ユース取材陣注目の“選手権ブレイク候補”vol.5_MF金子大毅(市立船橋高)「この男も、一見の価値あり」
ゲキサカ / 2016年12月26日 7時5分
黒子役と言われることもあるが、とても無視できない存在だ。国内トップクラスの高校で、あっという間に欠かせない選手になった印象がある。市立船橋高(千葉)のボランチを務める金子大毅のことだ。
第95回全国高校サッカー選手権大会で戦後史上最多6回目の優勝と、史上6校目となる夏冬全国2冠を目指す市立船橋は、プロ内定選手が3人、それ以外にもU-16以上の年代別代表経験者が4人と注目選手がズラリと揃う。金子は、その中には含まれないが、チームに欠かせない柱となっている。
特に守備面で堅実なプレーを見せる。気が付けば金子が寄せていて、ボールを奪っていて、攻撃につなげている。試合の中では、そんな場面が多い。中盤の底で起用され、攻撃時は最終ラインまで下がって3バックの中央でビルドアップの役割を担い、守備では空いてしまいがちな最終ラインと中盤の間を的確に埋める。
運動量を落とさない点も魅力だ。県予選の決勝では、ゴールのカバーに入って相手のシュートを弾く好プレーを見せ、さらにセットプレーの流れから的確なクロスを送り込んで決勝点をアシストした。朝岡隆蔵監督は守備能力を評価する一方、県予選後には「本来は、もう1列前で使ってあげたい選手」とも評しており、攻撃時も中盤でプレーできれば、攻守にわたって幅広い貢献ができる選手だ。
昨季からレギュラー格の働きを見せていたが、最高学年を迎えた今季は精神面でも成長を見せている。チームの中心は、ともに1年生の頃から起用されて来たMF高宇洋(G大阪入団内定)とDF杉岡大暉(湘南入団内定)で、金子は彼らに追いつこうとして来た存在だ。
しかし、朝岡監督や主将である杉岡から、味方を動かすマネジメントの部分をもっと担うようにとリーダーシップを求められるようになり、プレー中の姿勢が変わった。MF高は「金子は、夏のインターハイが終わってから、今までよりもチームの中心になっているというか、引っ張ろうという気持ちが出て来ているように感じる」と話した。高、杉岡、そしてU-19アジア選手権で活躍したDF原輝綺(新潟入団内定)のプロ内定3選手が注目されるが、金子もチームに欠かせない選手の1人であることは間違いない。
金子が台頭したのは、前回大会の県予選だった。出場の機会を得てチャンスをつかみ「去年は、周りに付いて行くだけだった。でも、県予選の中央学院高戦で思わぬ失点をしてしまったり、大歓声で指示が聞こえなくなったりと『選手権は何が起こるか分からない』ことを知った」と振り返る貴重な経験を積んだ。全国大会でも、優勝した東福岡高(福岡)にPK戦で敗れた3回戦にフル出場していた。今季は主力としてプレッシャーや責任を負いながら戦い、全国高校総体の優勝に大きく貢献した。名門・市立船橋で仲間を率いるだけの存在に成長した金子の視線の先は、当然、優勝しかない。
全国高校総体の決勝でも戦った流通経済大柏高を県予選決勝で撃破した後、金子は「本戦(全国大会)がスタート。今度は必ず優勝して終わりたい。11年間なかった県予選2連覇でジンクスを1つ破ることができた。(市立船橋の)歴史に1度もない夏冬連覇を自分たちで作り上げたい」と名門チームの歴史に新たな1ページを加える意気込みを示した。前述の通り、市立船橋には多くの注目選手がいるが、この男もまた一見の価値あるプレーヤーだ。
(取材・文 平野貴也)▼関連リンク
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