[SEVENDAYS FOOTBALLDAY]:268人の“リーダー”が携える覚悟(駒澤大高・高橋勇夢)
ゲキサカ / 2016年9月15日 18時9分
ところが、8月に入ってもチームの調子は一向に上がらない。フェスティバルや練習試合でも失点が減らず、負けもかさんでいく。一度スタッフからの提案もあって、選手ミーティングを開いたものの、「それでもやっぱりイマイチまとまらないというか、みんな勝とうとはしているんですけど、バラバラな雰囲気があった」と感じていた高橋は、再度選手ミーティングを招集する。トップチームのメンバーが机を丸く置いて円を作り、1人ずつ自分が思っていることを話し出した。「後ろから見ている選手と前から見ている選手で思っていることが違っていることもわかって、『練習の内容1つ1つを大事にしていこう』と話し合えた」と高橋。実りあるミーティングができた手応えは感じていたが、「ミーティング自体は良かったかもしれないですけど、結局それが結果に繋がらないと、ミーティングの意味もなかったことになってしまう」ことも同時に理解していた。“2度目”のミーティング直後に行われたリーグ戦。帝京を相手に前半で3ゴールを奪ったチームは、後半に1点を返されるも、終わってみれば4-1で実に2か月半ぶりの公式戦勝利を手に入れる。その5日後にも今シーズンは2戦2敗だった関東一とリーグ戦で再会を果たし、得点こそ奪えなかったものの、久々の無失点でスコアレスドロー。確実に上り調子と言っていい状態で、シーズン最後の大会を迎える準備は整いつつあるようだ。
高橋には自らの指針となる “リーダー”像を体現していた先輩がいる。昨年度の選手権で最前線から果敢に相手を追い続ける献身的なプレスを貫き通し、開幕戦の阪南大高戦ではゴールも決めてみせた竹上有祥(現・駒澤大)。彼こそが昨年度の3年生の“学年リーダー”でありながら、キャプテンには指名されることのなかった張本人だ。「有祥さんとは個人的にも仲が良くて、去年は彼が苦しんでいるのを見てきましたし、今でも一緒にゴハンに行ったりすると一番応援してくれる存在です」と笑顔を見せた高橋にとって、竹上がキャプテンマークを巻いていたか、巻いていなかったかというのはさしたる問題ではない。むしろキャプテンに指名されなかった悔しさを押し隠し、チームの勝利のために誰よりも走り、誰よりも声を出していたその姿から、『真の“リーダー”とはかくあるべき』ということを教えてもらった。ただ、竹上と同じことはできないし、する必要がないこともわかっている。「自分が目指している所はもちろん有祥さんなんですけど、もちろんそれだけではなくて、その上を目指さないといけないですし、自分たちの目標はやっぱり全国優勝なので、そこを目指す中で『もっと自分の特色があるんじゃないか』という風に思って、それを出すようにしています」と高橋。亀田雄人ヘッドコーチからよく言われているという『組織はリーダー以上にならない』。このフレーズが耳に強く残る。自分の中で竹上の存在を乗り越えた時に、昨年以上の結果へ到達することができると信じて、高橋は日々の練習に取り組んでいる。
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