新人戦は“応援部隊”。這い上がってきたCB小出主将が東邦の「ベストゲーム」演出
ゲキサカ / 2017年1月3日 9時57分
[1.2 全国高校選手権2回戦 東福岡高1-0東邦高 等々力]
キャプテンマークを巻いた背番号2は、県新人戦ではメンバーに入ることができず、ピッチ外から応援していたのだという。そのCB小出晴貴主将(3年)を中心に東邦高が前回王者・東福岡高(福岡)と接戦を展開。後半16分の失点によって0-1で敗れたものの、堅守で優勝候補を苦しめた。
東邦は大会直前に全国高校総体優勝校の市立船橋高(千葉)と練習試合で対戦。その試合は序盤に先制点を許したが、追いついて引き分けたのだという。横井由弦監督は「市船さんのイメージの速さだったり、強さだったり、運動量だったりは多少免疫があったと思う。(この日の東福岡戦も選手たちは)前半終わった時にちょっとやれるんじゃないかなとなっていた」。
一方的に攻められる試合展開であったが、そのスピード感に慣れていたチームは我慢強く守りながら、同時に狙いすましたインターセプトからカウンターへ持ち込もうとするなど自分たちを信じてやるべきことを表現していた。
そのチームの中心にいたのが小出だ。後半8分には相手MF高江麗央の決定的な右足シュートをゴールラインギリギリで右足に当ててスーパークリア。直後にも至近距離から上げられたクロスに頭から飛び込んでクリアするなど気迫溢れるプレーが光った。
横井監督も「彼は足元ないんでとにかく気持ちを全面に出すしか無い。それが彼のプレースタイルなので、それを発揮して最後まで戦ってくれた」と評したプレー。“規格外”の190cmCB アピアタウィア久(3年)らとともにゴールを必死に守り続けた。敗れた試合ながらも指揮官が「ベストゲーム」と発した80分間。それは主将を中心とした個々の頑張りがなければ成り立たなかった。
小出は夏の全国高校総体予選から東邦のA1チームのレギュラーとなった選手だ。「新人戦はメンバー外で応援する立場で。それがあったからこそ、這い上がって来れたと思う」。A2チームが出場していた愛知県2部リーグでアピアタウィア久とともに結果を残し、這い上がった小出は、夏合宿で行われる主将決め投票で主将に選出。「最初は信頼度がなかったですけど」というDFは泥臭くゴールを守り、声を出し続けることで選手として、主将としての信頼を勝ち取っていった。
この日も泥臭くゴールを守り、声を張り続けた主将。指揮官の「ベストゲーム」という言葉を伝え聞いた小出は「相手は昨年王者ということもあって失点するのは覚悟の上。1失点で終われたのは良かったと思うし、最後までみんなが走り続けた結果が1失点で終われたと思うから、その点ではベストゲームだったかなと。でも最後の最後で点取れたり、勝てたりしたらもっとベストゲームだったと言えると思うんですけど……負けた中ではベストゲームと言えると思います」。
主将は今後、自身の受験勉強に集中。「地獄の勉強」が待っているのだと苦笑した。ただし、1年前は想像もできなかったような舞台に立ち、チームとともに戦い抜いたDFはその中で自分自身への自信を深めている印象だ。「サッカーも頑張って来れたので、受験も頑張れるように」。仲間たちに感謝した小出は、再び這い上がる覚悟で新たな目標へのスタートを切る。
(写真協力『高校サッカー年鑑』)
(取材・文 吉田太郎)▼関連リンク
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