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[SEVENDAYS FOOTBALLDAY]:長いトンネルのその先に(成立学園・矢田部竜汰)

ゲキサカ / 2016年4月28日 10時2分

 忘れられない試合がある。2015年11月8日。舞台は味の素フィールド西が丘。ファイナル進出を巡って國學院久我山高と激突した高校選手権東京予選準決勝。0-0で推移していた後半に均衡は破れる。エリア内で成立学園の選手にハンドがあったというジャッジを主審が下し、PKが与えられた。結果的にこのPKで挙げた1点を守り切り、そのままファイナルも制した國學院久我山は全国準優勝まで駆け上がる。「久我山戦は自分がハンドして幕を下ろしてしまったんです」とその試合を振り返るのは矢田部。もちろん不可抗力であったのは間違いないが、残酷過ぎる結末に2年生の彼を絶望的な感情が襲ったのは容易に想像できる。

「西が丘のこともあって『今年こそは』という気持ちはあったんですけど、逆にそこで色々想う所があって」なかなかパフォーマンスが上がらない。新チームの立ち上げ時こそレギュラーを務めていたが、「自分の中でも『出られるんじゃないか』という甘い考えもあったので、そこから徐々にモチベーションが落ちてしまったり、うまく行かない時期が長かったですね」と話してくれた矢田部は、ポジションを失いつつあったこの数か月を自ら『長いトンネル』と表現した。そんなトンネルの中で迎えた重要な一戦はセンターバックでの出場。それでも、起用してくれた指揮官の期待に応えるために、そして何より自分の価値をもう一度はっきりと示すためにピッチに立った矢田部は、1つの答えをそのピッチで見つけ出す。「自分なりに悩んできた時期も長かったですけど、今日は自分のプレーができたので、やっと『長いトンネル』を抜けられたかなという感じです」。苦悩の日々を過ごしてきた“センターバック”は、そう言って最後に笑顔を浮かべた。

 まだ結果を出したのは1試合だけだということは自分が一番よくわかっている。本人も「今後も与えられたポジションを全力でこなすだけなので、どっちでもできるように準備はしていきたいです」と兜の緒を締め直す。ただ、おそらくどちらのポジションで起用されたとしても、彼のプレーに迷いはないだろう。『長いトンネル』を抜け出したその先にある景色は、『長いトンネル』を潜り抜けた者だけにしか見えないはずだ。その景色にようやく辿り着いた矢田部の腹は、きっともう据わっている。

(※写真は15年)

■執筆者紹介:
土屋雅史
「(株)ジェイ・スポーツに勤務し、Jリーグ中継を担当。群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。著書に「メッシはマラドーナを超えられるか」(亘崇詞氏との共著・中公新書ラクレ)。」


▼関連リンクSEVENDAYS FOOTBALLDAY by 土屋雅史

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