FW起用に“一発回答”、「サッカーに生きている」東京V高木大輔の生き様
ゲキサカ / 2017年5月7日 23時17分
今季からロティーナ監督が就任した東京V。プレシーズンにMF安西幸輝と安在らが相次いで負傷離脱したことで、本職がFWの高木に『WB』のポジションは回ってきた。来日前から東京Vの試合映像を確認していたロティーナ監督は「大輔はFWとして計算していました」と言うが、竹本GMやスタッフ陣から、高木にSBの経験があることを聞かされ、臨時での“コンバート”を決めた。いきなりの起用ではなく、事前に本人には「みんな(スタッフ)からSBもやっていたと聞いたから、試させて欲しい」と言葉があったという。
そこからのプレシーズン。指揮官の想像を大きく超えるほど、高木はWBで存在感を見せ始め、先発へ定着。開幕戦・徳島戦(0-1)から第6節・岡山戦(1-0)までの6試合にWBとしてフル出場し、キャリア最高といえるスタートを切った。WBとして評価を高めていくなかでは、対戦相手の監督たちから声をかけられることも多かった。
面識がなかった湘南のチョウ・キジェ監督からは「なんでWBをしているんだ?」と試合後に問われると「WBをやるようになってからは、より走れるようになっているからな」と言われたほか、唯一出番のなかった山形戦では、木山隆之監督から「頑張っているのに、(出場がないのは)もったいないね」と声をかけられた。
相手チームの監督からWBとして評価を受けるのは嬉しい気持ちもある一方で、複雑な思いも募っていった。「このままWBとしてサッカー人生を歩んでいくのか、FWとして生きていくのか……自分のなかでの葛藤はありました」と言うとおりだ。「試合に出られていたので不満はなかったんですけど、それでもやっぱりどこかで(前を)やりたいなというのはあったので」。
複雑な思いを打ち消すように、とにかく走った。目の前のことに必死になっていれば、余計な考えは浮かばなかった。ただただいつも通りに練習でも試合でも、がむしゃらにこなした。そして出場を重ねるなか、様々な要因が重なり、やってきたのが横浜FC戦。FW起用に応えるとしっかりと結果を出したのだ。
「こうやってFWでチャンスをもらえたときに結果を残せたことは、自分のなかで“ここ”なんだなと、証明できたというか、スッキリした部分もあります。これから先、WBをやることがあっても、僕がやることはまず100%でやることだと思います」
ロティーナ監督は「常に他のポジションでプレーした選手というのは学ぶことができる」とWBを経た高木を評価しつつ、「たくさんのポジションでプレーすることが出来る選手と捉えている」と今後の起用には含みを持たせる。本人は「来週からの練習でまたどこのポジションをやるのか楽しみ」と白い歯をこぼした。
かつて年代別代表でもSBやボランチで起用され、もちろん東京VでもSBを務めていた時期もある。一般的に複数のポジションを任される選手は器用なタイプが多いが、高木の場合は“託したい”“ピッチにいて欲しい”と思わせる熱さが、そうさせているのだろう。きっとそれこそがロティーナ監督の言う「サッカーに生きている」姿。サイドでも前線でも、高木大輔は全身全霊で今そこにあるサッカーに生きている。
(取材・文 片岡涼)
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