[MOM1992]関東一GK北村海チデイ(1年)_「バネが違う」ナイジェリア人の父持つ規格外GKが緊急出場でチーム救うセーブ
ゲキサカ / 2016年12月31日 17時53分
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.30 全国高校選手権開幕戦 関東一高1-0野洲高 駒沢]
出番は突然、訪れた。関東一高(東京B)は後半14分にGK内野将大(3年)が負傷するアクシデント。急きょGK北村海チデイ(1年)がピッチに入った。
まだ1年生。公式戦出場は2試合目。しかも、その舞台はチームとしても初出場の全国高校選手権開幕戦だった。にもかかわらず、自分でも驚くほど緊張はなかった。「正直、ビックリした」という緊急出場だったが、「そんなに緊張しなかった。自分でもそこに驚いている」と北村はおどける。
後半21分にPKで先制すると、その後は守備陣が粘り強く耐えた。後半36分のCKのピンチには北村がゴールを空けて飛び出し、力強くパンチング。後半アディショナルタイムにも相手FKからのヘディングシュートを滞空時間の長いジャンプから横っ飛びで弾き出した。
ナイジェリア人の父と、体操選手だった日本人の母を持つ北村が自分の持ち味と話すのは「空中戦のボール処理能力」。抜群の身体能力から繰り出されたビッグセーブに「自分の長所を出すプレーができた」と胸を張った。これには小野貴裕監督も「もともとバネが違う。あのセーブはなかなか出ない」と脱帽。MF冨山大輔主将(3年)は「実力もあるだろうけど、1年生であのプレーができるメンタルがすごい」と舌を巻いた。
もともとはGKの中でも“3番手”の位置づけだった。内野、GK山口公太郎(3年)、そして北村の争い。しかし、山口は大会前に風邪を引き、直前合宿への合流が遅れた。そこでアピールに成功し、ベンチ入りを果たすと、試合中のアクシデントで出場機会をつかんだ。
中学時代にプレーしていた埼玉のGRANDE FCでも「公式戦は1試合も出なかった」というが、「大舞台に強い選手。能力的には信用していた」と、そのポテンシャルに高い期待を寄せる小野監督が自ら“スカウト”。「自分のことを信頼してくれているんだなと思って関一に入ることを決めた」と、今も埼玉から通学している。
小学1年生からGKをやっている北村だが、もともとはドッジボールが好きだったという。「埼玉に引っ越して、浦和レッズの試合を見て、サッカーも面白そうだなと思った。だからドッジボールの動きと似ているキーパーになった」。あこがれのGKはスペイン代表GKダビド・デ・ヘア(マンチェスター・U)。「シュートストップとか、パントキックもうまいし、そこが好き」と目標にしている。
チームトレーナーの診断によると、負傷交代した内野は左手小指の開放骨折とみられ、すぐに病院へ直行した。「大会期間中は全部ダメ」(小野監督)と、今大会絶望となった3年生GKの思いも背負っていくことになる。来年1月2日の2回戦に向け、「今日以上にもっと良いプレーをして、チームの勝利に貢献できれば」と意気込む北村。ナイジェリア人の父を持つ関東一高のアスリートといえば、今年からプロ野球の楽天でプレーするオコエ瑠偉が浮かぶ。「オコエ選手より活躍したい気持ちはある」。172cmの16歳GKは目を輝かせた。
(写真協力『高校サッカー年鑑』)
(取材・文 西山紘平)
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