「スポーツライター平野貴也の『千字一景』」第47回:再燃(熊谷廉=空自小松基地サッカー部)
ゲキサカ / 2017年4月27日 21時26分
“ホットな”「サッカー人」をクローズアップ。写真1枚と1000字のストーリーで紹介するコラム、「千字一景」
夢が破れたとき、もう十分だと思ったはずだった。2015年の11月、熊谷廉は長崎総合科学大附高の一員として、第94回全国高校サッカー選手権大会の長崎県大会を戦っていた。準々決勝の相手は、恩師である小嶺忠敏総監督(現監督)がかつて率いていた国見高。勝たなければならない試合だった。しかし、国見の選手が放ったロングスローを跳ね返せず、自分の背後に現れた選手にゴールを奪われ、試合に敗れた。
指導陣から県のリーグ戦を終わるまでは続けてもらいたいと言われ、チームのプリンスリーグ九州昇格には貢献したが、心に穴が開いたままだった。チームスタッフは、大学でサッカーを続ける道を提案してくれたが、高校1年次に地元の長崎で開催された国体で初戦敗退を喫し、全国大会でのアピールに失敗していることもあり、プロの世界へつながるような強豪チームに入るのは厳しかった。
熊谷は進学にやり甲斐を見出せず「サッカーを辞めるために」兄に倣って自衛隊へ入隊した。教育隊を経て、石川県の航空自衛隊小松基地に配属された。すると、同じ部屋となった梅木健詞2曹や古谷勝頼士長から一緒にサッカーをやらないかと誘われた。
2人は、小松基地のサッカー部だけでなく、石川県リーグ1部を戦うLionPower小松でもプレーする選手だ。しかし、もう夢を追いかける充実感は味わえないと諦めていた熊谷は、乗り気ではなかった。それでも誘われるので、航空自衛隊で行われた球技大会(フットサル)には出場することにした。中部地区の予選を2位で通過して全国大会に出場したが、予選ラウンドで3連敗。相手には高校選手権の全国大会出場者を擁する航空自衛隊第3補給処チームがいた。消えたはずの火が、メラメラと燃え上がった。
「めちゃくちゃ悔しかった。3補とやるために本気で挑もうと思った」
熊谷は基地のサッカー部に入り、各駐屯地や基地で活動する自衛官チームが集う全国自衛隊サッカー大会のピッチに立った。本気でやれば勝てると思っていたが、結果は2連敗で予選ラウンド敗退。第2戦で1得点を決めたが、甘くはなかった。
「意外とレベルが高くて、技術のある選手もいる。1人でやろうとしても厳しかった。(予選を通過した)海自厚木なかよしとかは個々がすごいわけではないけど、チームでプレーしていた。次は、打倒なかよし、です。絶対、勝てる試合だった」
負けず嫌いのお目覚めだ。勝ちたい相手を見つけた熊谷は、またボールを追い始めた。
■執筆者紹介:
平野貴也
「1979年生まれ。東京都出身。専修大卒業後、スポーツナビで編集記者。当初は1か月のアルバイト契約だったが、最終的には社員となり計6年半居座った。2008年に独立し、フリーライターとして育成年代のサッカーを中心に取材。ゲキサカでは、2012年から全国自衛隊サッカーのレポートも始めた。「熱い試合」以外は興味なし」
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