[MOM1836]流通経済大柏MF関大和(3年)_青森山田の中盤封鎖したキャプテン、決勝出場停止も歓喜の涙
ゲキサカ / 2016年8月1日 19時28分
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[8.1 全国高校総体準決勝 青森山田高 1-2 流通経済大柏高 広島広域公園補助競技場]
タイムアップのホイッスルが鳴り響いた瞬間、左腕にキャプテンマークを巻く、流通経済大柏高MF関大和は大粒の涙を流した。
彼はこの試合の前半15分にイエローカードを受け、青森山田高を下しても、累積警告のために決勝には出場出来なくなっていた。この涙は決勝に出場出来ない悔しさの涙も有るのではと思ったが、試合後の彼に話を聞くと、そうではなかった。
「プレミア開幕で0-3で負けていたので、ここできっちり勝てたことが嬉しかった。優勝というチームの目標に一歩近づけたことが何より嬉しかったんです」。攻守の要として、キャプテンとして、自己犠牲を続けて来た彼だからこそ、チームに対する熱い想いの現れであった。
彼がキャプテンマークを任されたのは、全国高校総体予選前のことだった。今年に入って3度目のキャプテン交代。「なぜ自分が? と思ったのですが、本田裕一郎監督やコーチの方から、『チームが沈んでいるから、元気をもたらして欲しい』、『元気にしてくれ』と言われたので、自分がやるべきと思って引き受けました」と語ったように、交代を告げられた時、チームはプレミアリーグEASTで開幕から未勝利で最下位に定着し、チーム全体が暗くなっているときだった。
だからこそ、チームに活気を取り戻すためにどうすべきかを、彼は考えた。すると答えが自然と見えて来た。「もともと積極的に声を出すタイプではなかったし、今年もプレミアEASTの開幕戦はベンチ外だった。試合に絡めていない状態から、徐々に絡めるようになって行くうちに、『自分がこの状況を何とかしたい』と思うようになったんです。それでキャプテンに任命をされて、もっとチームのために自分が黒子でいいから、裏方に徹したいというか、地味でもいいので、チームに貢献したいと思うようになったんです」。
ボランチとして惜しみない運動量で広範囲をカバーし、相手の選手に気迫で食らいつく。この日は中盤で攻守において光るプレーを続けた。青森山田のキーポイントであるMF住永翔、MF高橋壱晟、MF郷家友太のトライアングルを見事に封鎖。出足のいい潰しで相手のパスワークを封じ、またセカンドボールの回収、全体のバランスを取ったポジショニングを見せたMFは、攻撃面でも間延びした相手のスペースを巧みについてボールを動かしていた。
元々彼は攻撃が好きな選手で、「守備はちょっと苦手だった」と話すが、担った重責が彼のプレースタイルをも変化させたことで、チームの状況は右肩上がりに好転して行った。全国高校総体出場、プレミアリーグ今季初勝利、そして今回の決勝進出。今大会の準々決勝では今や守備の要になりつつある、1年生CB関川郁万が負傷欠場したため、代わってCBとして無失点勝利に貢献するなど、試合をこなすごとに大きな存在感を放って行った。
だが、決勝の舞台に彼はいない。それでも、「大丈夫です。みんなが『俺たちに任せろ』と言ってくれたので。そこは信じています」と話すその表情は、涙が乾き、笑顔が浮かんでいた。もう彼の中には後悔は無い。キャプテンとして、ピッチ外でチームを支える準備はすでに出来ていた。
(写真協力=高校サッカー年鑑)
(取材・文 安藤隆人)▼関連リンク
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