繰り返された「まだ行けるか~?」「大丈夫で~す!」のやり取り。会場中に響く大声と積極攻守光った青森山田SB新井
ゲキサカ / 2017年1月21日 17時12分
[1.20 練習試合 青森山田高 4-0 ストラカンFF セント・ジョージズ・パーク]
後半20分過ぎから5分、10分ごとに青森山田高のベンチから、逆サイドにいる小柄な右SBへ向けて大声が飛んでいた。「ケンタロウ~、まだ行けるか~?」。その声よりも何倍も大きな返答。「大丈夫で~す!!!」。そしてピッチ内外から漏れる笑い声。この日、強敵と言えるストラカン・フットボール・ファンデーション相手に攻守両面で強さを見せた青森山田だが、ピッチで誰よりインパクトを残したのは後半開始から出場した右SB新井健太郎(3年)だった。
本人も認めるように決して上手い選手ではない。抜群の身体能力がある訳でもない。ただ、倒れても身体全体でボールに覆いかぶさってボールをもぎ取る粘り強い対人守備、167cmと小柄ながらも外国人選手に空中戦で競り勝つ強さ、そしてアグレッシブに攻め上がってチャレンジする姿勢も光った。特に印象的だったのはその声だ。会場中に響き渡るような声でボールを要求。45分間喋りながらプレーしているのではないかというほど、声を発し続けていた。
時にレフリーに対して日本語で意見するようなシーンも。だが、本人は意思疎通ができなかったことについて苦笑い。「英語あんまり喋れなかったですね。こっちへまた来たいと思うので、英語で話せるようにしたいです。今日は日本語でしか言えなかったので、今度は英語で言ってイエローカードもらうくらい頑張りたいと思います」と語り、報道陣を笑わせた。
今回のイングランド遠征には特別な思いがあった。新井は昨年、右足首を計3度手術。その後左第5中足骨骨折のケガも負って7か月半もの間ピッチから離れていた。それでも選手権で登録メンバー入りを果たし、今回イングランド遠征に参加。「黒田監督や正木コーチや3年生の河面コーチが自分のことを励ましてくれて、メンバー入れてくれて、選手権に帯同させてもらって、イングランド遠征も来ることができたので周りの方に感謝しかないです」。
その感謝の思いをピッチで、全力で表現した。この日45分間プレーしたが、その時間ピッチに立っていたのは実に1年ぶり。ベンチから「行けるか~?」という声が飛んでいたのもそのためで、本人も不安があったというが「今日はやるしかねぇよ!」と声に出して自らを鼓舞し、ずっと走って調整してきた成果をピッチで出しきった。
自慢の声について本人は「まだ足りないです」と首を振っていたが、それでもCB橋本恭輔(3年)ら周囲のサポートを受けながら好プレーを連発。その新井について上田大貴コーチは「ファイトすることがあの子の持ち味。声がクローズアップされるけれども、良い距離感で良い守備をしていた。小柄だけれどタイミングでしっかりヘディング勝てていたし、青森山田でやってきた3年間の集大成が出せたのが良かったと思います」。
新井は今回の遠征でチームメートが空中戦で相手よりも先に跳んで競り勝っているシーンを見て、自らのプレーに採用。この日は何度も競り勝つなど、イングランド遠征を自分のプラスにすることができた。今後は北陸大へ進学。「もっと力つけて将来的にはプロになれるように頑張りたい」。ケガを乗り越えた元気印が、課題を残した英語も勉強しつつ、サッカーの実力を磨いて目標とする世界へと近づく。
(取材・文 吉田太郎)
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