[EURO現地レポート]激闘のイタリア対スペイン…記者席でのもう一つの“闘い”
ゲキサカ / 2016年6月29日 12時20分
EURO2016もいよいよベスト8が出そろった。アイスランドの劇的で感動的な逆転勝ちをはじめ、決勝トーナメント1回戦はどれも面白い試合ばかりだったように思う。
27日にはイタリア対スペイン、イングランド対アイスランドの2試合が行われた。前者は前回大会決勝の再現という屈指の好カードで、パリ近郊にあるサンドニでの開催。後者はイングランド優位という見立ては否めず、場所もニース。ニースという響きは良いが、仕事をしての長距離移動は気が重い。そう考えた報道関係者が多かったのか、サンドニでは「記者が多いからスタンドの席を割り振れない可能性がある」という異例の事前通告があった。開幕戦でもそんなことはなかったのだが、実際、この日はスタンドに入れず、記者室でテレビ観戦せざるを得なかった同業者もいた。
一方、街中や電車内のサポーターの数はといえば、英国勢やスウェーデン、スイス、オーストリア、ドイツあたりと比べると、非常に少なかった。パリのファンゾーン(ベニューごとに設置されたパブリックビューイング会場で、パリはエッフェル塔の真下にある)周辺にも、さほどユニフォームを着た人の姿はなかった。ちなみに試合後の深夜にパリ中心部を歩いていても、酔っ払って騒いでいるのはイングランドのユニフォームを着た人がほとんどだったのだが、サンドニのスタンド自体は非常に盛り上がっていた。私が今大会で見た試合の中でも最も熱気に満ちていた。どちらかといえば、イタリア寄りの空気が強かったのではないだろうか。
私に割り当てられた席の1列前には、イタリアとスペインのチームスタッフが座っていた。6人用の長机で、左の3人がスペイン、右の3人がイタリア。おそらく広報の中でもウェブを専門にするスタッフのようだった。試合前の国歌斉唱ではそれぞれ3人ずつで肩を抱き合い、しっかりとピッチを見つめていた。曲が終われば目をつむり、胸の前で十字を切って硬く握手。そんな光景を目の前で見て、試合前からグッときてしまった。
一番面白かったのは、後半アディショナルタイムにイタリアが追加点を挙げたときだった。私の前にいたイタリアのスタッフは、ベンチ前で喜びを爆発させている選手・スタッフと同じように、記者席で大声をあげ、階段を走り出した。スペインのスタッフは横で沈黙。それでも、試合終了のホイッスルが鳴ると、先に握手を求めたのはスペインのスタッフのほうだった。
悔しさを隠しながらの“大人の対応”。そんな光景に心温まっていると、その後、テレビで見たニースの試合ではアイスランドが奇跡を起こしていた。日に日に試合は面白くなるが、大会がフィナーレに近づいていることの証でもあり、ちょっと寂しい気持ちにもなった。
(取材・文 了戒美子)
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