕に向けた準備をせず、U-23で通用するためのベース作りをしていたので完成度は低いが、優勝だけが目標ではないので焦ることはない。ただ、練習の積み上げはまだ難しいところがあるので、指導陣が連絡を密にしてレールを作っていかないといけない」と新たな刺激の効果と現状の課題を話した。
難局の中で、選手はもまれ、強くなる。決勝点を挙げた舩木は、U-23でベンチ入りしたが、出場時間はわずか5分。だからこそ「U-23ではベンチでアップをしているだけで終わってしまう。(斧澤)隼輝と(森下)怜哉は試合に出ているし、自分もという気持ちはある。でも、もっと成長しないと、あの世界では出来ないことが多い。U-23、U-18、代表といろいろなやり方があり、対応の難しい部分はある。(ベンチ入りが増えると)試合感がなくなることも課題。でも、その中で対応できないと良い選手になれない。今日は、2人がいないからこそ、絶対に勝ちたかった。あの2人がいないから、と言われるのは嫌。U-18で結果を残せば、U-23でチャンスが来るはず。だから、練習と試合で100%の力を出し切ることをやって行きたい」と闘志を燃やしていた。
U-18の戦力は落ち、チーム内の理解度を高めることも難しく、選手は自分のやるべき仕事が増えて行く。U-18のトップ選手は、刺激あふれる難局を乗り越えられるか。その問いに対する宣戦布告のような、終了間際の一撃だった。
■執筆者紹介:
平野貴也
「1979年生まれ。東京都出身。専修大卒業後、スポーツナビで編集記者。当初は1か月のアルバイト契約だったが、最終的には社員となり計6年半居座った。2008年に独立し、フリーライターとして育成年代のサッカーを中心に取材。ゲキサカでは、2012年から全国自衛隊サッカーのレポートも始めた。「熱い試合」以外は興味なし」
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