憲剛の最新本を立ち読み!「史上最高の中村憲剛」(18/20)
ゲキサカ / 2016年5月2日 7時30分
川崎フロンターレのMF中村憲剛の南アフリカW杯から現在までの5年半を描いた『残心』(飯尾篤史著、講談社刊)が4月16日に発売となった。発刊を記念しゲキサカ読者だけに書籍の一部を公開! 発売日から20日間、毎朝7時30分に掲載していく。
盟友のラストゲーム<下>
「完全に火がついて、モチベーションはマックスでした」
横浜F・マリノスのボールになれば必死の形相でプレッシャーをかけにいき、中村俊輔がボールを持てば、正確なパスを繰り出させまいと、厳しく体をぶつけにいった。
前半21分にはドリブルで右サイドを駆け上がって、ペナルティエリア内に切れ込んでいき、27分にはゴール前の混戦に突っ込んでいき、倒れ込みながらも中澤佑二からボールを奪って、右足でシュートを放った。
「これまでもサポーターのために、チームのために、という気持ちでプレーしてきたけど、ここまで人のために走ったのは初めてかもしれない、っていうぐらい頑張りました」
監督の風間八宏も「初めて見た」と驚くほどの憲剛のハードワークが、0-0で推移していたゲームをついに動かす。
後半9分、フロンターレ陣内の右サイドでボールを持った中村俊輔がカットインしようとしたところに、自陣の深くまで戻っていた憲剛が襲いかかる。日本代表で何度も一緒にプレーした間柄である。憲剛の頭には俊輔の癖が刷り込まれていた。
<俊さんは、絶対にボールを左足に持ち替える>
読みどおりだった。
俊輔とボールの間に体を滑りこませて奪い取った憲剛は、ドリブルで運び、ヒールパスでレナトに預けると、猛然とダッシュする。ペナルティエリア手前で大島僚太のパスを受け、左サイドの大久保嘉人にボールを送る。
大久保の渾身のブレ球シュートはゴールキーパーに弾かれたが、こぼれ球を拾った大島がゴール前にボールを送ると、レナトが豪快に蹴り込んだ。
フロンターレが先制!
憲剛がボールを奪ってから15秒。流れるようなカウンターだった。
レナトは一目散にバックスタンドのサポーターの元に駆けて行く。
ベンチ前では監督の風間が「よっしゃー」と叫び、スタッフとハイタッチを繰り返していた。
フロンターレがリードしたまま、ゲームは終盤を迎えた。
41分、F・マリノスはセンターバックの栗原勇蔵を前線に上げて、ロングボールを放り込む強引な攻撃に打って出た。
すかさず、フロンターレのベンチが動いた。呼ばれたのは、伊藤宏樹だ。
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