[MOM1958]ルーテル学院DF島津玲斗(3年)_守って良し、攻めて良し、ルーテル牽引する背番号10のCB
ゲキサカ / 2016年11月21日 11時53分
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.20 全国高校選手権熊本県予選決勝 熊本国府高 1-2(延長)ルーテル学院 うまスタ]
鮮やかな一撃だった。延長戦に入り、互いに決め手を欠く展開の中で巡ってきた好機。ルーテル学院高はその前半6分に右斜め45度の位置でFKを獲得すると、主将のCB島津玲斗(3年)、FW伊藤連(3年)、左SB徳永敦優(1年)、右SB江崎巧朗(2年)がボールの前に立つ。そして狙いを確認すると、島津、伊藤がボールをスルーし、横に走り出していた江崎に徳永がパス。これをダイレクトで前方にボールを流し、「走った時に自分にマークが付くと思っていたのですが、ボールを追いかけるとフリーになっていた」という島津が受ける。そして、相手DFに当たりながらも左足で決勝弾を叩き込み、ルーテル学院は5年ぶりの選手権出場を決めた。
殊勲のゴールを決めた島津は、「あれは監督が考えたプレーだった」と明かす。元々、今年のチームは高さのある選手がおらず、創意工夫をすることが必要だった。そのため、選手の案から二つ、監督の案から一つ、毎試合ごとにサインプレーを準備。今回行ったプレーは準決勝の大津高戦から用意をしていたモノだったが、披露する機会がなく決勝戦まで温めていた秘策だった。しかし、練習で成功したことはなく、大一番での使用をためらうところもあったが、「今までは焦ってしまっていた。今回はゆっくり確認をしたら、結果として今回はゴールに繋がった」(島津)。
仲間とのサインプレーをきっちりと決め切った島津だが、それ以外でも献身的なプレーを見せて最後までチームを牽引。特に守備では率先して身体を張り、171cmと高さで勝負が出来ないながらもタイトなマークで相手の攻撃を跳ね返した。そんな彼がCBの位置に入ったのは今大会の直前。元々、サイドハーフや右SBを努めていたが、守備の再構築を考えていた小野秀二郎監督が「やっぱり最後はあいつに締めてもらうしかない」と決断して背番号10のCBが誕生することになった。ただ、中学校時代はCBを生業としていただけに、突然のポジション変更にも島津が戸惑うことはなかった。自らの武器であるキック精度も、「CBでボールを持つと、後ろからプレスに来ない。だから、全体がよく見えるので前に配球することが楽しかった」(島津)とより生きるようになった。
「今まで苦しいことは沢山あったのですが、チームをまとめてきてこういう舞台で仲間と一緒にサッカーをすることが出来た。メンバーに入れなかった選手もいるのですが、ゴール裏にいましたし、メインスタンドにも応援してくれている人が沢山いた。なので、その人たちの想いも背負って戦い抜こうと思っていた中で自分が決めて勝つことが出来て嬉しい」と試合後に頬を緩めた背番号10。今年は熊本地震に見舞われ、過去に体験したことがない難局も味わった。それでも、「学校も被災して、僕はボランティアとして学校にいって手伝いをやっていた。図書館の本とかも全部倒れていたので戻すのを手伝いましたし、避難所の人には水を持っていった」(島津)と言うように、出来ることを率先して行い、メンタル的な強さを身に付けた。その中で掴んだ選手権出場。「親を全国大会に連れて行きたかったのでそれも叶った。全国での目標を新たに作って、しっかり全員でやっていけるようにして、悔いが残らないように戦いたい」と話す男は全国大会でも攻守に躍動することを誓う。
(取材・文 松尾祐希)▼関連リンク
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