[選手権予選]2年ぶり全国狙う進学校・松山北、現役続行決断した2人の3年生がチーム支えて愛媛8強入り!
ゲキサカ / 2016年10月16日 7時23分
[10.15 全国高校選手権愛媛県予選2回戦 新田高 2-4 松山北高 北条陸上]
第95回全国高校サッカー選手権愛媛県予選は15日、決勝トーナメント2回戦の残り3試合を行い、新田高と松山北高が対戦。松山北が4-2で勝利し、準々決勝進出を決めた。
松山北は生徒の半数以上が国公立大への進学を狙う進学校。準優勝で終えた県総体後に主将のFW村上拓ら3年生の大半が引退し、1、2年主体のチーム作り余儀なくされた。「チームとしても個人としても夏前よりも相当落ちる」(渡部晃久監督)ことに加え、初戦で当たることになった新田は「ここ2、3年、公式戦で勝てていない相手。特に今年のチームは戦力的にも上」(渡部監督)で、組み合わせが決まってからは一戦必勝を狙い、対策を講じてきたという。
攻略法の一つは新田が繰り出すパワフルな攻撃封じ。主将でCBの片本貴久が入れるロングボールを合図に佐伯雄斗と岡野貴輝の2トップが積極的に放つシュートを松山北はCB黒河友貴らが身体を張ってブロック。セカンドボールを亀山師温と福田祐真のダブルボランチがきっちり拾った。もう一つの攻略法は先制点をいかに奪えるか。「先制点を獲れないと勝てないと思っていたので、立ち上がりの10分で奪いに行こう」(渡部監督)との狙い通り、ボール奪取から素早く攻撃に転じた。
ここで見せ場を作ったのは夏以降も現役続行の決断を下した二人の3年生。まずは前半5分に左からのパスを右SBの黒田琉晟が中央に絞って受け、素早くPA左に戻すと、最後は主将を務める3年生MF稲井雄大が右足シュートを叩き込み、先制に成功した。14分にはもう一人の3年生が歓喜を呼び込む。左SB徳永大造、稲井と左サイドを繋いで、ゴール前に入れた低いクロスをFW串部太一がダイビングヘッドで合わせて、加点した。後半2分にも稲井のFKから串部がヘディングシュートを叩き込んでリードを3点差まで広げたが、以降は運動量が落ちたため、新田に後半だけで16本ものシュートを受け、2点を献上してしまう。それでも、松山北は途中出場のFW友近圭貴が後半18分に得点をマークし、最終スコアは4-2でタイムアップ。要所をきっちり抑えた松山北がベスト8に名乗りを上げた。
「うちのチームとしては重大な決断。相当な覚悟を持ってやっている」。渡部監督がそう口にしたように3年生の大半が夏以降、受験に専念する中、稲井と串部が下した現役続行という決断は並大抵なことではない。指揮官が「キック精度は愛媛で一番だと思うし、全国でも十分通用する」と評する稲井はチーム史上4度目の出場となった一昨年の選手権のメンバーに入ったものの、出場機会を掴めず、「今度は自分が主力になって選手権に出場したかった」。一方の串部は一昨年の選手権でエントリー外。最終学年を迎えた今年も交代の切り札としての出場がほとんどだったが、「選手として選手権を経験していないし、県総体もギリギリで負けてしまった。どうしても全国のピッチに立ちたかった」と夏以降もチームに残ることを決めた。
稲井は左から放つ正確なキック、串部は身体を張ったボールキープ。二人の存在はチームの戦力としてはもちろん、「二人は俺についてこいというタイプというより、1、2年生の中に入ってイジられるタイプ。二人がいるからチームが良い雰囲気になって、一つにまとまっている」と渡部監督が評するように、精神的にも大きな価値がある。渡部監督からは「1、2年が緊張していたら、3年が支えろ」と言われていた。また、他の3年生からは「苦しい時も、お前らが弱気になったらアカン」と背中を押されていた。この日、息が休まる時間はほとんどなく、耐える時間ばかり。苦しい試合を物にできたのは、心身共にチームを支えた2人がいたからであるのは間違いない。
(取材・文 森田将義)▼関連リンク
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