“選手権制覇”“高卒プロ入り”を掲げていた青森山田GK廣末「目標を達成できて本当によかった」
ゲキサカ / 2017年1月10日 0時49分
[1.9 全国高校選手権決勝 青森山田高5-0前橋育英高 埼玉]
前半のキックオフからわずか数秒、埼玉スタジアム2002が“決勝戦とは別の”緊張感に包まれた。
選手権決勝という舞台でも青森山田高(青森)はいつものように、キックオフ時にフィールドプレイヤーをハーフラインに並べ、センターサークルからGK廣末陸(3年、FC東京内定)に戻してハイボールを蹴るという、ラグビーさながらの光景を繰り広げた。開始の笛とともに、前橋育英高(群馬)のFW人見大地(3年)が青森山田GKとの距離をどんどんつめていく。「いつもは相手のFWが来ないようにガードを置いているんですけど、今日はうまくできなくて」。廣末のフィードが人見に当たると、ボールは無人の青森山田ゴールのほうに向かう。ゴールを割らず事なきを得た廣末は「失点につながらなくてよかった」と苦笑した。
前半は、前橋育英が青森山田ゴールに迫る時間が続く。前半5分にはCKからDF角田涼太朗(2年)にヘディングを許したがDF小山内慎一郎(2年)がクリア。同16分には小山内を振り切ったMF高沢颯(3年)が廣末との1対1を迎えたが、青森山田の守護神はビッグセーブで決定機をしのいだ。「一瞬で勝負の分かれ目があるので、ああいったシーンを止められたのはよかったと思います」。
その後、MF大塚諒(3年)や角田に決定機をつくられながらも得点を許さなかった廣末は「あと1歩のところを寄せられていた」と守備陣に感謝を述べる。昨年、選手権でベスト4に進出した先発選手のうち、廣末ら5選手は今年もスタメンに名を連ねているが、DFラインの4人は総入れ替えとなった。「4枚が入れ替わってしまったので、『変わらなきゃ』という意識を出してくれた。人の言うこともしっかり聞いてくれましたし、コーチ、監督の指示も受け入れてくれたので、いまの守備があると思う」。決勝までの5試合を2失点で終えた。
FC東京U-15深川からFC東京U-18に昇格することができず、青森山田へと進学した廣末。記者から高校3年間で成長した部分を問われると「メンタルの部分」と答えた。黒田剛監督は廣末をはじめ、Jユースへ上げなかった選手たちの成長を感じているという。「Jリーグのユースに行けなかった評価をされてしまった子たちのハングリー精神を評価し、いいベクトルに向けてあげる作業を24時間365日の中でやっていく。それに対して選手が真摯に向き合ってくれたことが伸びにつながっている」。高校での3年間を通してFC東京U-18と4度対戦した廣末は、4戦全勝という“ハングリー精神”を見せた。
「高校選手権で優勝することと、高校卒でプロに入るということを意識していままでやってきて、最後にその目標を達成できて本当によかったです」。2つの目標をかなえた高校ナンバーワンGKは、「愛着がある」という“古巣”FC東京のトップチームで、新たなサッカー人生をスタートさせる。
(写真協力『高校サッカー年鑑』)
(取材・文 奥山典幸)
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