チームのための自制が逆効果に。綾羽の注目アタッカー、藤田昂陽「決勝は行きます!」
ゲキサカ / 2017年6月2日 14時31分
[6.1 全国高校総体滋賀県予選準決勝 比叡山高0-2 綾羽高 布引]
決勝進出を決めた試合後、綾羽高の選手たちがスタジアム外でクールダウンを行っていたが、そこには2得点に絡んだ10番MF藤田昂陽(3年)の姿が無かった。チームメートたちが入念に続けていた次の試合の準備の終わり頃、ようやくロッカールームから姿を表したエースは慌ててストレッチを開始。クールダウンへの参加が遅れたのは、試合後に「パスを出しすぎ。きょうのプレーは残念やな」と評したという恩師・岸本幸二監督に自分のダメだった部分を聞きに行っていたのだという。
「聞きに行きました。いつも聞きに行かないと、教えてもらえないので。岸本先生は聞きに行ったらいつも答えを教えてくれはるので、自分の意見を持って聞きに行っています」。ダメだった理由を自分で考え、そして岸本監督に確認する。これは日々のトレーニングでも実施されている作業。この日の前半、藤田はチームが負けないために自分が強引に仕掛ける前に、パスを選択していた。その判断は間違っていなかったかもしれないが、それがチームのリズムを崩すことにつながっていた。
普段ならば自陣からでもドリブルで持ち上がり、縦横無尽に前進。綾羽のボランチやFWは彼のためにパスコースを空けて、突破した後のパスを受ける準備をしている。だが、この日は藤田がいつも早くボールを離そうとしたことで、サポートの準備が整わず、ボールを奪われてしまっていた。
そのことを岸本監督との会話で確認した藤田は「きょうの試合で前半苦しんだのは自分の責任です」と反省。ただし、この日、一段階上のプレーを続けていた藤田は試合の中で徐々に積極性を高めると、前半25分に中央突破からのスルーパスで先制点の起点となった。
後半にも彼のクロスが2点目の起点に。また中盤から重心の低いドリブルで何度も比叡山高の守備網に穴を開け、一人でシュートにまで持ち込むなど、止まらない存在になっていた。岸本監督は「力の半分しか出ていない」と厳しかったが、それでも絶大な存在感。間違いなく10番は勝利の立て役者の一人だった。
昨年までは縦への“突破しかなった”。だが、現在はできることが確実に増えている印象だ。「練習試合とかでも相手が縦切った時にカットインしてからのシュートがほとんど決められるようになって、パターンが増えました」と藤田。スピードある縦への突破を警戒されても中央へ持ち込んでシュートを決めることができる。この日もミドルレンジから強烈なシュートを枠に飛ばすなど相手の警戒を上回るようなプレーを見せていた。
昨年の全国総体は「記憶が飛んでいるくらいに緊張していた」という。自分のやりたいことがほとんどできないまま初戦敗退。プロ入りを目指す注目アタッカーはその悔しさを今年ぶつけるつもりだ。
この日は勝ちたいという気持ちが強すぎたことで自分のプレーにブレーキをかけてしまい、それが逆効果に。だからこそ、決勝では「いつもだったら目立とうと思いすぎてチームを苦しめたところがあった。決勝は行きます! 目立ちます! 絶対に勝ちます!」と気合十分だ。本来の良さであるアグレッシブな仕掛けで相手の守りに穴を開けて、全国でリベンジする機会を掴み取る。
(取材・文 吉田太郎)●【特設】高校総体2017
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