「スポーツライター平野貴也の『千字一景』」第42回:グッドルーザーが持つ「2年の覚悟」(武蔵丘短大)
ゲキサカ / 2017年1月13日 18時32分
“ホットな”「サッカー人」をクローズアップ。写真1枚と1000字のストーリーで紹介するコラム、「千字一景」
足をひきずる姿こそ痛ましかったが、表情は晴れ晴れとしていた。第25回全日本大学女子サッカー選手権大会の準決勝、武蔵丘短期大学は1-2で早稲田大学に敗れた。シュート数4対13と押し込まれる展開だったが、終盤まで粘って見応えのあるゲームを見せた。主将の村社汐理は「負けて悔しいですけど、悔いはないです。みんなが全力を出してくれたし、『あのときにああすれば良かった』っていうことがないので、スッキリしています」と言い切った。
武蔵丘短大は、前半に2失点を喫して苦境に追い込まれたが、29分にはFW園田瑞貴がハーフウェーライン付近から豪快なロングシュートを放ってポストをたたくなど、意地を見せた。後半12分に園田からトップ下の長井咲季を経由して、途中出場の1年生MF八浪直香がゴールを奪って1点を返した。その後は、両サイドに快足アタッカーを置く早稲田大の攻撃に押し込まれたが、1年生GK中橋まりなが好守を連発。後半20分にはクロスバーをたたく直接FKのこぼれ球を押し込まれそうになったが、カバーに入った長井が必死にクリアして1点差を保った。守備で体力を奪われたチームに余力はなく、最後まで追いつくことはできなかったが、健闘は光った。
4、3年生といった年上を相手にするだけでなく、2年生が最上級生のため毎年主力が入れ替わる難しさもあるが、武蔵丘短大は、過去に3度の準優勝を経験している実力派だ。奮闘の背景には、高卒でなでしこリーグ入りを果たせなかった選手たちが2年での再挑戦にかけている思いがある。村社は「4年制の大学の方が就職は有利。ここは、サッカーを続けることを考えて入っている子が多いんです」と明かした。チームは毎夏、英国遠征を実施し、アーセナルレディースFCのコーチの指導を仰ぐなど注力しており、強化体制が整っている。再挑戦にかける者の意気込みが、年齢差を跳ねのける力の源だ。
現時点で2年生のうち5名が、来春から、なでしこリーグ1部のチームに所属してサッカーを続けることが内定している。村社もその一人だ。浦和レッズレディースユースからトップへの昇格はかなわなかったが、短大を経て、長野ACパルセイロ・レディースへの加入が決まった。浦和戦に出場することは、今後の一つの目標だ。14日の3位決定戦が、短大での最後の試合となる。村社は「勝って、気持ちよく終わりたいです」と話した。次のステージへ羽ばたくための最後のステップを踏みに行く。
■執筆者紹介:
平野貴也
「1979年生まれ。東京都出身。専修大卒業後、スポーツナビで編集記者。当初は1か月のアルバイト契約だったが、最終的には社員となり計6年半居座った。2008年に独立し、フリーライターとして育成年代のサッカーを中心に取材。ゲキサカでは、2012年から全国自衛隊サッカーのレポートも始めた。「熱い試合」以外は興味なし」
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