[総体]リスク上等のハイライン戦術で正智深谷を完封!本格強化11年目の聖望学園が全国初出場!:埼玉
ゲキサカ / 2016年6月20日 19時17分
[6.19 高校総体埼玉県予選準決勝 正智深谷高 0-0(PK1-3)聖望学園高 埼玉第2G]
平成28年度全国高校総体「2016 情熱疾走 中国総体」サッカー競技(広島)へ埼玉県の出場枠は2つ。必然的に県予選準決勝が「代表決定戦」となる。その準決勝第1試合まで勝ち残ってきたのは、FWオナイウ阿道(現千葉)を擁して全国4強まで駆け上った13年以来の出場を狙う正智深谷高と、初出場を狙う聖望学園高。一進一退の攻防は最後まで決着付かず、0-0からのPK戦の末に聖望が全国切符をつかみ取ることとなった。
「いや、正智深谷さんは本当に強かったですよ」
激闘を振り返った聖望・山本昌輝監督はそう言った上で「勢い任せで勝っただけ」と謙遜の言葉を続けたが、勢い「だけ」で勝てるような相手でもないだろう。何せ関東大会埼玉県予選では0-4で惨敗している相手でもある。試合を観ていても個々の身体能力に差があるのは明らかで、恐らく「普通」にやっていたら勝ち目はなかった。
聖望がこの総体予選で採用していたのはリスク上等の大胆不敵なハイライン戦術。4枚のDFラインをしっかりそろえて戦い位置に構えて積極的にオフサイドを狙っていく。オフサイドルールが攻撃側有利に改正されてからは余り見なくなった戦術だが、「相手のFWを少しでもゴールから遠ざける」(山本監督)狙いもあった。
もっとも、実はこの戦術、「大会前から取り組み始めた」(DF陸田瑛星)という急ごしらえ。最終ラインの4人とGKの山田浩希は居残り練習も重ねながら、「とにかくラインを合わせる練習はやり続けました」(陸太)。裏を狙ってくる相手と駆け引きしながら、勇気を持って押し上げる。時にはラインを破られることもあったが、それでもハイラインをキープすることをやめなかった。特に前半で大量のオフサイドを取れたのは、正智深谷の出鼻をくじく効果があった。陸太は「(裏を取られるのは)本当に怖いですよ。『ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい』と思いながら、ラインを上げていました」と苦笑いも浮かべながら、試合を振り返った。
正智深谷も徐々に聖望の戦い方に適応し、MF小山開喜の巧みなパスワークも交えて両翼の突破を使って好機も作った。繋ぐ意識が強い聖望DFに対してのハイプレスも効果的で、高い位置でのボール奪取から決定機を作ったのも1度や2度ではない。だが、聖望GK山田浩希の好守に阻まれ、ゴールならず。結局、スコアボードの数字は一度も動かず、総体出場権の行方はPK戦にて決することとなった。
このPK戦でより大きなプレッシャーがかかったのは正智深谷だったか。1番手と3番手のキッカーが枠を外し、4番手のシュートもGKに防がれて万事休す。聖望も一人が失敗して、トータルスコアは3-1。山本監督が就任し、本格的な強化を開始して11年。「最初は部員が6、7人しかいなかった」という状態から地道に強化を続けてきた聖望が、初めての全国切符を勝ち取った。「埼玉で一番を目指すということは、全国で一番を目指すということ」との方針を掲げてきたチームが、ついに全国舞台に立つ。
(取材・文 川端暁彦)▼関連リンク
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