憲剛の最新本を立ち読み!「史上最高の中村憲剛」(15/20)
ゲキサカ / 2016年4月30日 12時47分
川崎フロンターレのMF中村憲剛の南アフリカW杯から現在までの5年半を描いた『残心』(飯尾篤史著、講談社刊)が4月16日に発売となった。発刊を記念しゲキサカ読者だけに書籍の一部を公開! 発売日から20日間、毎朝7時30分に掲載していく。
「なんで、ニッポンにいないの?」<上>
日本代表から外れた中村だったが、ゴール嗅覚はさらに研ぎ澄まされていった。
8月10日、J1第20節・FC東京戦の後半1分、大久保嘉人のヘディングシュートをゴールキーパーが弾き、ポストに当たったところを中村が右足で押し込んだ。
「いつもならもう少し組み立てに参加するけど、今日はチャンスが作れていたからエリアの中で待っていた。来そうだなと思っていたら、目の前にこぼれてきた。あそこにポジションを取れるようになったのが、進歩したところ」
8月17日、J1第21節・ヴァンフォーレ甲府戦の後半15分、森谷賢太郎のロングフィードを大久保が落とすと、走り込んできた中村がやや遠目からミドルシュートを突き刺した。
「“打ってください”っていう落としだった。周りの状況が全部見えていたから迷いはなかった。迷いがないときはだいたい入る。点を取ることでチームに貢献する喜びを知れてよかった」
8月28日、J1第23節・大宮アルディージャ戦の前半3分、森谷のフィードに反応してゴールに迫り、飛び出してきたゴールキーパーの鼻先でボールを浮かし、ネットを揺らした。
「飛び出したときは初めて見た景色だったけど、ゴールキーパーと1対1になったときは落ち着いていました。トップ下はやっぱり点を取らなければいけないポジションだから」
9月14日、J1第25節・サンフレッチェ広島戦の前半10分、ペナルティエリア右隅に飛び出すと、クロスに備えてゴールキーパーが前に動いたのを見逃さず、ゴールキーパーと右ポストとのわずかな隙間を射抜いた。これには、日本代表の西川周作もお手上げだった。
「マイナスのパスか、ニアを抜くか、瞬時のイマジネーション。キーパーはマイナスに意識がいくかなと思ったら、空いていたので打ちました。シュートを打たないと始まらないので」
意識の変化は、彼が口にする言葉にも表れていた。
ゴールを奪うコツをつかみ、その快感にも目覚め、トップ下でのプレーを謳歌しているようだった。中村は、トップ下でのプレーを完全に自分のモノにしていた。
(つづく)
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