[MOM2030]青森山田MF嵯峨理久(3年)_試合中に悔し涙したこともあるアタッカー、“黒子役”に収まらない働き
ゲキサカ / 2017年1月4日 8時35分
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.3 全国高校選手権3回戦 聖和学園高 0-5 青森山田高 浦和駒場]
対戦相手からすると、非常に怖い“黒子”だ。本人は「真ん中の(高橋)壱晟と(住永)翔と郷家は技術があるので、自分は預けてそこからチャンスを作って行きたい。自分が行くというよりは使われることを監督にも言われているので意識していきたいです」と謙虚に自分の役割を語り、黒田剛監督は「“黒子”に徹してくれている」とその存在の重要性を口にする。
千葉内定のMF高橋壱晟(3年)や抜群の身体能力も備えた技巧派MF郷家友太(2年)、そして全国高校総体得点王のFW鳴海彰人(3年)もいる青森山田高のアタッカー陣の中でその存在は目立たないかもしれない。だが、MF嵯峨理久(3年)は毎試合のようにチームにとって貴重な役割を果たしており、この日は鮮烈なゴールを決めて見せた。
先制した3分後の前半35分、青森山田は左サイドでボールを持った郷家が前方のスペースを突いたMF住川鳳章(3年)へパス。すると、右サイドから166cmの小柄なMFがDFを振り切りながら、もう中央へ走り始めていた。そして住川のクロスをニアサイドまで走りきっていた嵯峨がダイビングヘッド。小柄ではあるものの、実は得意だというヘディングシュートが左ポストを叩いてそのままゴールを破った。
「しっかりニアに入ることができた。ゴール前に飛び込むのは練習からやっているので入っていきたい」。この日は後半26分にも左クロスに右MF嵯峨がニアサイドまで走り込んでゴールを演出。一度会場には嵯峨のゴールと発表されたものの、これはシュートを上手くヒットさせることができずに公式記録はオウンゴールとなった。それでも狙い通りにサイド攻撃からゴールを連発した青森山田の中で嵯峨の存在は大きく、そのスピード、身を粉にして働く姿勢が相手との差を生み出していた。
本人の自己評価は70点から80点の間というところ。「もっと決められるチャンスはあった。もっともっとたくさん決めて『きょうは100点だ』というくらい次は頑張りたいですね」と微笑んだ。
控えめに自分自身について表現するが、試合途中に涙したシーンが印象的な選手だった。昨年のプレミアリーグEAST第17節。首位で迎えた青森山田は2位・鹿島ユースに勝てば優勝が決まるという試合だった。先発出場した嵯峨は後半13分に途中交代すると、試合中にもかかわらず号泣。「あの試合は『もっとできたはずなのに』という気持ちが強くて。自分がもっと走ったり、チャンスつくったり、アシストしたりすることをどんどん増やしたかった。あの時、調子は上がっていたんですけど、(交代後に)『プレーが消極的だ』と監督に言われて思わず泣いてしまいましたね」。チームは0-1で負けて初優勝は今年へ持ち越しとなった。
だが、悔しさを糧に努力を続けてきた嵯峨は16年のプレミアリーグEAST、市立船橋高との首位対決で決勝ヘッド。確かに大仕事をした試合は少ないかもしれないが、サイドを縦についてのクロス、献身的なランニングなどによってプレミアリーグ制覇に陰で貢献してきた。そのMFは今大会、鵬翔高との初戦に続いて2試合連続ゴール。“黒子”に収まらない活躍を見せている。「自分が得点、アシストするのもそうなんですけど、とにかく犠牲心をもって走るのが自分のスタイルでもあるんでこれからも続けていきたいです」。とにかく犠牲心を持ってチームのために走り続け、青森山田を勝利へと導くという姿勢は変わらない。
(取材・文 吉田太郎)▼関連リンク
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