[NB×東福岡]選手権で勝つことの喜びと難しさ、両面を知る“赤い彗星”が一戦必勝の姿勢で連覇に挑戦
ゲキサカ / 2016年12月28日 7時0分
1年前、埼玉スタジアム2002で大旗を掲げたのは東福岡高(福岡)の選手たちだった。当時も主力だった現主将のCB児玉慎太郎(3年)が「万単位の観客がいる中でのプレーは初めての経験で本当最高の気分でした。(入場の瞬間)ウォ、ってなって、鳥肌が立ちました。最高の舞台でできた」と振り返る54,090人の観衆の中でのプレーと歓喜。高校日本一を懸けた全国高校サッカー選手権決勝で最高級のサッカーを披露して5-0で勝利した経験を持つ“赤い彗星”が今冬、2連覇に挑戦する。
東福岡は今年、児玉をはじめ、左SB小田逸稀(3年、鹿島内定)、MF鍬先祐弥(3年)、MF藤川虎太朗(3年、磐田内定)、MF高江麗央(3年、G大阪内定)、FW佐藤凌我(3年)と全国優勝の瞬間を埼スタのピッチで迎えた6選手を残している。王者だけが持っている頂点まで勝ち抜いた経験。その経験を多くの選手が持ち、昨年以上とも言われる個が育っている東福岡が今回の選手権も有力な優勝候補であることは間違いない。だが、彼らは経験があるからこそ、勝ち抜くことがどれほど難しいのかを知っている。
史上初の3連覇が注目された全国高校総体では初戦で昌平高(埼玉)に衝撃的な逆転負け。初出場校相手に油断していた訳ではない。だが、前半7分に藤川のゴールで幸先よく先制した東福岡はその後、ペースダウン。気温30度の暑さの中での戦いだけに、試合をコントロールするのは当然の流れだが、追加点を奪えず、徐々に相手に自信をつけさせてしまい、最悪の結果を招いてしまう。児玉は「正直、自分たちが5戦勝ち抜く難しさを知っていたので。1点目取った後にペースを落とした訳じゃないですけれども、若干そういう気持ちがあったと思います」と振り返る。6日間で5試合を勝ち抜く難しさを知っていたからこそ、相手を飲み込むよりも試合をコントロールすることに意識が傾いてしまい、リズムを失ってしまった夏。チームは敗戦から選手間のミーティングを重ね、強い個性たちが連係を高め、共通理解を深めてきた。そして鍬先が「インターハイで痛いほど分かったので目先の相手だけに集中して、全力で戦い抜くってことは本当に大事だと思います」と語ったように、今はどの試合でも目の前の対戦相手を倒すことだけに集中している。
経験者たちの存在に加えて、GK前島正弥(3年)やFW藤井一輝(3年)、MF田尻京太郎(3年)、右SB砂原一生(3年)、MF福田湧矢(2年)、CB阿部海大(2年)らこの1年間台頭してきた選手たちがチーム力を底上げ。選手権の福岡県予選決勝は難敵・九州国際大付高相手に6-0で完勝と強さを見せつけて福岡3冠を達成した。もちろん、今回の選手権も優勝候補。児玉が口にしていたが、彼らは昨年の経験から試合間のケアや1試合1試合の準備の重要性も理解している。そして高江が「(選手権は)他のチームも日頃以上の力を出してくるし、去年とかの先輩たちのおかげで自分たちは東福岡という名前だけで追われるような立場になると思うんですけど、自分たちはどちらかというとチャレンジャーの方なんでそこが難しいかなと思います」と語ったように、向かってくる相手を退ける難しさも知っている彼らは一戦必勝の姿勢で全国へ。福岡県予選終了後、選手たちはまだ昨年の先輩たちのレベルに追いついていないことを自覚していた。ハードワークの面、決定力など選手の口々から出ていた課題を改善して全国に臨む。
今年の最注目選手のひとりである藤川は選手権へ向けて「3年間の集大成っていうのが一番です。2連覇が懸かっているのでそこの自覚をもってしっかりと戦いたいなと思っています」と力を込め、小田は「全国制覇するために東福岡に来たので。去年、自分日本一の景色を見て、もう一回見たいと思ったし、ピッチの中で見ていない人やその時スタンドで応援していた選手もいたと思うので、今年もみんなでそういう景色を見たいから、全国制覇したいです」。5万人超の観衆の中でプレーする興奮と歓喜を今年も。東福岡の3年生たちは、後輩に日本一の景色を見せて高校サッカーから卒業する。
(取材・文 吉田太郎)▼関連リンク
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