「東京五輪への推薦状」第14回:「ククッと行ってスルスル抜ける」。“上州の小虎”FW飯島陸は大きく育つ
ゲキサカ / 2016年5月1日 16時20分
2020年東京五輪まであと4年。東京五輪男子サッカー競技への出場資格を持つ1997年生まれ以降の「東京五輪世代」において、代表未招集の注目選手たちをピックアップ
鋭い左足シュートが突き刺さる。「あれ? 左利きだったのか」。コースを射抜く右足シュートでネットが揺れる。「おや? やっぱり右利きかな」。ボールを持つ素振りをじっくりと見直して、ようやく右利きだと思い直す。体は小さいながら、簡単にマークの一枚をはがしてしまうドリブルのキレも目を見張るものがある。それが前橋育英高FW飯島陸のファーストインプレッションだった。
多くの好選手を輩出してきた埼玉の江南南サッカー少年団、クマガヤサッカースポーツクラブの出身で、持ち前の鋭いドリブルはそこで磨かれたもの。「ドリブルは、ちょっと得意です」と本人のコメントは控えめだが、前橋育英の名伯楽・山田耕介監督は「切れ味がいい。ククッとかわして、スルスル行けちゃう」と、その突破性能を高く評価している。今年、2年生ながら名門の背番号10を託したのも、期待の表れだ。
もっとも、こちらが感心したフィニッシュの上手さについて本人は「全然ダメ」と、まるで満足した様子はない。「もっと精度を高めないといけない。スピードと体力は自信があるけれど、シュートはまだまだ」と強調する。1年生だった昨年は試合に絡めず、「下のカテゴリーでやっていて本当に悔しかった」と、自主練習でシュートを蹴り込み続けた。その成果が「出ている感覚はある」としながらも、やっぱり「まだまだ」と付け加えるのも忘れない。イメージしているプレーモデルはもっと上なのだ。
参考にしているのは、日本が誇る小柄なストライカーたち。佐藤寿人と柿谷曜一朗だ。佐藤の裏への抜け出しの上手さや柿谷のファーストタッチの妙に心を躍らせつつ、自分のプレーと重ね合わせて研鑽に励んできた。「苦しい試合で点を取れてこそストライカーだと思っている」と語る好手は、「日本代表に入って活躍すること」を目標に掲げる。
まだまだレギュラーをつかんだばかりで、日の丸を背負うには足りていない部分はある。ただ、「真面目に努力する子。すごく楽しみ」と山田監督が語るように、元々のセンスに加えて向上心と研究心にあふれた選手だけに、「可能性」はある。今年1年、全国制覇を狙う名門の中でもまれる中で、この素材がどこまで成長するのか。楽しみにしておきたい。
執筆者紹介:川端暁彦
サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』元編集長。2004年の『エル・ゴラッソ』創刊以前から育成年代を中心とした取材活動を行ってきた。現在はフリーランスの編集者兼ライターとして活動。『J論』( http://j-ron.jp/ )編集長を務めているほか、ライターとして各種媒体に寄稿。著書『Jの新人』(東邦出版)。▼関連リンク東京五輪への推薦状 by 川端暁彦一覧へ
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