ユース取材陣注目の“選手権ブレイク候補”vol.1_FW堤原翼(京都橘高)「もう一人のエース」
ゲキサカ / 2016年12月22日 7時34分
U-19日本代表のFW岩崎悠人ばかりが注目される京都橘高だが、もう一人の実力者がいる。それは背番号11を背負うFW堤原翼だ。強引なドリブル突破が持ち味で、1年時から出場機会を掴むと、初めての全国大会となった一昨年度の選手権では、水戸啓明高との初戦で得点も記録。その馬力とスピード感溢れるドリブルは警戒されていても、簡単には止まらない。今回の選手権予選でも初戦から4試合連続でゴール。個で打開し、得点もできる実力派だ。これまで岩崎の陰に隠れがちだったが、要注目アタッカーの一人であることは間違いない。
個人としてだけでなく、二人組の練習を行う時は常にパートナーを組むほど仲が良い岩崎との息の合ったコンビネーションも魅力の一つだ。岩崎が年代別日本代表の活動で不在となった近畿総体では普段、岩崎がつける7番を堤原が背負ったように二人の関係は特別。AFC U-19選手権を終え、疲労困憊の状態で選手権予選に挑んだ岩崎について聞かれた際は、「僕が支えないといけないと思った」とまるで“夫婦”のような発言もしていた。実際に岩崎が戻ってすぐ馴染めるようにチームで起きた出来事を事あるごとに報告するなど献身的にサポートを行った。もちろん相棒に対する思いは一方通行ではではない。初戦で当たる市立船橋について岩崎に尋ねれば、「原輝綺と杉岡大暉は手強い相手だと思うけど、あっちは試合でコンビを組んだのは2年生からまだ2年くらい。でも、僕と翼は高校3年間ずっと組んでいますから」と笑いながら、コンビ仲と連係の深さを強調する。
堤原には、自宅に帰ってからも良きライバルがいる。それは双子の兄、翔だ。小学校の頃は同じチームでプレーした二人は、切磋琢磨しながら同じボールを蹴っていたが、中学への進学をきっかけに二人は別の道を歩むことになる。揃って、ガンバ大阪ジュニアユースのセレクションを受けたが、翔が合格したのに対し、翼は不合格となり、地元の街クラブ「FCグリーンウェーブ」へ。翼は「翔はガンバに行けたのに、自分は行けなくて凄く悔しかった。兄弟なのにこんなに差があるのかと感じた」と当時を振り返る。
だが、悔しさをバネに練習を重ねた結果、3年時には関西大会に出場。クラブOBのFW仙頭啓矢(来季からJ2京都内定)が羽ばたいた京都橘への進学を掴んだ。高校では地元の公立校へと進み3年間、全国の舞台に立てなかった翔に対し、翼は3年連続で選手権に出場。中学の頃とは立場が逆転したが今でも仲は良く、今年の選手権予選決勝では応援に駆け付ける翔の姿もあった。コンディションが悪い時は米澤監督から「次の試合はこっそり翔を出すから、今すぐ連絡をしろ!」と冗談交じりにハッパをかけられることもある。今の堤原翼があるのは、岩崎だけでなく翔がいたからだろう。
選手権で岩崎への警戒が強まるほど、堤原の負担は軽くなり、大暴れするチャンスでもある。だからこそ、選手権で京都橘が躍進を果たす鍵は、「啓矢クンらの代で準優勝しているので、それ以上を目指したい」と意気込むもう一人のエース、堤原が握っているはずだ。
(取材・文 森田将義)▼関連リンク
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